日本でも、隣近所は「佐藤」さんばかりという地域があるように、コスタリカにも同様なことがある。筆者の知っている例では、前述の“Delgado”(やせ)さんばかりという地域もある。こうなると、“Delgado Delgado”と、父の姓と母の姓を重ねることになる。シングルマザーの場合は姓はどうなるかというと、父親が分からないとき、または認知されていないときは、母親の姓を重ねる。同姓ばかりの地域でないところに住んでいる子供にとっては肩身が狭いかと思われる。父親が認知してくれると、晴れて父親の姓を名乗れる。筆者も一例を知っているが、子供はうれしくて父親の姓を吹聴してまわっていた。
ところで、イスラム教徒のマレー人のフルネームは最後の誰それの息子(娘)を表す“bin (binti) + 父親の名前」となる。何らかの事情で父親が不明の場合は“bin (binti) Abdullah” にするそうである。 “Abdullah”はありふれた男子名なので、“bin (binti) Abdullah”だと、父親が不明かどうかはまずわからない。
ちなみに、イスラム教の開祖ムハンマド(かつては「マホメット」という名で教科書には登場していたものだ。スペイン語では Mahoma「マオマ」)のフルネームは『ムハンマド・イブン=アブドゥッラーフ・イブン=アブドゥルムッタリブ』というそうで、「アブドゥルムッタリブの息子アブドゥッラーフの息子ムハンマド」という意味である。つまり、ムハンマドの父親の名前は「アブドゥッラーフ」で、アルファベットで表記すると“Abdullah”になる。
父親がわからない場合は、ムハンマドの父親が父親代わりで、預言者ムハンマドと同格になるわけで、ありがたいことである。
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