思いも寄らなかった高田賢三さんの訃報。
今年に入ってからじゃなかったかな、テレビで賢三さんの新しいブランドK-3の紹介を兼ねて、パリのご自宅(=超スタイリッシュ!)を案内されるお姿を拝見したのは。
お元気そうで何より、これからも楽しみにしていようと思っていた矢先で、ショックで悲しい。
パリ時代、「Yukoはいつも長いスカートばかりじゃないか、ミニスカートもはくべきだ!ぼくがプレゼントする」と当時の彼と一緒に出かけたのがレンヌ通りのKENZOのお店(=二階もあった。今はもうない)。
大人になってからは初めてのミニスカート-mini jupe 。鮮やかなヴェルミヨン(朱色)のスエードの超ミニ! しかも腰ではくタイプで、それまでウエストではいていたスカートとは全く感覚が違う。カフェのテラスに座れば、しっかりした生地のスエードなのでつつつと丈がせり上がって、おいおいおい、って感じでしたが、ちょっと人生、一歩、前に進んだ気がしました。
その赤いミニスカートを機に、わたしの人生にミニスカート時代がスタートしたわけです。つい最近までこの時代はながく続きました。江戸時代並みですよ。
その後、日本に戻ってからもアニエスベーで同じく黒革の超ミニとブラウンのスエードの超ミニをたてつづけに調達したくらいですからね。あはは。
もう今は、年相応にミモレ丈になってますが、冬になれば厚地のタイツが履けるので、また膝上くらいのミニは復活。
KENZOさんのおかげで、乗り越えたんですよ、わたしの中のシャイなわたしを。
その後、パリではソルド期にKENZOさんならではのやはり赤地に金模様のオリエンタルなゆったりパンツ(=ちょっとサルエルパンツっぽい)を買いましたが、あまりに透け感があり着る機会がなかったので、まだ新しいまま実家に眠ってます。
でも、その鮮やかな赤に蜻蛉のような薄い生地のパンツのインパクトは相当強かったようで、
母は今でも「あなた、可愛いのあるじゃない。KENZOさんの」と、ことあるごとにわたしに履かせようとしますが、「ちょっと待ってよ、ママ、年齢、体形といろいろ変化してるんだから」と心でつぶやき、「うん、すごいオリジナルだよね」と話を合わせる。
母はあの生地をなにか別のものにリサイクルしたいんじゃないかなと秘かに思う。
そう思うくらい、むげに捨てるには惜しい蜻蛉のような赤い軽やかな生地。そこに金のグラフィックな模様。押しプリントだからうっかりすると剥げてしまいそうなか弱さがある。
オリエンタルのようであり仏教装束のようでもあり、愛らしさもある。
これをデザインできるのはKENZOさんなんだよね。
数年前、セブン&アイとのコラボで洋服やバッグの限定販売企画がありさ、わたしの眼をひいたのは、花火のように大らかに、花芯もオープンな大輪の花がぱしっと中央に描かれ、その上に手書き文字でParis-Tokyo のエコバッグ。
ああ、KENZO さん、変わってない〜と予約注文したわりに実はあまり使っていなかった。
でも今年に入ってこんな鬱々した時だからこそ、パッと大輪の花のエコバッグは書類を入れるセカンドバッグとして使う機会がぐんと増えていました。
ただ縦長で深いフォルムなのに内ポケットがひとつもないのが玉にキズなので、自分で内ポケット貼り付けちゃおうかと思ってるくらい、末長く使うつもりです。
KENZOさんのデザインは元気になりたいときに必要になる。
それが、こんなに早く、あっというまに、奪われてしまった。
口惜しくて悲しい。
パリは今またコロナの拡大を受けて厳戒態勢です。