兼茂朝臣ものへいくに、兼輔朝臣はなむけする、雨降る日
ひさかたの あめもこころに かなはなむ ふるとてひとの たちどまるべく
久方の 雨も心に かなはなむ 降るとて人の 立ちどまるべく
兼茂朝臣が任地に赴くにあたって、兼輔朝臣が餞別の宴を催した雨の日に詠んだ歌
雨も望み通りに降ってほしい。旅立つ人が出発を取りやめるように。
藤原兼茂(ふじわら の かねもち)、藤原兼輔(ふじわら の かねすけ)は藤原利基(ふじわら の としもと)の子で兄弟同士ですね。後の紫式部に繋がる家系です。「ひさかたの」は枕詞。通常は「天」「光」「雲」などに掛かりますが、「天」と同音ということでここでは「雨」に掛かっています。
この歌は、風雅和歌集(巻第九「旅」 第900番)に入集しています。