わたしにとっては発見でした。
2018年のフランスでのジャポニスム関連行事として田中一村の絵もフランスに渡り、その際、現地でも高く評価されたことは仕事で知ったのですが、その時に初めて目にしたのは奄美大島で描かれた南国の植物がぎっしり詰まった作品。
う〜ん、好みと違うかなあ、と失念していたのですが、今回の大回顧展では彼の幼少期から最晩年の作品が網羅されていて、びっくり仰天。
本物を見るとなんと繊細な日本画。しかも幼少期の父親(彫刻師)以外、特定の師匠にもつかず、南画の伝統を独学で勉強されたというからまたびっくり。昭和の若冲という言われ方もしますが、天才の凄みのある若冲さんよりも、苦行の道をひたすら歩んだ努力派の一村さんの好感度たちまちアップ。
今回の展覧会で、とてもありがたかったのは私のような素人にもよくわかるキャプションの説明。とても丁寧で、制作時の作家の心理的・物理的状況が簡潔に説明されているので、なるほど・・となるわけです。共感しやすい。
本展の宣伝素材にもなっている「アダンの海辺」はやはり唸ります。
それでいて、枯れた味わいの「草花と岩上の赤髭」(写真下)は、一村の自画像かなと思いながらも、見ている私自身を重ねてみたりして、なんともなんとも惹かれます。
この絵葉書は抜粋でしかなく、本当は前景に草花を配したもっと縦長のフォーマットで、この赤髭という鳥の孤高の姿がより際だっています。
この岩の滲み具合もぐっときますよね。大好きな一作です。買うなら(買えないけど)、これです。鳥や草花の愛らしさ。絶妙な構図。
一村さんは写真にも興味を持ち、独学で学んだそうですが、何点が出品されている写真を見ても、彼の構図のセンスは発揮されています。合点!
展覧会は12月1日まで。 わたしは人が空き始めていた17時頃に行き、終了まで粘って1時間半。でももうちょっといたかったかな。