漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 178

2023-10-11 04:54:07 | 貫之集

女どもの滝見たるところ

いととさへ みえてながるる たきなれば たゆべくもあらず ぬけるしらたま

糸とさへ 見えて流るる 滝なれば たゆべくもあらず ぬける白玉

 

女たちが滝を見ているところ

糸のように見えて流れる滝なので、水しぶきは絶えることなくその糸に貫かれて、飛び散ることもない。

 

 露や水しぶきを「玉」と見なして、それを貫く「糸」とともに詠むのは古典和歌の常套手段。「糸」はそのときどき、この歌のように滝の流れであったり、あるいは枝垂れる青柳であったりしますね。古今和歌集 0027 には、柳を糸と見立てた僧正遍昭の歌が収録されています。

 

あさみどり いとよりかけて しらつゆを たまにもぬける はるのやなぎか

あさみどり 糸よりかけて 白露を 玉にもぬける 春の柳か


僧正遍昭

(古今和歌集 巻第1「春歌上」 第27番)