おほはらや をしほのやまも けふこそは かみよのことも おもひいづらめ
大原や 小塩の山も 今日こそは 神代のことも 思ひ出づらめ
在原業平
大原の小塩の山も、今日という日には神代のことも思い出していることでしょう。
詞書には「二条の后の、まだ東宮の御息所と申しける時に、大原野にまうでたまひける日よめる」とあります。「二条の后」は第56代清和天皇の后、藤原高子(ふじわら の たかいこ)のこと。自身の歌が 0004 に採録されているほか、業平の歌の詞書にも何度か登場しています。「大原野」は藤原氏ゆかりの大原野神社で、祭神の天児屋根命(あめのこやねのみこと)が天孫瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を先導したことが天孫降臨神話で語られています。第四句の「神代のこと」とはそのことを指していますね。