とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

「ノリ江婆あのドキドキ愛人日記」にドキドキ

2006年01月17日 19時16分16秒 | ワンフー日記
ノリ江、94才。
---タカ吉の愛人。
タカ吉、106才。
---いつもハッピーな爺い。


「みなさんのおかげです」で1990年から放送されたコントです。
ゲストを交えることはほとんどなく、タカさんとノリさんのふたりだけで演じられるコントでした。
たまたま何話か見直す機会があり、大笑い。


おぼえていますか、あの衝撃の、
「ノリさんが噛み砕いて吐き出したニンジンを、タカさんが食べちゃったよ」事件!
多くのコントは忘れてしまっているわたしも、このシーンだけは脳みそにきざみこまれていました(笑)。


ふたりだけでやるコントって、他にありましたっけ…?ゲストに気を配る必要がないからか、タカさんが自由奔放にギャグを連発する姿が本当に楽しい。
そしてそれに完璧に反応するノリさん。老け役が、あまりにもうますぎ。ノリ江ばあちゃんは、本当に可愛らしいのです。


やたら元気なふたり…Hの場面は「戦艦からの大砲、大波、花火」で表現されていました(笑)。子供も見てたし…(笑)


ところで、第2話の「ノリ江風邪をひく」の回を見ていて、ひとつ気づくことがありました。
それは、「おかげです」コントの、セットに賭ける情熱(と経費)のすごさ。


コントの終盤、ノリ江の風邪が治り、布団をあげようとすると、そばでタカ吉が寝ている。ノリ江の風邪がうつったのです。


その場面でのカメラアングルが、それまでとはうってかわって極端なローアングルになります。そのため、ノリ江の部屋の天井の一部がカメラに映りこんでいます。


通常、セットはカメラに映る範囲だけを作ればよいので、経費を節約するためにもたいていは壁だけを作ればよく、天井はありませんよね。かつて小津安二郎は、ほとんどのシーンをローアングルで撮影していたため、セットの天井をどうしても作る必要があったとか。松竹の城戸四郎に「製作費がかさむ」と文句を言われていたそうです。


「ノリ江」コントにしても、たぶんこの場面以外は天井がないと思います。
しかしおそらく、この場面をローアングルで撮るためだけに、大道具さんは天井の一部を作ったのでしょう。


ここに、わたしは感動しました。


もしも、余分の天井セットを作る手数とお金を惜しむなら、なにもこの場面をローアングルで撮らなくてもよいのです。しかし、演出家はローアングルにこだわった。


確かに、そこまでの場面はほとんどノリ江が布団に寝ている状態だったので、ここでアングルを変えることによって、メリハリがついていますし、印象的な場面になっています。


こんなちょっとした所にも、「おかげです」の作り手のこだわりを、コントへの愛情を、見ることができるような気がするのです。


ついでに言うと、「ノリ江」コントは照明もとっても良いです。ガラス戸を通して日の光がすこし射しこんでいるのですが、部屋の中はやや薄暗くなっていて、ノリ江とタカ吉の"秘めた愛の巣"という雰囲気をうまーく出しているのです。


この時代の「おかげです」コントは、こんな制作スタッフのこだわりもあったからこそ、すばらしかったのでしょうね。


タカ吉ははなはだ身勝手なじいさんだけど、コントの最後はふたりの愛を感じて、何となくやさしい気持ちにさせてくれるコントでした。



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