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漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 712

2025-03-28 04:23:17 | 貫之集

もみぢばも はなをもをれる こころをば たむけのやまの かみぞしるらむ

もみぢ葉も 花をも折れる 心をば 手向けの山の 神ぞ知るらむ

 

紅葉の葉も花も折って幣として捧げる気持ちを、手向山の神もお分かりくださるでしょう。

 

 詞書は 711 と共通。「手向山」は普通名詞としても固有名詞としても使われるようですが、ここでは普通名詞でしょうか。また解釈としては、紅葉を幣に見立てているものとして記載しましたが、実際の幣と一緒に紅葉を手向けるとするむきもあるようです。
 この歌は、千載和歌集(巻第八「羇旅」 第760番)に入集しており、そちらでは第三句が「こころとは」、第五句が「かみやしるらむ」とされています。


貫之集 711

2025-03-27 04:55:55 | 貫之集

あひ知りたる人のものへ行くに、幣やるとて

ゆくけふも かへらむときも たまぼこの ちふりのかみを いのれとぞおもふ

行く今日も 帰らむときも 玉ぼこの ちふりの神を 祈れとぞ思ふ

 

知人の出発にあたって、幣を贈るとして詠んだ歌

旅立つ今日も帰って来るときも、道中の安全を神に祈りなさいと思う。

 

 「玉ぼこの」は枕言葉で、ここでは「ちふり」の「ち(=道の意)」に掛かります。「ちふりの神」は道中の安全を守る神のことです。

 

 


貫之集 710

2025-03-26 04:59:05 | 貫之集

兼輔の兵衛佐、賀茂川のほとりにて、左衛門の官人三春有輔甲斐へ行く、むまのはなむけによめる

きみをしむ なみだおちそふ このかはの みぎはまさりて ながるべらなり

君惜しむ 涙落ちそふ この川の みぎはまさりて 流るべらなり

 

兼輔の兵衛佐が、賀茂川のほとりで左衛門の官人三春有輔が甲斐に赴く餞のうたげを催した際に詠んだ歌

あなたとの別れを惜しんで流す涙が加わって、この川の流れが増してしまいそうです。

 

 兼輔は藤原兼輔(ふじわら の かねすけ)。百人一首(第27番)の歌が有名ですね。

 

みかのはら わきてながるる いづみがは いつみきとてか こひしかるらむ

みかの原 わきて流るる いづみ川、いつみきとてか 恋しかるらむ


貫之集 709

2025-03-25 05:00:15 | 貫之集

とほくゆく ひとのためには わがそでの なみだのたまも をしからなくに

遠く行く 人のためには わが袖の 涙の玉も 惜しからなくに

 

遠くに旅立って行く人のためには、わたしの袖を濡らす涙が玉であっても惜しいとは思わない。

 

 詞書は 708(遠く行く人に別れを惜しみて)と共通。流れ落ちて失われる涙がたとえ宝玉であっても惜しくはない、何を投げうってでも別れを回避したい切実な想いですね。
 この歌は、拾遺和歌集(巻第六「別」 第328番)に入集しています。


貫之集 708

2025-03-24 04:20:00 | 貫之集

遠く行く人に別れ惜しみて

またもこそ かくゆくひとと わかれをしめ なみだのかぎり きみになきつる

またもこそ かく行く人と 別れ惜しめ 涙のかぎり 君に泣きつる

 

遠くに旅立って行く人に別れを惜しんで詠んだ歌

またこのように遠くへ行く人と別れを惜しむことになるのではないか。涙の限り、あなたのために泣いたことよ。

 

 「もこそ」は懸念用法と呼ばれ、通常は「~すると困る」といった意味ですが、下句は現に直面している別れを惜しむフレーズとなっており、やや上句と下句がちぐはぐな感じがします。