エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「スマートグリッド革命」(効果を上げつつあるアメリカのグリーンイノベーション)

2010-10-24 08:51:15 | Weblog
日本では新成長戦略でうたわれたグリーンイノベーションがデフレ状況の下で「逃げ水」のような状況になっていますが、 米連邦政府によるグリーンイノベーションは、着実に効果を上げつつあります。このことは、まず、09年12月15日バイデン副大統領がオバマ大統領宛てに提出した『進捗報告:クリーンエネルギー社会への移行』(Progress Report:The Transformation to A Clean Energy Economy)においてうかがい知ることができます。報告は、オバマ政権が発足から約1年間に講じたクリーンエネルギー関係の施策とその成果をまとめたものです。
報告によると、ARRA法のクリーンエネルギー関連予算として約800億ドルが充てられました。これと民間などからの投資を合わせて1500億ドルのクリーンエネルギー事業が創設され、また、既存のプログラムによってさらに約900億ドルの事業が創設されたということです。
再生可能エネルギーに関しては、ARRA法の234億ドルによって、25万3000人の雇用創出が見込まれています。また、これに合わせて行われる民間などからの投資430億ドルによって、さらに46万9000人の雇用が創出される見込みです。これらの施策によって、再生可能エネルギー利用発電量を09年当初の27.8ギガワットから12年には55.6ギガワットに、国内の再生可能エネルギー利用装置の製造能力を09年当初の6ギガワットから12ギガワットに、ともに倍増を目指しています。
スマートグリッドについては、ARRA法による約40億ドルの助成により、4万3,000人の新たな雇用が創出されました。また、民間などからの約57億ドルの投資により、さらに6万1,000人の雇用創出が見込まれます。スマートメーターについては、現在の倍以上に当たる1800万台のスマートメーターの普及が見込まれます。さらに、公的資金と民間投資によって設置台数は、13年までに2600万台、15年までに4000万台に達する見込みです。また同法によって、送配電網の信頼性向上とセキュリティ確保のためのセンサを、13年までに現在の5.5倍に当たる877万台設置する予定です。
また、エコカーについては、プラグインハイブリッド車、電気自動車、充電施設などインフラ整備、新たなクリーン燃料などへの投資として160億ドルのプログラムを発表しました。これにより、15年までに3つの新たな電気自動車製造工場が立ち上がり、バッテリなど30の自動車部品製造工場が生産を開始します。クリーン自動車関係のインフラ整備として、15年までに10数都市に1万ヵ所以上の充電施設を整備する予定です。
エネルギー効率の向上では、10年までに50万世帯、12年までに100万世帯の低所得者住宅について断熱材や二重窓の設置といった耐候性の向上を行うことになっています。また、ARRA法は住宅のエネルギー効率向上資金について、30%の税制優遇措置を用意しています(限度額は1件当たり1500ドル)。さらに、DOEが新設した「改善強化(Retrofit Rump Up)プログラム」は、地域や町単位の省エネのための修繕経費の負担軽減に貢献すると見込まれています。
家電などの省エネ基準策定について、前政権は年間平均1機種のペースで基準設定を行っていましたが、09年2月にオバマ大統領がDOEに対して、法令などが要請する20種あまりの機器の基準策定を急ぐよう指示し、8月から9月にかけて、食器洗い機と白熱灯、電子レンジと電気・ガスキッチンレンジ、蛍光灯と白熱反射灯、商用ボイラーと空調装置、冷蔵飲料自動販売機の5種の機器の省エネ基準が発表されました。
科学と技術革新分野では、10年度に126億ドルを主要な国立研究所や大学などでの先進的研究開発に充てています。また、ARRA法の4億ドルの資金によって、再生可能エネルギー利用発電、エネルギー貯蔵やバイオ燃料などの先進的エネルギー技術の研究開発ペースを加速するプロジェクトを助成します。
さらに、大統領経済諮問委員会(CEA)は10年1月13日、ARRA法の経済効果に関する2回目の報告書をまとめ、公表しました。それによると、総額7,870億ドルのうち約3分の1に相当する2,633億ドル(減税も含む)が支出され、さらに、総額の2割弱に相当する1,497億ドルも支出可能になっており、全体の過半の実行にメドが立っているとのことですが、今回の報告は、オバマ政権が特に力を入れるクリーンエネルギー関連の施策の実施状況を特別に取り上げて分析しているのが特徴です。
その分析によると、クリーンエネルギー関連の施策は約900億ドル(支出60億ドル、減税295億ドル)で、対策総額の11%に達します。09年12月末時点で総額900億ドルのうち、既に割り当てが決まったものは34%にとどまり、経済対策全体の進捗状況と比べると、遅れています。さらに実際に支出されたのは51億2,000万ドルで、予定総額の5.7%にとどまっています。分野別で最も実施が進んでいるのが省エネルギー関連事業で、支出予定額の60%、119億ドルの割り当てが決まっています。省エネルギー関連では、低所得者層が住宅の省エネ化に取り組む際に最大6,500ドル補助するプログラム(50億ドル)や、州・地方政府などが実施する省エネルギープロジェクトへの補助金(32億ドル)などが代表的です。