ある記憶

遥か遠くにいってしまった記憶たち

頑是ない歌

2009-04-27 22:54:44 | 
  詩を読みたくなる時も…




頑是ない歌


思へば遠く来たもんだ
十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた
汽笛の湯気は今いづこ

雲の間に月はゐて
それな汽笛を耳にすると
竦然として身をすくめ
月はその時空にゐた

それから何年経つたことか
汽笛の湯気を茫然と
眼で追ひかなしくなつてゐた
あの頃の俺はいまいづこ

今では女房子供持ち
思へば遠く来たもんだ
此の先まだまだ何時までか
生きてゆくのであらうけど

生きてゆくのであらうけど
遠く経て来た日や夜の
あんまりこんなにこひしゆては
なんだか自信が持てないよ

さりとて生きてゆく限り
結局我ン張る僕の性質
と思へばなんだか我ながら
いたはしいよなものですよ

考へてみればそれはまあ
結局我ン張るのだとして
昔恋しい時もあり そして
どうにかやつてはゆくのでせう

考へてみれば簡単だ
畢竟 意志の問題だ
なんとかやるより仕方もない
やりさへすればよいのだと

思ふけれどもそれもそれ
十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた
汽笛の湯気や今いづこ



  思えば遠くに来たもんだ。来たもんだ。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
セピア色~ (亜衣)
2009-04-28 17:31:50
渋いですね~

昭和の匂いがするような・・・
セピア色をじっくりと堪能できるような・・・

そうですね
人生とはそのようなものでしょうか~

十二の~・・・とは
早熟ですね(笑)

わたしは・・・・
十五くらいでしょうか~(あまり変わりませんか~?)笑
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中也の (dragon21)
2009-04-29 14:33:36
この詩は中原中也の歌なんです。
独特の中也節が漂ってますよね。
倦怠感、哀惜の念のような。
たまに中也に縋りたくなります。
同じ思いを共有したり確認するだけで人間楽になるものです。
大分助けられているかもしれないな。
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あらまあ~(汗) (亜衣)
2009-04-29 23:46:32
勉強不足でしたぁ~

恥ずかしいです’’

文体で気づき、覚えのあるような~フレーズで
気づくべきでしたね~・・・

「倦怠感、愛惜の念」いいですね
dragon21さんのムードに共通するように
思えるのですが・・・(ちょっと言い訳でした)
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大丈夫ですよ (dragon21)
2009-04-30 06:44:34
おはようございます、亜衣さん。

それほど有名な詩でもないし大丈夫ですよ。

彼の世界にあまりにどっぷりつかり過ぎると「危険」な面もあります。

つかず離れずほどほどにくらいがいいかも。
距離感は必要ですよね。

じゃあないと現実生活に支障が出ることも w

けれど好きです、中也。
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