明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



心中事件を繰り返し、一度は相手の女性だけ死なせた、というイメージも悪かったのだが、少年時代の私に、思いっきり嫌われてしまった作家である。以来、嫌いというと太宰を挙げていた私であったが、太宰の没年齢をとっくに越してしまい、見え方も違うだろう、きっかけさえあれば、ちゃんと読んでみるのだが、と内心思っていた。なにしろ嫌い嫌いといい続けてきたので、自分からは読めない。しかし、仕事となれば仕方が無いとばかりに、改めて読んだ一冊目が『お伽草紙』だったのも良く、やっぱり面白いのである。こうなると“乃木大将とステッセル”というわけで、面白くてしょうがない。だいたい、どこをとって称されたかは知らないが、無頼でもなんでもないではないか。 撮影場所は旧島津公爵邸、現清泉女子大である。太宰は、当時分譲された土地に建つ借家に3ヶ月住んだだけなので、まるで『風と共に去りぬ』の舞台のような女子大正面ではなく、ひっそりとした一角を選んで背景とした。三島由紀夫の号で、実物の人間を横に配するのは、その素材感の違いから避けるべきだと学んだはずなのだが、太宰に酒も煙草も駄目となると、女性に登場してもらうほかはない。だがやはり、すぐ横の女性に比べて太宰の髪があまりにも粘土。ベランダから突き出した自分の頭を撮影し、急遽私の髪を貼り付けたのは、入稿の朝であった。

01/07~06/10の雑記
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