フランスで村上春樹のデビュー作「風の歌を聴け」と「1973年のピンボール」が一冊の本として、この1月にようやく出版されたようです。
フランスの友人に「君はムラカミのどの作品が好き?」と訊ねられるたびに
Ecoute le chant du vent (風の歌を聴け)と答えていましたが、フランスではまだ翻訳されていなくて、
英語では翻訳されていたのに、なぜフランス語はまだなのかな、と思っていたので、これでようやくツーカーで話が通じそうです。
大学時代この作品を初めて読んだときの自分の心の揺れや安堵感は、今でも愛おしく思い出します。
大人になってもこういう生活って送っていいの? みたいな解放感。
堅気の家庭に育つと、なかなか王道以外の道が見えない。アウトローの道を行くほどの勇気もなくて、でも会社員になるという道も自分には無理のような気もする。
だから
翻訳という地道な、でも好きな仕事で生活費を得ながら、日が暮れればなじみのバーで友だちと落花生食べてていいんだ、と、ちょっとホッとしたんですよね。
(まあ、そうやって私を含め自分探しの若者が増殖したということもあるので、利害両方あるんでしょうけど!)
とにかく、村上春樹好きのフランス人は多いので、彼らがこのデビュー作をどう思うか、次回の文学談議がちょっと楽しみです。