エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

化石燃料系エネルギーから太陽系エネルギーへの転換が生む新たな資源問題

2010-10-14 00:13:33 | Weblog
私が代表をつとめる一般社団法人スマートプロジェクト(こちらをご覧ください)の設立をウェブ上で明らかにした6月24日に刊行した拙著『スマートグリッド革命』(こちらをご覧ください)では、以下のように書きましたが、ここでは新たな視点を提供したいと思います。

「いま私たちは、ピークオイルの近未来での到来と地球環境問題の深刻化という2つの危機により、地下の化石燃料エネルギーにより支えられてきたシステムから地上の太陽系エネルギー(太陽光、風力、バイオマスなど)により支えられてきたシステムへと転換しなければならないという命題に直面しています。化石燃料エネルギーと太陽系エネルギーを比較すると、最も大きな性格上の違いは、化石燃料エネルギーは、濃縮されて特定の場所に大量に存在しているのに対して、太陽系エネルギーは、無尽蔵にあるが広く薄く存在しているために、濃縮するのに技術とコストが必要だということです。化石燃料エネルギーと太陽系エネルギーは、経済学的には「代替財」の関係にありますので、総需要が一定とすると、ダーティではあるけれども割安な化石燃料エネルギーからクリーンではあるけれども割高な太陽系エネルギーへのシフトは、両者の相対価格を大きく変化させなければ起こりません。
そのために税、補助金などでの政策的な対応(前者に対するムチ、後者に対するアメ)が一つの方途ですが、これだけでは足りません。市場における相対価格の変化が基盤にあって、その上に政策的な対応が行われるのが最も効果的であると言えます。今後の化石燃料エネルギー市場の動向を展望すると、資源供給国の供給余力の低下に伴って市場価格が上昇し、中国、インドなどの新興国におけるエネルギー需要の増大がそれに拍車をかけます。さらに、08年9月リーマンショック後の世界金融危機後に一時停滞してグリーバルな資金循環が回復してきたことから、投機資金が再び回帰し、世界の原油市場は高騰とともに高止まりすることが確実と見られています。このことは、部分均衡的にみると、企業経営にとってのコストアップ要因となりますが、あらゆる資源価格の上昇というパラダイムシフトととらえるならば、これまで商業ベースで採算に乗らなかった太陽系エネルギーに関する研究開発プロジェクトに様々な投資機会が到来し、実用化が図れるようになることを意味します。その反面、化石器燃料に関するプロジェクトには投資資金が回らなくなり、化石燃料は物理的な枯渇の前に経済的な枯渇という現象に直面します。」

以上に加えで新たに指摘したいことは、太陽系エネルギーへの投資は、ベースメタルやレアメタルなど、新たな資源需要を喚起するということです。現在、これら新市場での競争優位を占めようと世界中に企業が参入し、特に中国の官民挙げた対応が目立っていますが、皮肉なことに、そのことが新たな資源争奪戦を招く結果となっています。
本来ならば国際的な資源管理が必要であるにもかかわらず、今回の中国のレアメタルの輸出規制が象徴するように、そのようなスキームの構築は望みうべくもなく、世界的な資源争奪戦の中で各国とも独自の資源戦略を展開し、資源供給先の多角化や国家備蓄はもとより、技術力を生かした代替資源の開発、資源リサイクルによる都市鉱山開発のシステム構築、中長期的な人材育成などが急務となってきています。
さらに、以前ご紹介した「マグネシウム文明論」などの発想を根本から転換した対応も必要となります。