【絵葉書より:1980年以前。昔ながらの「牛飼い」。スペイン語では boyero という。スペイン語の「オウシ」は一般的には、toro(トロ) で、メウシは vaca(バカ) だが、buey は「去勢されたオウシ」である。そして、buey を飼う人が boyeroである。この写真は絵葉書用のヤラセのようだ。牛と牛飼いがきれいすぎる。】
グアナカステ州の州都 Liberia はアフリカの国の名前にもなっているが、このほかにも、よその国の都市名なども多く見られる。思いつくままに列挙してみよう。
Cartago、Filadelfia、Cairo、Manila、Atenas、Grecia、San Francisco、Buenos Aires、Barrio México(メキシコ地区)など、数多い。
Filadelfia は英語では Philadelphia と表記されるが、そもそもフィラデルフィアとは現ヨルダン王国の首都アンマンの昔の名前である。ここもかつては古代ローマの一部であり、そこからスペインに移住した人たちもいたことだろう。そして、故郷をしのんで、新たな町をフィラデルフィアと名付ける。さらに、そこからアメリカやコスタリカにも移動したのだろう。
Atenas はギリシアの首都「アテネ」のこと。Grecia は「ギリシャ」である。コスタリカにギリシャ系移民がいるかどうか、不明であるが、いたとしてもごく少数だろう。少なくとも筆者には知り合いはいない。ギリシャ系なら姓ですぐわかる。面白いことに、これらの都市にはドイツ系が多いらしい。
ギリシャ系移民がいないのなら、どうしてこんな名前になったのかというと、「カルタゴ」と同じ経緯だと思う。ギリシャも古代ローマの版図だったし、シチリアやナポリはローマ以前のギリシャの植民地だった。その後、中世から近世にかけて、南イタリアはスペインンの勢力圏に入る。そこから、スペインに移動して、新開地でギリシャにちなむ地名を付けたギリシャ系の人もいたことだろう。さらに、そこの人たちが新大陸に行って、ギリシャにちなむ名前を持ち込んだのだろう。
エジプトのカイロも古代ローマの版図だったことから、そこからスペインへの人の移動もあったことだろう。
マニラはフィリピンの都市がいちばん有名だが、グーグルで検索してみると、やはりスペインにもマニラはあった。コスタリカのマニラはスペインのマニラに由来するものだろう。
グアナカステ州の州都、リベリアはアフリカのリベリアに由来するとは到底思えない。Liberia は「自由な」を表す形容詞 libre に関連する言葉で、アフリカのリベリアはアメリカの解放奴隷の国だったはずである。
さて、コスタリカはインディオの言語に由来する地名もある。前回まで触れた Guápiles(guape という「双子」を表す言葉に由来)もそうである。グアピレスの近くに Cariari という町がある。これもインディオのことばにゆらいするサンホセ郊外にも同名の、ゴルフやテニスを楽しめる施設がある。すでに触れたが、パナマとの国境近くの町の名前はブリブリ(Bribri)だった。クレヨンしんちゃんにはぜひ行ってもらいたいところである。リモン州はコスタリカの中で、インディオの地名がいちばん多く残る州である。
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