あの頃
人を信ずることは人を救ふ。
かなり不良性のあつたわたくしを
智恵子は頭から信じてかかつた。
いきなり内懐(うちふところ)に飛びこまれて
わたくしは自分の不良性を失つた。
わたくし自身も知らない何ものかが
こんな自分の中にあることを知らされて
わたくしはたじろいだ。
少しめんくらつて立ちなほり、
智恵子のまじめな純粋な
息をもつかない肉薄に
或日はつと気がついた。
わたくしの眼から珍しい涙がながれ、
わたくしはあらためて智恵子に向つた。
智恵子はにこやかにわたくしを迎へ、
その清浄な甘い香りでわたくしを包んだ。
わたくしはその甘美に酔つて一切を忘れた。
わたくしの猛獣性をさへ物ともしない
この天の族なる一女性の不可思議力に
無頼のわたくしは初めて自己の位置を知つた。
ちえこ、ちえこ、… ち○こ … 昔の女の名前にも似て
「レモン哀歌」 は、光太郎との出会い。美しい詩。
「道程」もそう。励まされる詩。
「あの頃」。そう、あの頃。
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とても好きな詩です。
だけど
とても哀しい
物語。
千恵子は東京に空がないという。
本当の空をみたいという…
千恵子と光太郎のストーリーはたまらない。
思うたびに泣けてきます。
また、千恵子亡き後の、
光太郎の孤高な生き方にあこがれもします。