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漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 707

2025-03-23 05:54:38 | 貫之集

陸奥へ下る人を惜しめる

かりころも するなにおへる しのぶやま こえむひとこそ かねてをしけれ

狩衣 摺る名におへる しのぶ山 越えむ人こそ かねて惜しけれ

 

陸奥へ赴く人を惜しんで詠んだ歌

狩衣の信夫刷りで名高い信夫山を越えてく人が偲ばれて、別れの前から名残惜しいことよ。

 

 信夫山は陸奥の歌枕。信夫刷りは「シノブの茎や葉の色素を布にすりつけて表したねじれたような模様。また、そのすり模様の衣服。(デジタル大辞泉より)」とのこと。当地の名産ですね。また、「しのぶ」には、「信夫(山)」と「偲ぶ」が掛かっています。


 「陸奥」「信夫刷り」というと、百人一首(第14番)の河原左大臣(源 融 みなもと の とおる)の歌が思い出されますね。

 シノブ

みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに みだれそめにし われならなくに

陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし われならなくに

 


貫之集 706

2025-03-22 04:15:02 | 貫之集

兼茂朝臣ものへいくに、兼輔朝臣はなむけする、雨降る日

ひさかたの あめもこころに かなはなむ ふるとてひとの たちどまるべく

久方の 雨も心に かなはなむ 降るとて人の 立ちどまるべく

 

兼茂朝臣が任地に赴くにあたって、兼輔朝臣が餞別の宴を催した雨の日に詠んだ歌

雨も望み通りに降ってほしい。旅立つ人が出発を取りやめるように。

 

 藤原兼茂(ふじわら の かねもち)、藤原兼輔(ふじわら の かねすけ)は藤原利基(ふじわら の としもと)の子で兄弟同士ですね。後の紫式部に繋がる家系です。「ひさかたの」は枕詞。通常は「天」「光」「雲」などに掛かりますが、「天」と同音ということでここでは「雨」に掛かっています。
 この歌は、風雅和歌集(巻第九「旅」 第900番)に入集しています。


貫之集 705

2025-03-21 05:07:27 | 貫之集

藤原惟岳が武蔵になりて下るに、逢坂の関越ゆとて

かつこえて わかれもゆくか あふさかは ひとだのめなる なにこそありけれ

かつこえて 別れも行くか 逢坂は 人だのめなる 名にこそありけれ

 

藤原惟岳(ふじわら の これおか)が武蔵介となって下るため、逢坂の関を越える際に贈った歌

人に逢うという「逢坂」であるのに、同時に別れでもあるとは、「逢坂」は人にあてにさせておきながら頼りにならない名であることよ。

 

 「ひとだのめ」は「人頼め」で、人にあてにさせること。704 とこの歌は、いずれも有力者の子でありながら望むような地位を得ることができず、地方に下って行く官人に贈った歌で、同じ悩み(不満)を抱えた貫之が同情の気持ちも込めて詠んだものでしょうか。
 この歌は、古今和歌集(巻第八「離別歌」 第390番)に入集しています。

 


貫之集 704

2025-03-20 04:09:50 | 貫之集

肥後守藤原時佐といふぬしの下るにやれる

ひとひだに みねばこひしき こころあるに とほみちさして きみがゆくかな

一日だに 見ねば恋しき 心あるに 遠道さして 君が行くかな

 

肥後守藤原時佐という主が任地に下るのにあたって贈った歌

一日でも逢わずにいると恋しい気持ちになるのに、あなたは遠い旅に発ってしまうのですね。

 

 藤原時佐(ふじわら の ときすけ)という人物はネット検索してもヒットせず、どのような人物かはわかりませんでした。「恋しき心」とありますから、時佐に思いをよせる女性の気持ちに準えて詠んだものでしょうか。

 


貫之集 703

2025-03-19 05:46:22 | 貫之集

音羽の山のほとりにて人に別るとて

おとはやま こたかくなきて ほととぎす きみがわかれを をしむべらなり

音羽山 木高く鳴きて 時鳥 君が別れを 惜しむべらなり

 

音羽の山のほとりにて人に別れる際に詠んだ歌

音羽山の木の高いところで時鳥が鳴いて、私と同じくあなたとの別れを惜しんでいるようだ。

 

 この歌は、古今和歌集(巻第八「離別歌」 第384番)に入集しています。