メリエスの銀河鉄道(PART 1)

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デンマンさん。。。 あんさんは、どないなわけで“メリエスの銀河鉄道”を持ち出してきやはったん?

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あきまへんかァ~。。。?
かめへんけど、理由を訊いてますねん。。。 “メリエスの銀河鉄道”なんてぇ、これまでに聞いた事があらへん。。。
そうやろなァ~。。。 わてかてぇ、聞いた事があらへんでぇ~。。。
それやのに、どないなわけで“メリエスの銀河鉄道”というタイトルにしやはったん?
実は、ずいぶん前にバンクーバー市立図書館で借りていた本を読んで、マイクロソフトのノートパッドを使って、メモを残しておいたのやがなァ~。。。 そのメモ帳を久しぶりに眺めていたら、次の箇所に目が留まった。
銀河鉄道の夜

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どこかで「銀河ステーション、銀河ステーション」という声がしたと思うと、目の前がさっと明るくなって、ジョバンニはなんべんも目をこすってしまいました。
気がつくと、彼は小さな列車に乗っていました。
夜の軽便鉄道の小さな黄色の電灯の並んだ車室に、窓から外を見ながら座っていたのです。
すぐ前の席にカムパネルラが座っています。
彼は丸い板のような地図を見ていました。
その中に、白く現れた天の川の左の岸に沿って一条の線路が南へ南へとたどっていくのでした。
小さなきれいな汽車は、ごとごとごとごとと、すすきの風にひるがえる中を、天の川の水や三角点の青白い微光の中を、どこまでも走っていきます。
(中略)
車掌が検札に来ました。
ジョバンニのポケットには、いつのまにかどこへでも行ける緑色の切符が入っていました。
青年と女の子とその幼い弟が乗ってきました。
青年は自分たちが兄弟であり、乗っていた船が氷山にぶつかって沈んでしまったことを話しました。
次々と現れる車窓からの景色を見ながら、女の子と楽しく話をするカムパネルラを見て、ジョバンニは悲しくなってしまいます。
南十字の駅で三人連れが降りてしまい、ジョバンニが「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうね」と振り返ると、今までカムパネルラの座っていた席に、その姿は見えず、ただ黒いビロウドばかり光っていました。
ジョバンニは喉いっぱい泣き出しました。
(中略)
彼は眠ってしまっていたのです。 (略) ジョバンニは、家に帰る途中、カムパネルラが川に落ちたことを知らされます。
川に落ちた級友を助けようと川に入って助けましたが、そのまま水の中に見えなくなったのです。
川の下流のほうには川幅いっぱい銀河が大きく映って、まるで水のないそのままの空のように見えました。
カムパネルラの父は、何も言えないジョバンニに、彼の父から元気な便りのあったことを教えてくれました。
ジョバンニはいろいろなことで胸がいっぱいになりながら、母親の待つ家に一目散に走りました。

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(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)
38-39ページ 『あらすじで読む日本の名著』 No.2
編者: 小川義男
2003年11月13日 初版第2刷発行
発行所: (株) 樂書館

『銀河鉄道の夜』という作品は、宮沢賢治が書いたものですやん。。。 それやのに、どないなわけで“メリエスの銀河鉄道”にしやはったん?

実は夕べ、バンクーバー市立図書館で借りていた本を読んでいたのやァ~。。。

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■『拡大する』

上のリストの赤枠で囲んだ本やァ。。。 そないしたら 次の箇所に出くわしたのやがなァ~。。。
映画の子、宮沢賢治
賢治作品には映画の影響と思われる物語ないしシチュエーションがしばしば見られる。
蔡宜静は『萩原朔太郎、堀口大学、宮沢賢治および北川冬彦における映画の感受性』において、人間に変装した白熊たちが列車ジャックをするという「氷河鼠の毛皮」の展開が、映画史上最初の西部劇『大列車強盗』(エドウィン・S・ポーター監督、1903)や『ジゴマ』の列車強盗場面に類似していることに注目している。
蔡の論に接ぎ穂すれば、「銀河鉄道の夜」において弓矢を構えた「インデアン」が列車と並走する場面は、西部劇の定番、たとえばジョン・フォードの大作西部劇『アイアン・フォース』(1924)を想わせる。
そもそもリュミエール兄弟の『ラ・シオタ駅への列車の到着』(1896)以来、運動の表現を身上とする映画は、列車をはじめ種々の乗り物を積極的に描いた。

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「銀河鉄道」の発想源の一つは、アルプスの斜面を登る汽車がそのまま山頂から宇宙へ旅立つ場面がある『不可能な世界への旅』(ジョルジュ・メリエス監督、1904)か、その模倣映画だったのではないだろうか。
賢治の最初期の童話と目されている「双子の星」に顕著な、星の擬人化、彗星の表象、宇宙空間から海底への転落なども、1900年代のメリエスやパテ社のファンタジー映画を想わせる。

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(岡村民夫 / 表象文化論)
(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)
175ページ 『宮沢賢治 修羅と救済』
編集人: 西口 徹
2013年9月30日 初版発行
発行所: 株式会社河出書房新社

つまり、ジョルジュ・メリエス監督の作った『不可能な世界への旅』という映画からインスピレーションを得て、宮沢賢治は『銀河鉄道の夜』を書いた、と あんさんは考えはったん?

いや。。。、わてがそう考えたわけやのうてぇ、上の本にそう書いてあるねん。。。 わては その映画を観たのやけど、ここに その一部を貼り出すさかいに、めれちゃんも見たらええやん。。。

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「賢治の最初期の童話と目されている“双子の星”に顕著な、星の擬人化、彗星の表象、宇宙空間から海底への転落なども、1900年代のメリエスやパテ社のファンタジー映画を想わせる」と書いてあるけれど、確かに上の映画の中にも“星の擬人化”が次のように出てきよる。

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そやけど、“星の擬人化”は上の映画を観なくても、誰かて考えますやん。。。

そやけどなァ~、上の映画の中にアルプスの斜面を登る汽車がそのまま山頂から宇宙へ旅立つ場面が出てくるねん。。。

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つまり、賢治は映画が好きで 上の映像を見ているさかいに、当然、“星人”も見ているということやねん。。。

宮沢賢治はジョルジュ・メリエス監督が作った映画を見て強い影響を受けた、と あんさんは思いはったん?
それ以外に考えられへんやろう!? しかも、“「銀河鉄道の夜」において弓矢を構えた「インデアン」が列車と並走する場面は、西部劇の定番、たとえばジョン・フォードの大作西部劇『アイアン・フォース』(1924)を想わせる”と、書いてあるねん。

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The Iron Horse (1924)
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宮沢賢治は欧米の近代的文物に興味を持っていたのやでぇ~。。。、 そやから洋書を買いそろえたり、クラシックレコードを聴いたり、もちろん、映画にも関心があったのやァ、つまり、賢治はモダニストやったのやがなァ~。。。 そやから、ジョン・フォードが作った上の西部劇『アイアン・フォース』も観ていたに違いない。

要するに、宮沢賢治は西洋カブレしていた、と あんさんは言いたいのやねぇ~。。。?
いや。。。、わてが決め付けているわけやのォ~てぇ、宮沢賢治の生活を見ていると、そうとしか言えんのやがなァ~。。。
そやけど、それだけでは、ちょっと納得ゆかんわァ~。。。 本人が言うてるわけやあらへん。。。
めれちゃんが、そないに言うのやったら、次の文章を読んだらええやん。。。
イギリス海岸

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夏休みの15日の農場実習の間に、私どもがイギリス海岸とあだ名をつけて、2日か3日ごと、仕事が一きりつくたびに、よく遊びにいったところがありました。
それは本当は海岸ではなくて、いかにも海岸の風をした川の岸です。
北上川の西岸でした。
東の仙人峠から、遠野を通り土沢を過ぎ、北上山地を横切ってくる冷たい猿ヶ石川の、北上川への落合から、少し下流の西岸でした。
(中略)
日が強く照るときは岩は乾いて真っ白に見え、たて横に走ったひび割れもあり、大きな帽子を冠ってその上をうつむいて歩くなら、影法師は黒く落ちましたし、全くもうイギリスあたりの白亜の海岸を歩いているような気がするのでした。

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(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)
163ページ 『宮沢賢治 修羅と救済』
編集人: 西口 徹
2013年9月30日 初版発行
発行所: 株式会社河出書房新社

宮沢賢治は、こないに書いてるのやでぇ~。。。 もちろん、賢治自身はイギリス海岸に行ったことなどあらへん。。。

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賢治は、こないにして北上川の西岸の“イギリス海岸”を歩きながら ドーバー海峡を臨む本物の“白い壁のイギリス海岸”を想い浮かべていたのやでぇ~。。。 ちょうどロマンチストでモダニストの わてのように。。。 (モナリザの微笑)

なんでぇ、あんさんがロマンチストでモダニストやのォ~。。。?
そやかてぇ、わては賢治の本を読んで、ただ空想するだけでは物足りなかったよってに、本物の“白い壁のイギリス海岸”を見てきたのやでぇ~。。。
信じられへん。。。
あのなァ~、めれちゃん。。。 昔の人は“信じる者は救われる!”と言うたのやでぇ~。。。 そやから、めれちゃんも、わての言うことを信じたらええやん。。。

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(すぐ下のページへ続く)