明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

MG5  


Tの履く胸まである胴付き長靴に、艶を出すために油を塗ってみたが、思ったような艶にならない。そこで2、3回使ってそのままになっていた整髪料『MG5』を塗ってみた。 MG5は渋澤龍彦邸にお邪魔した時、生前そのまままにしているという本棚に置いてあった。私の世代では、『ヴァイタリス』と並んで、中学生の“入門用”のヘアーリキッドである。篠山紀信撮影の『みずゑ』ではどかしてあった。実に判ってない。「渋澤がMG5だから良いんじゃねえか」。というわけで翌日スーパーで買ったのだが、今では何かを髪に塗りたくることはないので、三本立て150円で毎日曜、映画館で洋画を観ていた頃を想い出すにとどまったのであった。 今の私の“元ネタ”はほとんどこの頃読んだ本や妄想したことが基本になっている。寺山修司は『どんな鳥も想像力より高く飛べる鳥はいない。人間に与えられた能力のなかで、一番すばらしいものは想像力である』。といっているが、まったくそのとおりである。団塊の世代が好き勝手していたあの時代、ただ押さえられていた身体と心の酷くバランスの悪い中学生の妄想は物凄い物があり、私の一生を左右することとなった。そう思うと大人になって見聞きしたものは無粋なだけで、元ネタになる物はほとんどないといってよい。あとはそれを目に見える形に頭の中から取り出す技を身につけるだけ、という恐ろしく地味なことになったが、これがそう都合よくいかないので、一度完成したが入稿を月曜日にしてもらったので、Tの気になった所を作り直して撮りなおそう、という訳なのである。

※『私が作っているのは誰でしょうクイズ』只今正解者8名。31日24時まで。

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