とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

「お笑い」日本語革命

2011年05月07日 23時08分07秒 | ワンフー日記

<とんねるず表現>考の記事
で、

「(とんねるずが流行させた言葉について)重要なのは、これらのことばやフレーズが、東西を問わず完全に大衆の話し言葉に浸透していることです。一過性の流行語ではなくて、日本語の話し言葉になってしまっていること。このあたりを、言語学的に研究した人っていないのかなあ~?」

と、書いたのは約2年前ですが、まさにその頃、まさにその研究に邁進していた方がいました。

やはり、やってくれたのは、あの男だった。

『全国アホ・バカ分布考』でアホとバカの語源をたどり、国語学の世界に一大センセーションを巻き起こした、「探偵!ナイトスクープ」プロデューサーの松本修氏です。

その松本氏が書き下ろし、2010年10月に出版された『「お笑い」日本語革命』(新潮社)では、まさしく「お笑い芸人」たちが流行させた言葉たちがどのように日本語に浸透し、現代の日常語をどのように変化させてきたのか、を論じています。

本のタイトルにある「革命」という言葉に、在野の研究者として、そしてテレビバラエティのプロデューサーとしての松本さんの、静かな気概を感じさせます。芸人たちのもつ言語力というものを、みくびらないでくれよ、という。

しかも、この本では、<笑いの装置「みたいな。」の誕生>と題して、まるまるひとつのチャプターを、とんねるずが流行させた「みたいな」についての考察にあてている!執筆者が関西出身者であるだけによけいに、これは相当画期的なことではないでしょうか。

まず、この論考の最大の功績は、「みたいな」の発信源が東京近郊の女子大生であるというこれまでの定説が、誤りであると証明したことです。

わたし自身、ウィキペディアなどネット上でなんとなく蔓延している女子大生発信説や、あるいはブラザー・コーンあたりから発生した言い回しなんじゃないかという説を、漫然と信用していたので、これはひさびさに真正・目からウロコな体験でした。

松本さんは、とりあえず手近な資料としてあった「ねるとん紅鯨団」第1回の放送を見るところから調査をスタートして、ねるとんのスタッフを介して、「みたいな」の第1ソースにたどりつきます。それが、なんとワンフーにはあまりになつかしい「玉井ちゃん」こと放送作家の玉井貴代志氏でした。

いや~まったくね。
この本は、すごいですよ。
玉井ちゃんの存在がこれほどクローズアップされた書籍が、これまであったでしょうか。いや、ないね!

「みたいな」の考察そのものも本当に興味深いのだけど、ワンフーとしては、玉井ちゃん登場にひっくりかえりそうになりました。しかも松本さんは、玉井ちゃんに会って取材までしているんですよ!

「玉井ちゃん」なんて気安く呼ぶのも気がひけるほど、玉井氏はいまや放送作家としては大御所なんだそうです。「シャボン玉ホリデー」や「8時だヨ!全員集合」の作家だったかの有名な塚田茂氏の弟子で、とんねるずとの出会いは、「たのきん全力投球」のオーディションだったというから、驚くじゃああーりませんか。

この玉井さんが、制作会議の席上で、はりつめた空気をなごませるために使っていた「みたいな」をタカさんがおもしろがり、使いはじめたとのこと。「みたいな」が流行語大賞の候補になっていないことをタカさんが玉井ちゃんにボヤいた、という証言までとびだしています。

確かにいわれてみれば、タカさんもノリさんも「おかげです」のコントでよく「玉井貴代志のマネ」と称して「みたいな、みたいな~~!!」と激しく叫んでいましたよね。玉井ちゃん自身、こう話しています。

「みんな困っているときに、『どうすんの!みたいな!』と言うだけで笑いになる。さらに、『みたいな、みたいな!』と二度くりかえして、あとの『みたいな』は声を張り上げて裏声にする。これが、ドーンとウケるんです。『復唱の玉井』と言われて、テレビ局でブームになったったみたいな、みたいな!」

おもしろいですね。ゾクゾクするほどおもしろいです(笑)
そういえば、ノリさんが声をひっくりかえして「ヨォ~ッ!」と叫ぶのも、玉井ちゃんっぽいよね。あれも玉井ちゃんの真似なのかな?

松本氏はといえば、もちろんこんなことで満足するわけもなく、さらに玉井ちゃんからさかのぼって「みたいな」のルーツを探っています。そのあたりについては、実際に本を読んで堪能していただきたいと思います。

とんねるずの「みたいな」の使い方や、笑いの武器としての「みたいな」についての松本さんの解釈には、正直に言うと、やや首肯しがたい部分もないわけではありません。

たとえば、玉井ちゃんの「みたいな」の使い方は特殊だったし、「みたいな」を復唱することがひとつのギャグになってたわけで、フリートークでとんねるずが使った「みたいな」とはちょっと異なるものと考えるべきでは?とか。

そのへんについても、読者個々に考えるところがあるでしょう。
ワンフーなら、なおさら。

しかし、とりあえずは、とんねるずと日本語の関係をアカデミックなレベルでとりあげ、そして玉井ちゃんの存在に光をあててくれて、ありがとうございます松本さん!と、わたしは言いたい。

実は、この本との出会いもあって、コメ旬の特集の「とんねるずギョーカイ紳士録」に玉井ちゃんを加えることができたのは、至上の喜びでありました。字数の関係であまりくわしいプロフィールにはできなかったので、本記事はコメ旬の補足のつもりでお読みいただけると。

執筆にあたってわたしなりに玉井ちゃんについて調べてみたところ、放送作家の源高志さんのブログ「源高志の源的こころ」で玉井ちゃんが「カックラキン大放送」の構成作家のひとりだったことが書かれていました↓

『カックラキン大放送』の台本は俺たちが書いた!


この件に関しても、情報の真偽にかんして、なぜかウィキペディアとの攻防があったようで、ウィキってどうなっとんじゃい一体、という気分にさせられますが。

ともかく、玉井ちゃんがあの「カックラキン大放送」の作家だった、というのはまちがいないようです。

カックラキンの作家がおかげですに参加してたっていうのは、バラエティの歴史を語る上で相当すごいことだと思いません?

幼かったので記憶は断片的ながら、カックラキンは毎週欠かさず見ていたはずなので、この事実にはわたくしかなりの衝撃を受けました。

カックラキン大放送の、どことなく家族的な雰囲気というか、ガツガツしてない笑いが、幼な心にも印象深く残ってるんですよね。「楽しかったひとときが~いまはもう~すぎてゆく~ルルル~♪」のエンディング曲も好きだった。とんねるずの「星降る夜にセレナーデ」は、あきらかにカックラキンのあの曲へのオマージュですよね。

ところで、現時点のウィキ情報では、このエンディングのあとに野口五郎がジョークを言って終わる、とあるんだけど、最後のコメントを言うのって、井上順じゃありませんでしたっけ?わたしの記憶のなかでは、完全に井上順なんですけれど。

しかしまあわたしの記憶力ほどあてにならないものもないのですが。
どなたかご記憶のかた、情報もとむ!




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6 コメント

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確か (jiron)
2011-05-10 23:30:26
「手の平返し~~~~」も玉井ちゃんでしたよね
違ってたら済みません

先週の「きたなトラン」を今見ているのですが
実家そばの店が出てきてビックリ!
でもその店の前をしょっちゅう通っていたのに
全然知りませんでした。
意外とそんなものです、ハイ。
返信する
語録 (FUJIWARA)
2011-05-11 12:01:45
みたいな~
ちゃだわ。
ゆるしてちょんまげ。

みたいな~は松本人志さんと高須さんの「放送室」でも
話題にあがっていました。
高須さんも玉井さん発信だということ知っていました。


あと流行語的なのでは「ツーショット」とかですかね。


ガツガツしてない笑いって解るなぁ。
カックラキン、欽どん、みごろたべごろ、
突然ガバチョ!、ヤンヤン歌うスタジオ
もちろんドリフ・・・子供から大人まで楽しめた番組でしたね。

私が小さかった頃(幼稚園くらい)遠く離れた祖父が、
毎週「全員集合」が終わったあとに「ドリフみたか?」と電話をくれたのを思い出します。
祖父も口下手だったし、小さい子に戸惑うタイプだったと思うので
それが共通の話題でした。


余談
最近「キャニオン初」の「迷惑でしょうが」が
シングルバージョンと違うのを20数年ぶりに思い出しました(笑)
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jironさん (ファイアー)
2011-05-12 10:28:18
>実家そばの店が出てきてビックリ!

ええっ!すごい~!
ぜひ行ってみてください、jironさん!
ペレ入ったお店かな?
お客さん増えてるかもですね。

手の平返し~やっぱり玉井ちゃん発だったんだね(笑)
返信する
FUJIWARAさん (ファイアー)
2011-05-12 10:33:36
>みたいな~は松本人志さんと高須さんの「放送室」で
話題に

ホント!?
この番組って、けっこうよくとんねるずの話してるみたいですね。

>・・・子供から大人まで楽しめた番組

言われてみれば、かつてのバラエティ全般ががつがつしてなかったですね。
逆に今ががつがつしすぎ・・・?

>毎週「全員集合」が終わったあとに「ドリフみたか?」と電話

すてきなお話ですね。なんだかジーンとしちゃいました。
バラエティ番組でおじいさんと孫がつながる、なんて、
いまの時代、あるのかしら・・・

>「迷惑でしょうが」

アルバムバージョンはショーケンのものまねでしたっけ(笑)
返信する
みたいな (FUJIWARA)
2011-05-13 12:24:36
この回の放送室はいつの間にか言う様になった言葉の起源みたいのを話されていました。
「おいしいな!自分!」「からみにくいなぁ」
「ぐずぐず」「こわっ、、長っ(言い切り口調)」
「さぶ(突き放しギャグ)」
「最初はグー」(志村師匠が起源)
「H」(さんま師匠起源)

「みたいな」
高須さん:「みたいな~」というのはとんねるずの二人が。
松本さん:一時期皆よういうてたなぁ。女とかもよお使ってた。
高須さん:あれ実は作家の先生で玉井先生という人が会議で「みたいな」を。
松本さん:ほー。ほんま一時期よう言うてた~

というような感じでした。

あとこれはファイアーさんも読んだ事あると思いますが
テキスト化してくれている人のページです。
http://jyouhouya3.net/radio_matu.htm
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FUJIWARAさん (ファイアー)
2011-05-14 00:11:05
高須さんはいろんな作家さんと対談とかもしてますよね。
そうそう、この本でも、ダウンタウンの「みたいな」の用例も出てきます。

リンクありがとうございます!
ちらっと見たことありますが、あらためてじっくり読んでみます。

「最初はグー」の浸透ぶりも、ほんとすごいですよね。
いまやもう、最初はグーを言わないじゃんけんなんてしないですもんね。
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