ある記憶

遥か遠くにいってしまった記憶たち

『パンツ丸見え』の続きを少し

2009-07-26 07:47:54 | 




鶴岡八幡宮への行きすがら、ジージー泣くセミを捕まえては道行く子供にあげた。
セミを取るのは昔とった杵柄で大得意、彼女はしきりと感心していた。
通り沿いのお店はどこも興味深いみやげ物があって観光客で賑っている。
何か買ってあげたかったが何しろお金もギリギリしかなく断念せざるを得なかった。
だから僕が出来ることといったらせいぜい彼女の前でおどけたり強がって見せたりすることで精一杯だった。

今日はどこに泊まろうか。何の計画もなく来た旅である。電話帳で調べて素泊まりの旅館を探した。
今ではそこがどこだったかすっかり記憶のかなたで思い出せない。

突然の来客にも関わらず旅館の仲居さんは優しく僕らを迎えてくれた。
「ご夫婦でご旅行ですか」「お風呂はお二人で入れるようにしてありますからいつでもおっしゃってください」

とてもこそばゆかった。二人で顔を見合わせ、ばつの悪い思いをした。
二十代の二人は本当に若夫婦に見えたであろうか。相当、貧乏な夫婦の旅行に見えたんだろうか。
それでも仲居さんはそんな僕らにとてもよくしてくれた。


その夏の短い休暇の終わりは小田急線の藤沢の駅だった。
そこでのしばしのお別れはとっても辛かった。
彼女に泣かれた。
これではやはりいけないのだと思った。


それから僕は仕事の関係で東京へ帰ったが、
まだ夏休みのC子は府中の実家に帰る前に北鎌倉あたりを一回りすると言うことだった。
北鎌倉の古史、古物を見学したいのだという。
その後、彼女の一人旅の風景が、手紙に静かにしたためられていた。
胸が痛くなったのを今でも覚えている。

                                  


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2 コメント

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Unknown (ポテト)
2009-07-27 06:15:36
‥‥2ペエジ目を読み終わりました‥‥

いつの日にか3ペエジ目書いてみてください‥‥
返信する
悲しい物語なもので (dragon21)
2009-07-27 12:12:52
こんにちはポテトさん。


またいつか触れる機会があればということで。

さて、全国荒れ模様です。
北海道の夏はいかがですか?
過ごしやすいですよね。
返信する