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Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

エリジウム

2013年09月24日 22時54分33秒 | 洋画2013年

 ◎エリジウム(2013年 アメリカ 109分)

 原題 Elysium

 staff 監督・脚本/ニール・ブロムカンプ

     製作/ビル・ブロック ニール・ブロムカンプ サイモン・キンバーグ

     撮影/トレント・オパロック 美術/フィリップ・アイヴィ

     衣裳デザイン/エイプリル・フェリー スーツデザイン/ジョルジオ・アルマーニ

     音楽/ライアン・エイモン

 cast マット・デイモン ジョディ・フォスター シャールト・コプリー アリシー・ブラガ

 

 ◎2154年、ロサンゼルス

 Elysiumは、ギリシャ神話にある。

 Elysian Fields、エリュシオンてのがそれで、

 祝福された人々が死後に住む楽土とか、理想郷とかいった意味だ。

 で、そこに至上の幸福があるっていうんだけど、

 たしかに貧困も病気も差別もない世界があるなら、それは理想郷にちがいない。

 けど、それは1%のエリートのためのもので、

 99%の人々は貧困と病気と差別の中で、暮らしてる。

 ってのが、この映画に描かれてる世界なんだけど、

 もちろん、現在のアメリカ、あるいは地球を見立てているのはまちがいない。

 監督のニール・ブロムカンプが描いているのは『第9地区』でもそうだったけど、

 人種差別や格差社会だ。

 日本人はどうもそういうことに鈍感で、

 若き天才SF監督の声がどこまで届いているのか、よくわからない。

 ただし、ブロムカンプはなにも革命を引き起こそうといってるわけでもないし、

 世界を包んでいる人種差別や格差社会はこんなふうにしたらよくなるとか、

 そんな理想論をぶちあげようとしてるわけでもない。

 ぼくたちが直面してる世界のありさまを淡々と描くだけじゃ物足りないから、

 そこにSF観っていうか、カリカチュアされた世界を現出することで、

 そこから現代世界に視点を移してみないか?と話しかけているって程度な感じだ。

 でも、それでいいんだろね。

 にしても、乾燥した地球のありさまは実にリアルで、

 なんだか、まだ『第9地区』の続きを観てるような気がしたわ~。

 ただ、スペースコロニーのエリジウムは、

 所詮、テクノロジーの生み出したまやかしの世界で、

 だとしたら、いったいほんとうの理想郷はどこにあるんだろう?って話だよね。

 ブロムカンプはそれについて回答を出してないんだけど、

 それは当たり前の話で、

 ぼくらが考えないといけないんだろな~。

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パシフィック・リム

2013年09月19日 15時54分21秒 | 洋画2013年

 ◎パシフィック・リム(2013年 アメリカ 132分)

 原題 Pacific Rim

 staff 監督/ギレルモ・デル・トロ

     脚本/トラヴィス・ビーチャム ギレルモ・デル・トロ 原案/トラヴィス・ビーチャム

     撮影/ギレルモ・ナバロ 美術/アンドルー・ネスコロムニー キャロル・スピア

     衣裳デザイン/ケイト・ホーリー 音楽/ラミン・ジャヴァディ

 cast 菊池凜子 芦田愛菜 チャーリー・ハナム イドリス・エルバ ロン・パールマン

 

 ◎音楽だけ、伊福部昭にしたい

 原題になっている「Pacific Rim」というのは、環太平洋地域のことだ。

 特に、太平洋をとりまいている諸岸の中でも、

 先進的な産業地域をいう。

 そこに、2013年8月11日午前7時、kaijuが出現するのだ。

 これだけで、日本のかつての特撮を愛するぼくらは、十分、報われた。

 だから、いまさら一連の円谷プロの作品のここに似てるとか、

 他社の特撮のあそこが元とか、アニメのこれはそのままだとか、

 もう、そんなことはどうでもいい。

 ぼくたちは、ひたすら、この『南海の大決戦』を観ればいい。

 かつて、

 怪獣は日本に襲いかかる巨大な自然災害であるとともに、

 原子爆弾という未曾有の恐怖兵器の象徴でもあった。

 だから、ゴジラは放射能を吐き、日本をめちゃくちゃにした。

 この作品では、kaijuは血液は猛毒だけれども、

 その細胞から抽出されるエキスは薬になる一方、

 ロボットには原子炉が搭載されている。

 で、原子力ロボットに長年乗り組んでいたため被爆したという設定にもなってる。

 なんとも、ギレルモ・デル・トロらしい皮肉だ。

 デル・トロは、現実と幻想、地上と地下とかいった二律背反の構造を好む。

 この作品もそうで、

 上下に異次元が存在していて、とあるトンネルによって繋がっている。

 この隧道があるとき、つまり、2013年8月11日午前7時に開通し、

 以来、kaijuは人類を脅かすというただそれだけのために出現し、

 破壊と殺戮をひたすら繰り返し、人類はその対抗策として、

 怪獣と戦うロボットのドラマからヒントをうけイェーガーを製造することになる。

 イェーガーの志は人類を守るためにひたすらkaijuをやっつけるというものだ。

 なんという単純明快さとおもうんだけど、ところが、ここにもデル・トロの趣味がある。

 上下の異次元という二重構造。

 イェーガーを作動させるためには心がふたつ必要という二重性。

 くわえて、隧道を塞ぐためには、

 TNT火薬120万ガロン(だっけ?)という途方もない爆弾が必要になり、

 それは当然の帰結として、イェーガーに搭載されている原子炉となる。

 人類に危機をもたらす恐れが十二分にある原子力が、

 人類を守るという旧態依然とした理屈がどうしても必要になるという皮肉。

 そんなあたりが渾然一体となって、

 戦い続けるべく運命づけられた人間の戦いの一瞬にだけ焦点をあててる。

 いや~、デル・トロ、すげえ。

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ホワイトハウス・ダウン

2013年09月01日 01時57分55秒 | 洋画2013年

 ◎ホワイトハウス・ダウン(2013年 アメリカ 132分)

 原題 WHITE HOUSE DOWN

 staff 監督/ローランド・エメリッヒ 脚本/ジェームズ・ヴァンダービルト

     製作総指揮/ウテ・エメリッヒ チャニング・テイタム リード・カロリン

     撮影/アンナ・J・フォースター 美術/カーク・M・ペトルッチェリ

     衣裳デザイン/リジー・クリストル 音楽/トーマス・ワンカー ハラルド・クローサー

 cast チャニング・テイタム ジェイミー・フォックス マギー・ギレンホール ジョーイ・キング

 

 ◎黒幕はブラックゴースト団か?

 ジャームズ・ウッズが出がけに星条旗のバッチをはずしたとき、

 あらま~と展開がわかってしまうのはちょっと悲しかったけど、

『エンド・オブ・ホワイトハウス』が某国による工作だったことをおもえば、

 こちらはなんだか『サイボーグ009』みたいな黒幕が蠢いてて、

 ちょっと漫画的な印象だったかな~とおもうのは、世代なんだろか?

 中東への核攻撃を行うことにより、

 ブラックゴースト団が大儲けをするという裏話は、

 もはや、リアルなようでいてリアルな感じがしないのは、

 大団円を迎えてもなお、黒幕の存在が明確な名称として現れないからなのかな?

 まあたしかに、スローモーションで描かれるアクションの臍は、

 きわめて映像的ではあるんだけど、

 ホワイトハウスの屋内と庭内に、ほとんどの場面が固められている分、

 どうしても出たり入ったりの話になってしまうのは仕方ないのかな。

 主題になってるのが親子の信頼というあたりは、

 いかにもハリウッド的な置き方だけど、

 これはこれでちょっとばかし感動しちゃったりする。

 ただ、なんだろう、

 ところどころ、

「くすりとした方がいいんだろうな~」

 っていうカットが置かれているのは、

 緊迫感を和らげるためなんだろうけど、

 これって観客の対象年齢を下げてるんだろうか?

 大統領に憧れる娘という設定を持ってきてる分、そうしないといけなかったのかな?

 まあ、親子で英雄になっていくという設定は、

 もともと嫌いじゃないからいいんだけどね。

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ワールド・ウォーZ

2013年08月20日 17時33分59秒 | 洋画2013年

 ◎ワールド・ウォーZ(2013年 アメリカ、イギリス 116分)

 原題 World War Z

 staff 原作/マックス・ブルックス『WORLD WAR Z』

     監督/マーク・フォースター

     原案/マシュー・マイケル・カーナハン J・マイケル・ストラジンスキー

     脚本/マシュー・マイケル・カーナハン ドリュー・ゴダード デイモン・リンデロフ

     製作/ブラッド・ピット デデ・ガードナー ジェレミー・クライナー イアン・ブライス

     撮影/ロバート・リチャードソン 美術/ナイジェル・フェルプス

     衣裳デザイン/メイズ・C・ルベオ 音楽/マルコ・ベルトラミ

 cast ブラッド・ピット ダニエラ・ケルテス モーリッツ・ブライプトロイ

 

 ◎ゾンビ・ブラピ版

 おもってみれば、ゾンビ映画を初めて観たのは高校生のときだった。

 といっても『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』じゃなくて、

 同監督ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』だった。

 このふたつに『死霊のえじき』を加えたものがロメロのゾンビ3部作になるんだけど、

 そんな解説めいたことはどうでもいいよね。

 でも、おそろしいもので、

 もともとコンゴ出身の奴隷たちの信仰してた神ンザンビ(Nzambi)が、

 ハイチとかを経てアメリカに入ってきたものがゾンビ(Zombie)になって、

 それが映画で扱われたことで、もう世界中の誰もが知る存在になり、

 ついにはブラピまでもが主演する映画のモチーフになっちゃったんだから、

 いやまったくたいしたもんだ。

 ただ、ぼくは活字がダメだからたぶん原作は読まないんだろうけど、

 どうやら、原作では日本も舞台のひとつになって、

 かなり大掛かりな仕掛けになってるらしい。

 ふつうはこれで「ふ~ん」とおもうだけなんだけど、ちょっぴり読みたい。

 ていうのも、映画はあくまでも独立したアクション大作で、

 原作とはかなり濃度が違ってるみたいだからだ。

 ま、それはそれとして、

 台湾で発生した新種の狂犬病ウィルスによって世界が死滅するのを、

 新たなワクチンをWHO細菌研究所が開発していくまでも簡単な粗筋なんだけど、

 やっぱり映画ってのは細かい説明や設定はかっ飛ばしても、

 どんどんと話を展開させていかないといけないんだよっていう見本みたいな映画だった。

 ハリウッド映画らしく離れ離れになった家族との再会がメインに置かれてるけど、

 それじゃあ色気もないわけで、イスラエル国防軍の女性兵士がちょっと色を添えてる。

 このアーミーカットの女性兵ダニエラ・ケルテスが好いんだわ。

 色恋にならないのが、さっぱりしててまたいい。

 ただ、飛行機事故で1匹のゾンビのほかには、かれらしか生還できないってのは、

 ちょっと都合が良すぎるだろとはおもうものの、尺ってもんがあるからね。

 でも、そんな突っ込みはさておき、軍隊蟻のようなゾンビのCGは凄かった。

 生きてる死体があんな敏捷に動くんかいってくらいの壮絶さで、

 これはまじにたいしたもんだった。

 すこしばかり『トゥモロー・ワールド』や、

 『28日後』あるいは『地球最後の男』とかいった匂いもあったけど、

 こればかりはこういう世界を描いたパニック大作なんだから、仕方ないね。

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ハングオーバー!!! 最後の反省会

2013年07月04日 00時49分37秒 | 洋画2013年

 ◇ハングオーバー!!! 最後の反省会(2013年 アメリカ 100分)

 原題 The Hangover Part III

 staff 監督/トッド・フィリップス 製作/トッド・フィリップス ダン・ゴールドバーグ

     脚本/トッド・フィリップス クレイグ・メイジン

     キャラクター創造/ジョン・ルーカス スコット・ムーア

     撮影/ローレンス・シャー 美術/メイハー・アーマッド 音楽/クリストフ・ベック

 cast ブラッドリー・クーパー エド・ヘルムス ザック・ガリフィアナキス ケン・チョン

 

 ◇もうしません

 作品がパワーアップするということはどういうことなのかというと、

 なにも予算が膨れ上がったから、

 ど派手なアクションをするとか、海外ロケをするとか、高額ギャラのゲストを呼ぶとか、

 そういうことじゃないってことが、この頃のハリウッドは忘れてしまってるらしい。

 脚本にお金と時間をかけないとダメなんだよね。

 そうしたことからいうと、

 1作目の脚本を担当したジョン・ルーカスとスコット・ムーアのセンスは、

 けた外れだったんじゃないかなっておもえてくる。

 たしかに2作目は、1作目を踏襲して、なんとか頑張ってた。

 ど派手なアクションはどんどん出てきたけど、

 舞台をバンコクに持っていったことで妙な熱気が入り込んで、

 グロさもあるものの、ぎりぎりのところで笑っていられた。

 でもそれは、いちばん最初に「ハングオーバー」してるからだ。

 この作品の要はハングオーバーつまり二日酔いすることで、

 それが飽きられようとも、続編にするからには二日酔いから始まるのが、

 いってみればお約束ってものなんじゃないかな~と。

 ちなみに、ぼくはネタバレという言葉が好きじゃない。

 ネタというのは話の核心のことで、

 物語の後半とかラストのことをいうんじゃないんだけど、

 どうも、そういうふうにおもわれてないらしい。

 ま、なんにしても、

 流行り言葉はむなしい。

 略語もむなしい。

 だからあんまり使いたくないんだけど、

 そうおもわれないよう先に断っておけば、いまから書くのは話の核心でもオチでもない。

 物語が終わった後、

 まあ、いってみれば、おまけの場面になって、

 結局、呑み助どもの「もうしません」なんてのは口先だけってことが判明し、

 とんでもない状況での新たなハングオーバーを迎えてたのねと、

 多少の未練を残したかたちで終幕させるんだけど、

 やっぱり、

 訳が判らないパニック状況ってのは、冒頭に持ってこないとダメだよね。

 なるほど、たしかに娯楽作品としては、ちゃんと成立してる。

 はちゃめちゃなパワーとエログロまじりのギャグも健在だ。

 どっと笑えるような感じじゃなく、含み笑い的な感じにはなったけど、

 やっぱり、シリーズのフアンとしては、

 ハングオーバーしてない物語には肩透かしを食らった気分だろう。

 ぼくは、このシリーズの失策はふたつあったとおもってるの。

 ひとつは、ザック・ガリフィアナキスを異常者にしてしまったこと。

 もうひとつは、ケン・チョンをひきずってしまったことだ。

 ザックは、ジョン・べルーシーの再来のような気がしてたから、

『アニマルハウス』のときだって、べルーシーは異常者の役じゃなかった。

 けど、どはずれた面白さがあった。

 ザックには、そうした役割を2と3で演じてほしかった。

 キャラクターは強烈なのもいいんだけど、強烈すぎると過激にならざるをえない。

 でも、それは決して得策じゃない。

 その人物の設定がどんどん変わって収拾がつかなくなっちゃうからだ。

 それは、ケン・チョンにしても同じことがいえる。

 品の無さと凶暴性がどんどんとエスカレートしてしまってる。

 ただでさえ嫌味で、あまり好かれないタイプの役がらなのに、ね。

 どうして、

 ザック・ガリフィアナキスとケン・チョンをこんなふうに演出したんだろう?

 やっぱり、2が原因だとおもうんだけど、

 かれらは(スタッフとキャストは)おもいきり成功して、おもいきり儲けた。

 でも、それを吐き出すようなことはしないで、

 もっとおもしろいものを作ろうと頑張ってほしいんだよね。

 かれらは、インタビューで「ぼくらは、20年、苦労した」と正直にいってた。

 それをいえる勇気と自信ができたんだから、3で盛り返してほしかった。

 なんてことを、ハングオーバーフアンとしては、なんとなくおもった。

 4、作ればいいのに。

 反省会は、それからだ。

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G.I.ジョー バック2リベンジ

2013年07月01日 22時54分41秒 | 洋画2013年

 △G.I.ジョー バック2リベンジ(2013年 アメリカ 110分)

 原題 G.I. JOE: RETALIATION

 staff 監督/ジョン・M・チュウ 脚本/レット・リース ポール・ワーニック

     撮影/スティーヴン・ウィンドン 美術/アンドリュー・メンジース

     衣裳デザイン/ルイーズ・ミンゲンバック 音楽/ヘンリー・ジャックマン

 cast ブルース・ウィリス イ・ビョンホン エイドリアンヌ・パリッキ チャニング・テイタム

 

 △こいつは困った

 なんも、おもいつかん。

 たしかに、観た。

 よぶんなことを考えながらだけど、一睡もせずに観た。

 CGをふんだんに盛り込んだアクションは、なかなかだった。

 とくに予告編でもよく観た崖っぷちのアクションは、ふむふむとおもった。

 イ・ビョンホンが刀を右肩に2本差ししているのは、

「抜きにくいんじゃないかな~」

 とおもい、

「両肩にしょえばいいのに」

 とおもったが、

 画面の中に「ほいほい、にいちゃん」と声をかけるわけにもいかないからやめた。

 だいたい、こういう類いの話は悪役に人気が出てきちゃったんで、

 途中からやけに好いもんになってくるってのがお決まりなんだけど、

 やっぱ、イ・ビョンホン、おまえもか~て感じの展開もまた予想どおりだった。

 さらにいえば、

 高過ぎるギャラのブルース・ウィリスまで投入するほど「1」はあたったのね~、

 と感心したものの、前後篇みたいな作りは、

 この「2」から観る人がいたら、ちょっと戸惑わないかな?

 と心配もした。

 あ、それと、

「この頃、大統領が捕まる映画は多いな~、

 アイアンマン3とかエンド・オブ・ホワイトハウスとかさ~」

 とかもおもったけど、そんなことはどうでもいいか。

 ただ、

 悪役の配役はほぼおんなじなのに、

 肝心の主役たちが妙にいれかわってるのは、

 続編であって続編じゃないじゃんってな印象をもたれないかしら?

 てな心配もしてしまった。

 なんで、こんなにこの映画の味方をしてんだろ、ぼくは。

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ローマでアモーレ

2013年06月28日 00時23分02秒 | 洋画2013年

 ◎ローマでアモーレ(2013年 アメリカ、イタリア、スペイン 101分)

 原題 TO ROME WITH LOVE

 staff 監督・脚本/ウディ・アレン 撮影/ダリウス・コンジ 美術/アン・セイベル

     衣裳デザイン/ソニア・グランデ 主題歌/ヴォラーレ『Nel Blu Dipinto di blu』

 cast ウディ・アレン ペネロペ・クルス アレック・ボールドウィン ロベルト・ベニーニ

 

 ◎やっぱり、愛を語るならローマ

 とはいえ、ローマだからって観光名所が出てくるわけでもない。

 たしかに4つある物語のひとつで、

 出会いの場となるのはスペイン階段だし、そのままトレビの泉で会話は深まる。

 それとラストの結婚式をおもわせる大フィナーレの音楽隊もスペイン階段に並ぶ。

 フォロ・ロマーノや嘆きの壁は遠景として捉えられているし、

 コロッセオとおもわれる遺跡に、雷雨の夜半、忍び込んでキスもするけど、

 それだけのことで、この映画がローマでないと語れないのかといえば、

 その必然性はあんまりない。

 でも、おもしろかった。

 さすが、ウディ・アレン。

 カットバックして語られてゆく4つの物語は、別に関連してるわけでもないし、

 実をいえば、時間の推移もまるで関係ない。

 同一時間でさまざまなカップルを描いてるのかとおもったら、全然ちがってた。

 つまり、

 アレンは自分の作った物語を期待を絶妙なタイミングでカットして、

 ローマで起こっている不条理な出会いと別れを描いてるんだと。

 だったら、

「4つの短編を4本立てにしてくれればよかったんじゃない?」

 といえなくもないんだけど、やっぱり、この方がいいんだろね。

 古代と現代がごちゃまぜになってる町なんだから、

 いろんな恋の物語もごちゃまぜになってる方がいいのかもしれない。

 秀逸だったのは、やっぱりアレンみずから出演している、

 浴室でシャワーを浴びると美声になる葬儀屋の話で、

 オペラの舞台にまで

 浴室を引っぱり出して歌うまでエスカレートしていくんだから、たいしたもんだ。 

 ただ、目をひくのはどうしたところで娼婦を演じたペネロペ・クルスで、

 ローマに新居を持とうとする新婚カップルの話に出てくるんだけど、

 豊満で魅惑的な肢体とすれっからした態度と高慢そうな眼光が、

 なんとも役にぴったりはまってる。

 ふと、ソフィア・ローレンをおもいだした。

 顔つきはまるで違うんだけど、醸し出してるものが似てるんだろうか?

 他の出演者とちょっとだけ違う雰囲気なのは、アレック・ボールドウィンだ。

 建築家をめざしている学生の浮気話に出てくる。

 なんだかずんぐりしちゃったけど、ま、それはいいとして、

 以前のアレン作品だと、心の相談相手を必要とするのはアレンだったはずで、

 今回はアレンのかわりにジェシー・アイゼンバーグが登場し、

 エレン・ペイジとの浮気をするとき、

 ボールドウィンがいきなり出てきてあれこれと囁く。

 アレンの物語ではときおり使われる手法だけど、ほとんど違和感はない。

 有名と無名について茶化した物語に登場するロベルト・ベニーニも、

 これまたひと昔前からアレンが自身で演じてたかもしれない。

 ある朝起きたら有名人になっていたっていうシュールな物語は、

 有名人という人種に対する風刺になってて、

「結局、どれだけ有名になったところで流行が終われば誰も知らなくなるんだ」

 っていう、ちょっぴり残酷で哀愁のこもった内容は、

 ウディ・アレンというオシャレな天才の自戒が籠められてるんだろね、たぶん。

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エンド・オブ・ホワイトハウス

2013年06月22日 18時01分05秒 | 洋画2013年

 ◎エンド・オブ・ホワイトハウス(2013年 アメリカ 120分)

 原題 Olympus Has Fallen

 staff 監督・脚本/アントワン・フークア

     製作/ジェラルド・バトラー マーク・ギル アラン・シーゲル

     撮影/コンラッド・W・ホール 美術/デレク・R・ヒル

     衣裳デザイン/ダグ・ホール 音楽/トレヴァー・モリス

 cast ジェラルド・バトラー アシュレイ・ジャッド モーガン・フリーマン アーロン・エッカート

 

 ◎オリンパス、陥落

 ホワイトハウスのコード名がオリンパスっていう話は初耳だったので、

 ほんとうかどうかはわからない。

 毎度のことながら、知識と情報が不足してるわ~。

 でも、

 ギリシャ神話に出てくる「神々の住まう山」だってことくらいは、

 どれだけ物を知らないぼくでも知ってる。

 いや~、いかにもアメリカ合衆国のつけそうな隠語だよね。

 矜持のかたまりっていうか、もう、なんもいえない。

 ただ、北朝鮮そのものの派遣した武装集団ではないにせよ、

 工作員がAC-130を乗っ取ってワシントンまで侵攻できたり、

 日本海から第七艦隊を撤退させるのが最初の条件だったり、

 合衆国中の核弾頭ミサイルを自爆させようとするなんてことは、

 アメリカに敵対している国が陰にいないかぎり、無理だ。

 設定では、もちろん、北朝鮮との関係は曖昧なままにしてあるから、

 まあ、そういうことで観るしかない

 それにしても、

 AC-130の凄さはどうだ。

 AC-130HスペクターかAC-130Uスプーキーなのか、

 見る人が見れば一発で違いがわかるんだろうけど、ぼくにはわからん。

 けど、どっちだっていい。

 ものすげー強い。

 この空中戦と対地攻撃の場面を観るだけでも興奮したけど、

 気になったのは、女優のふたり。

 大統領夫人を演じた聡明な美しさが魅力のアシュレイ・ジャッドが、

 冒頭で事故死?するのは、ちょっとばかり残念だったけど、

 そのかわりに、国務長官を演じたメリッサ・レオが非常に好かった。

 彼女は『フローズン・リバー』でやけに上手な女優さんだなとおもっていたら、

『オブリビオン』ではモニター画面を通してしか顔が見られず、

 ちょっとだけ物足りなかった観はあったものの、今回は大活躍だった。

 まあ、細面で皺が深い分、なんだか貧相に見え、苦労してきた印象は濃くなるけど、

 そうした人生の味わい深さが、

 合衆国に忠誠を誓う鉄のような女って感じで、よいです。

 ただ、現代の時間設定では、

 ホワイトハウスが陥落するのはタブーかとおもってたんだけど、

 そうでもないのね。

 このあたり、アメリカは寛容っていうのか、

「たとえ、ホワイトハウスが陥落しても、アメリカは闘うのだ」

 っていうプロパガンダと捉えて許容したのかは、わからないけど。

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グランド・マスター

2013年06月19日 14時24分06秒 | 洋画2013年

 ◎グランド・マスター(2013年 香港、中国、フランス 123分)

 原題 一代宗師

 英題 The Grandmaster

 staff 監督/ウォン・カーウァイ

     製作/ウォン・カーウァイ ジャッキー・パン・イーワン

     脚本/ゾウ・ジンジ シュー・ハオフォン ウォン・カーウァイ

     撮影/フィリップ・ル・スール 武術指導/ユエン・ウーピン

     美術・衣装デザイン/ウィリアム・チャン アルフレッド・ヤウ

     音楽/梅林茂 ナタニエル・メカリー

 cast トニー・レオン チャン・ツィイー チャン・チェン マックス・チャン ソン・ヘギョ

 

 ◎香港版を観てみたい

 どうやら、違うらしい。どんな違いがあるのかはわからないんだけど、戦争時代から国共内戦時代の葉問(イップ・マン)の困窮ぶりをはじめ、各地の武術家たちの人生を追ったとき、避けて通れないのが日本軍の存在で、これについて、ぼくたちにあまり見せたくない部分の量の差があるのかもしれない。てなことを勘ぐってしまいがちだから、日本版と香港版という括りで別バージョンは作ってほしくなかった。

 たしかに、日本軍に占領されていた時代から戦後の混沌期にかけて、香港には少なくない武術家たちが集まっていただろうから、戦前、完全な統一はされずに終わってしまった拳法が、香港という地で圧縮されていたという構図はとてもおもしろい。けれど、もしそうであるなら、やっぱり、トニー・レオンとチャン・チェンは闘わなければならなかったろう。

 チャン・ツィイーがチャン・チェンを列車の中で助けたところからして、彼女がふたりを引き合わせるような展開になるのかとおもってたら、そうじゃなかった。ウォン・カーウァイという人はどうしてもこういうところがあって、ときどき、脚本がぬるい。

 今回も、映像は圧倒的なものがあり、冒頭のワンカットめから、

「うわ、ウォン・カーウァイだわ」

 と唸らせるところがあるのに、物語の展開がいまひとつ雨もりしてる。

 なんでかは知らない。大筋だけ決めて撮るからだとかもいわれるけど、ほんとのところは知らない。ただまあ、満洲国についても触れざるを得ないから描かれてたけど、ちょっと驚いたのは、満洲国の国旗や街路がカラーで登場したことだ。

「え!?」

 と、おもった。色、つけたんだね。

 それだけの話なんだけど、冒頭の豪雨の中の街路のkung fuと、雪の中の満洲の駅のkung fuは好かった。ぼくは功夫をよく知らないからダメなんだけど、詠春拳、八卦掌、八極拳の違いが一目瞭然なほど、徹底した指導と撮影が行われたらしい。ただ、この映画は決して功夫の決戦を撮ろうとした映画ではないし、葉問のいちばん輝いていた人生といちばん辛かった人生に恋と戦いをからめて、中国とくに満洲と香港の戦前から戦後にかけての情景を描こうとしたんだろうから、拳法家同士の戦いを観に行くと、とんだ肩透かしを食らう羽目になる。

 だから、そういう観客に対しての返答の意味も込めて、もしかしたら、ウォン・カーウァイは、トニー・レオンとチャン・チェンの戦いをカットしてしまったのかもしれないね。映画としては尻切れトンボな印象ができちゃうとしても、あえて。

 ただまあそれはともかく、梅林茂の音楽はええね。どこまでが彼の作曲なのか詳しくエンドロールをチェックしてないけど、いつもながら雰囲気は抜群だ。いつもながらといえば、ウォン・カーウァイの特質は、キスをしそうでしないっていう微妙な距離なんだよね。このもどかしさで悶え狂いそうになるのがいいのかもしれないね。

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オブリビオン

2013年06月16日 23時50分04秒 | 洋画2013年

 ☆オブリビオン(2013年 アメリカ、ロシア 124分)

 原題 Oblivion

 staff 原作/ジョセフ・コシンスキー アーヴィッド・ネルソン『Oblivion』

     監督/ジョセフ・コシンスキー

     脚本/ジョセフ・コシンスキー ウィリアム・モナハン

         カール・ガイジュセク マイケル・アーン

     製作/ジョセフ・コシンスキー ピーター・チャーニン

         ディラン・クラーク ダンカン・ヘンダーソン

     撮影/クラウディオ・ミランダ 美術/ダーレン・ギルフォード

     音楽/M83 衣装デザイン/マーリーン・スチュワート

 cast トム・クルーズ オルガ・キュリレンコ モーガン・フリーマン アンドレア・ライズブロー

 

 ☆ジャック・ハーパーは49号

 なにより良かったとおもったことは、

 予告編を観たのが、本編を観た後だったことだ。

 どういうわけか、ぼくは『オブリビオン』の予告編を覚えていなかった。

 劇場には毎週のように通っているからどこかで観てるはずなんだけど、

 なんでか知らないけど、その記憶が失われてた。

 けど、そのおかげで、

 モーガン・フリーマンの登場前後と、

 アンドレア・ライズブローについての展開がきわめて興奮できた。

 この予告編は、それを観れば物語のすべてが瞬間的に予想できちゃう。

 これは、いかんよ。

 さて、記憶が失われるという話だけど

 原題のOblivionの意味は、忘却。

 あるいは、忘れること、忘れられること、忘れられていること。

 なるほど、予告編と一緒で、タイトルもまた的確に物語を象徴してる。

 記憶が失われていることに疑問を持っても、

 任務に支障が及ぶかもしれないから、任務終了まで消されているという、

 いかにももっともらしい回答が用意されているため、それ以上深くは考えない。

 トム・クルーズも、ぼくら観客の多くもだ。

 でもまあ、そんなことはどうでもいい。

 ともかく、文句なく、おもしろかった。

 おおむね、トム・クルーズの視線のみで進行してゆくため、より物語に入り込める。

 謎が謎として提示され、謎の解明もトム・クルーズの思考と共にだ。

 トムと観客の思考とが僅かなずれもないように脚本を組んでいるのは、いや、見事だ。

 話としては、簡単にいってしまえば、

 記憶を失くしている男の存在証明、つまり、アイデンティティーの肯定で、

 自分探しの旅の舞台となっているのが、異星人に滅ぼされた地球ってわけだ。

 物語もそうだけど、美術がまたいい。

 トムの住居スカイタワー、丸っこい戦闘型監視球ドローン、監視用飛行機バブルシップ。

 どれも見事なものだし、アンドレア・ライズブローの衣装がさらにいい。

 素朴ながら、身体の線をしっかりと伝え、そこはかとないエロスを湛えているあたり、

 ふたりの司令官とされるサリーの思惑がほどよく感じられる。

 それにしても、アンドレア・ライズブローの美しさといったら、ない。

 まじに、好きだわ。

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イノセント・ガーデン

2013年06月06日 13時35分35秒 | 洋画2013年

 △イノセント・ガーデン(2013年 アメリカ、イギリス 99分)

 原題 Stoker

 staff 監督/パク・チャヌク 脚本/ウェントワース・ミラー

     製作/リドリー・スコット トニー・スコット マイケル・コスティガン

     撮影/チョン・ジョンフン 美術/テレーズ・デプレス 音楽/クリント・マンセル

 cast ミア・ワシコウスカ ニコール・キッドマン マシュー・グード ダーモット・マローニー

 

 △鍵で開かれるもの

 ヒッチコックに『疑惑の影』っていう映画がある。

 実業家の叔父に憧れているヒロインがいるんだけど、

 あるとき、この叔父が殺人を犯して追われているようで、

 ヒロインの屋敷に突然やってくるや、叔父を追って刑事まで登場し、

 ヒロインの叔父に対する憧れと恐れが巨大な疑惑になっていくって話だ。

 それが元になった物語かな~とかおもって観に行ったら、ちがってた。

 ただし、

 姪と叔父のおりなすサスペンスっていう構図はおんなじだ。

 行方不明だった叔父が帰ってくる前後から父親の惨殺と行方不明が前後し、

 その疑惑が叔父に向けられるんだけど、叔父は母親を誑し込み、

 叔母を殺害し、姪に対しては異常といえるような興味を持っているのか、

 ハイヒールをプレゼントし、姪を犯そうとした不良を殺す。

 で、どうなるんだって話だけど、

 これは、父親の葬儀のあった誕生日に、祖母から贈られた鍵が、物語の鍵になってる。

 鍵というのは、もちろん扉や棚や抽斗を開けるためのものだ。

 でも、心の開かせる、秘密を解かせる、っていう意味もある。

 で、鍵のかかった抽斗の中から、叔父から姪にあてた夥しい手紙が見つかる。

 問題は世界中から出しているように書かれているのに、

 封筒に印字されているのは、とある精神病院だ。

 つまり、叔父はそこに収容されているんだけど、

「なんで、何十年も入れられっぱなしだったたの?」

 っていう疑問が湧き、佳境へ突っ走る。

 でも、鍵の意味しているのは、少女から大人へ脱皮する鍵でもあるんだね。

 祖母は、孫に赤ん坊のときから同じ靴を送り続けた。

 それは、

「いつまでも可愛い孫でいてちょうだい、たとえ叔父の秘密を知った後でも」

 っていう祖母の願いが込められてる。

 一方、叔父は、実家へ帰ってきて初めて、姪にハイヒールをプレゼントした。

 それは、

「もう大人になるときがやってきたんだよ。おまえに伝えられた遺伝子の目覚めるときが」

 っていう叔父の期待が込められてる。

 叔父は、母親との情交を姪に見せつける。

 自分の母親が「女」になっているところを見るのは、なによりおぞましい。

 姪はどうしようもなく胸が弾み、体が疼き、不良を相手にセックスを誘う。

 なんで不良にしたかといえば、同級生が、こんなふうにいったとき助けてくれたからだ。

「おまえのかーちゃん、おじさんとセックスしてんだぜ。おまえは毎日オナニーしてんのか」

 その言葉が体内をめぐり、生まれて初めて発情したとき、

 初体験の相手にしたいとおもったのが自分を好きでいるらしい不良だったわけだ。

 けれど、そんなチンピラに犯されそうになる程度じゃ、彼女の目覚めは来ない。

 異常な遺伝子が蠢き出さない。

 叔父が巧みな指さばきでピアノを弾く横で、自分も指を乗せ、連弾をすることで、

 かすかに姪の異常遺伝子は蠢き、官能にめざめ、股を擦りつけて絶頂を知る。

 だけど、まだ足りない。

 叔父は手助けをしなくちゃいけない、そう、姪の上に乗っかっている不良を殺して。

 姪は、眼の前で人間が殺されるという異常事を目撃することで、初めて目覚める。

 そしてようやく、シャワーを浴びながら、自慰をして絶頂感を知り、遺伝子が動いた。

 姪は、おとなになった。

 ただし、異常なおとなにだ。

 過去に幼い弟を生き埋めにした叔父の目的は、異常な遺伝子をめざめさせ、

 Stoker家の正統な血を伝えてゆくというところにあるんだけど、

 ところが、

「めざめた姪は叔父以上の怪物になっていくんじゃないのか?」

 てな、展開が待ってる。

 冒頭、逆光気味に立っている姪のスカートは翻り、男物のベルトをつけ、

 白い花になぜか赤い斑点が飛び散り、それをほくそ笑みながら彼女は見つめてる。

(なんでこんなカットがあるんだろう?)

 っていう最初の疑問が、佳境になってようやく明かされていくわけだ。

 いや、なんとも凄まじい、不思議の国のミア・ワシコウスカ。

 ただ、

 こんな淫靡で陰湿で異常な話をよく作ったもんだとおもいながらスタッフを見れば、

 いやまあ、びっくらこいた。

 製作が、リドリー・スコットとトニー・スコットじゃんか。

 だから、

 ブロンドの髪の毛が緑の草原になっていったりするカットが絶妙なのか~。

 あ。

 てことは、トニーの遺作?

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L.A. ギャング ストーリー

2013年06月03日 00時11分06秒 | 洋画2013年

 ◇L.A. ギャング ストーリー(2013年 アメリカ 113分)

 原題 Gangster Squad

 staff 原作/ポール・リーバーマン『Gangster Squad』

     監督/ルーベン・フライシャー 脚本/ウィル・ビール

     撮影/ディオン・ビーブ 美術/メイハー・アーマッド

     音楽/スティーヴ・ジャブロンスキー 衣装デザイン/メアリー・ゾフレス

 cast ジョシュ・ブローリン ショーン・ペン エマ・ストーン ライアン・ゴズリング

 

 ◇1950年、ミッキー・コーエン逮捕

 L.A.とついたら、すぐにおもいだされるのは『L.A.コンフィデンシャル』だ。

 この『L.A. ギャング ストーリー』は、その前日譚になってる。

『L.A.コンフィデンシャル』は、当時、マフィアの大立者だったミッキー・コーエンの逮捕から始まるけど、その逮捕劇が、この映画のおもな筋立てってわけだ。だから、雰囲気は、どうしても『L.A.コンフィデンシャル』に似てくるし、ちょっと前の時代のシカゴが舞台になってる『アンタッチャブル』ともよく似てる。

 ただ、どういうわけか、暴力は過剰なんだけど、ケレン味が利いてるようで利いてないって感じは否めない。

 山椒のような男ショーン・ペンはさすがにうまいけれども、もうすこしでかくて堂々としていた方が、コーエンらしい。小粒でぴりりと辛い老練な刑事の役はなかったんだろうか?ともおもうけど『アンタッチャブル』でのショーン・コネリー的な立場の刑事は、円熟味の出てきたロバート・パトリックが上手に演じてたしね。

「次の一瞬を狙って撃つんだ」

 空き缶を撃ってるときにいう台詞も、最後にほどよく利いてたし。

 難しいところだ。

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アイアンマン3

2013年05月24日 22時18分29秒 | 洋画2013年

 ◎アイアンマン3(2013年 アメリカ 133分)

 原題 IRON MAN 3

 staff 監督/シェーン・ブラック 脚本/ドリュー・ピアース シェーン・ブラック

     撮影/ジョン・トール 美術/ビル・ブルゼスキー 音楽/ブライアン・タイラー

     衣裳デザイン/ルイーズ・フログリー 視覚効果監修/クリストファー・タウンゼント

 cast ロバート・ダウニー・Jr. グウィネス・パルトロウ ドン・チードル ベン・キングズレー

 

 ◎なんとすでに、マーク42

 世の中には、縁のある映画とない映画とがある。

 実をいうと、この『アイアンマン3』を観るために予習しなくちゃとおもい、

『アベンジャーズ』に挑戦した。

 けれど、体長が悪かったんだろう、3度挑戦して3度とも爆睡し、

 結局、アイアンマンが登場するまで意識が持たなかった。

 だから、たぶん『アベンジャーズ』には縁がなかったんだろう。

 そんなこんなで、

 予習もできないまま、本作に挑まなくちゃいけなくなった。

 聞くところによると、この映画は『アイアンマン』の1と2の続きではなく、

 どうやら『アベンジャーズ』の続きになっているらしい。

 ということは、起承転結の図式を想い浮かべるまでもなく、

 発端、発展、転換、結末となっているにちがいないわけで、

 途中をすっとばしてラストを観てしまっていいものかどうか、

 ちょっとだけ、心配した。

 けど、そんなものは無用だった。

 さすがにMARVELはよくわかっていて、

 たとえ『アイアンマン』や『アイアンマン2』を観てなくたって、

 充分に愉しめるように作られてる。

 ま、登場人物について多少の想像はいるけど、おしなべて問題ない。

 とはいえ、

 アイアンマンスーツを装着する速度が、1からすると断然に速く、

 もう途中からは、あっという間に空中で最新型スーツ「マーク42」が装着される。

 でも、

「変身するのとおんなじじゃん」

 とかいってはいけない。

 それは単に寄る年波で、動体視力が衰え、

 画面についていけなくなっているだけの話なんだから。

 でまあ、なんとか観た。

 ロバート・ダウニー・Jr.はホームズになろうがスタークになろうが、

 本質はまったく変わらず、

 時代を超えたコスプレをしているだけのように見えるけど、

 そんなことはまったく構わない。

 だって、ぼくらは、どこまでもカッコつけたビッグマウスの、

 決して死なない筋金入りの女たらしのロバート・ダウニー・Jr.が、

 CGを使わないと絶対無理みたいなアクションを見せてくれることを期待して、

 劇場に足を運んでいるわけだから。

 で、

 のっけからでかい口を叩いたおかげで、

 自宅が襲撃される羽目になり、ぼろくそにされる。

 けど、ヒーローはこうでなくちゃいけない。

 自分の存在に悩み、普通の人間として恋人と愛し合うために、

 ヒーローであることを捨てようとしつつも、

 でも、オタク心がそれを許さず、

 結局、恋人を守るためにふたたびヒーローとして復活するという構図は、

 定番といえば定番なんだけど、この定番は崩しちゃいけない。

 アイアンマンだって例外じゃない。

 それはともかく、

 よくまあ、こんなお祭り映画にアカデミー賞がらみの役者が揃ったもので、

 まさか、ベン・キングズレーまで出てくるとはおもわなかった。

 ウルトラシリーズに三船敏郎が登場するようなもんだ。

 けど、さすがにベン・キングズレーは大した役者で、

 中東あたりに本拠地を構えるイスラム過激派の親玉みたいに登場したかとおもえば、

 なんのことはない、

 米国内にいる真犯人の薬品開発研究者に雇われた、女好きの端た役者って設定だ。

 ただ、このギャップの面白さの裏には、

 アメリカの抱えているイスラム教圏への潜在的な恐怖感があるわけで、

 かといって、絵空事の物語まで、

 イスラム教圏に悪の秘密結社が存在してアメリカをぶっ潰そうとしているみたいな、

 妙に生々しいことはできない。

 ハリウッドも悩ましいところだけれど、そんなことは、

 大統領までもが宙づりにされた造船所に、

 雲をついて集結する遠隔操作されたアイアンマンの集団と、

 超人ハルクみたいになっちゃった悪党どもの活劇の前には消え失せる。

 あ、そうそう。

 宙づりといえば、グウィネス・パルトロウも、

 磔にされたかとおもえば、超人化される注射を打たれるとか、

 なかなか過激に痛めつけられるんだけど、

 さかさまになったときの腹筋には、ちょっと驚いた。

「ハリウッドの女優さんは、ちゃんと鍛えてるんだね」

 ていうか、燃え狂う炎の中へ突き落されたとき、

「これ、どうやって助かったことにするんだろう?」

 っていう心配が先に立ったけれども、

 まさか、そんなIncredibleなオチになるなんて。

 でもまあ、話の筋を追えば、あたりまえか。

 冷静に映画が見られなくなるくらい、

 スピーディな展開でした。

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レッド・ライト

2013年03月28日 03時11分49秒 | 洋画2013年

 ◇レッド・ライト(2013年 アメリカ 113分)

 原題 RED LIGHTS

 staff 監督・脚本・編集・製作/ロドリゴ・コルテス

     撮影/シャヴィ・ヒメネス 美術/エドワード・ボヌット 音楽/ヴィクター・レイス

 cast キリアン・マーフィ シガニー・ウィーバー ロバート・デ・ニーロ エリザベス・オルセン

 

 ◇1974年、ユリ・ゲラー、日本登場

 それは、めちゃくちゃ衝撃的な登場だった。

 当時、ぼくらが興味を持っていたものといえば、

『エクソシスト』に始まるホラー映画のせいで、人智を超えたなにものか、だった。

 ともかく、通常ではありえないようなことに好奇心のアンテナが向いていて、

 超常現象だの、UFOだの、幽霊だの、超古代史だのといったムー的世界は、

 ぼくの中でかなり大きな部分を占めていた、ような気がする。

 そんな中、ユリ・ゲラーがやってきた。

 そりゃあ、びっくりもするだろう、だってスプーンが曲がっちゃうんだよ。

 それも、ちからを入れないでも、ぐにゃぐにゃに曲がるんだぜ。

 たまんないよ、まったく。

 しかも、ユリ・ゲラーの凄いところは、テレビに生放送で出演し、

「日本中に念波を送るから、テレビの前の良い子諸君は、

 すぐに家の中にある壊れた時計や古くて使ってない時計を持ってきなさい、

 送られた念波によって時計の針が動くようになるから」

 とかいうんだ。

 送ってくるのは、スプーンを曲げるための念波だけじゃなかった。

 興奮した。

 少なくとも、モハメド・アリ対アントニオ猪木くらいの昂揚はあった。

 ぼくは家の中の古い箪笥から、いくつかの腕時計を探し出し、テレビの前に置いた。

 もちろん、手にはカレーライスに使ってる大きめのスプーンを握りしめていた。

 放送が始まり、ぼくは意識を集中し、一所懸命にスプーンをこすった。

 が、曲がらない。

 時計の針も動かない。

 がっくりした。

 けど、こんなはずはないともおもってた。

 だって、ユリ・ゲラーは実際に曲げてるんだもん。

 びっくりこいたのは、そのすぐ後だ。

 クラスの女の子から電話が掛かってきて「曲がった!」と叫んだ。

 それだけでなく「時計の針もぜんぶ動いてる!」と電話の向こうで悲鳴を上げてた。

 ぼくはスプーンを曲げられなかったことがなんとなく恥ずかしかったけど、

 でも、ほんとに念波が届いたんだと驚き、やっぱり嘘じゃなかったんだと確信した。

 さらにびっくりこいたのは、翌日のこと。

 給食の時間、その子はクラス中のスプーンを次々に曲げ始めたんだ。

 教室の中はパニックになり、教師がすっ飛んできて、彼女を職員室に連行した。

「そりゃそうだろう、給食センターになんていって言い訳するんだよ」

 という話ではなく、

 教師たちは彼女に対し、こういった。

「スプーンがほんとうに曲げられるんなら、先生たちのスプーンも曲げてみろ」

 曲げちゃった。

 職員室の給食用スプーンは次から次へと曲がり、彼女は疲れ果てた。

 学校中が、どえらい騒ぎになった。

 同級生の数は320人、中学校の全生徒は1000人にちかい。

 えらいこっちゃ、だ。

 その日を皮切りに、ぼくらの日々はスプーンと共にあった。

 彼女はいとも簡単にスプーンを曲げるが、ぼくも友達もまるで曲がらない。

 なにが違うのかはわからないが、どうも超能力というはあるらしいと感じた。

 彼女の元へは次々に生徒が集まり、わが中学のユリ・ゲラー現象は頂点に達した。

 そんな日々が何日か続いたある日のこと。

 あいかわらず彼女の周りには生徒がたかっていたんだけど、

「ね」

 と、ひとりの別な女の子が、ぼくに声をかけ、廊下に呼び出した。

 いわれるままに廊下に出ると、

 いきなり、目の前に給食のスプーンが差し出され、

 その子はいとも簡単に、くにゃりと曲げてみせた。

 げっとおもった。

 眼が点になった。

「内緒だよ」

 その子は、にっこりと微笑んで、教室に戻っていった。

 今でも、その子の微笑んだ顔は、頭の中にこびりついてる。

 で、10年後。

 ぼくは、勤め先の会社に、ひとりの青年を招き、とある実験をしていた。

 青年は巷ではよく知られた子で、名前はあえていわないけれど、スプーン曲げが出来た。

 彼は、会社の会議室で袖をまくり、ぼくが銀座の松屋で買ってきたスプーンを曲げてみせた。

 何本も曲げ、何本も捻じり、それどころか折り、いや、弾き飛ばし、

 実験に立ち会った女子社員の手に「気」を送り、

 自分はまったく触らずに、彼女の持っていたスプーンを飴のように曲げてみせた。

 いや、まあ、これもびっくりしたのなんの。

 いまでも、立ち会った宣伝部のカメラマンの撮った分解写真が、ぼくの手元にある。

 同級生のふたりの女の子にしても、青年にしても、トリックがあったとは到底おもえない。

 もちろん、世の中には、トリックでスプーン曲げをしてみせる人間はごまんといる。

 けれど、

 そのスプーンは、彼が会社へやってくる寸前に、ぼくがまちがいなく買ってきたものだ。

 スプーン曲げが超能力かどうかは別にして、信じるよりほかにないだろう…。

 まあ、そんなこんなで。

 日本に初登場してから30年後、ユリ・ゲラーはまたやってきた。

 そう、まるで、この映画のロバート・デ・ニーロ演じるサイモン・シルバーのように。

 映画については、すこしだけ、いいたいことはある。

 インチキ超能力を暴き続けるシガニー・ウィーバーがどうして前半で死んじゃうのか、

 シガニーは「彼は危険すぎるの」と震えるデ・ニーロをまじの超能力者だとおもってたのか、

 ふたりの過去にどんな因縁があったのか、

 とかいったことで、ほかにもいくつかあるけど、疑問のほとんどは明かされない。

 たったひとつだけ、映画の中の真実は、

 シガニーの手にしていたカップの中のスプーンが、いつのまにか曲がっていることだ。

 映画のスリルは、そこから始まる。

 あとは、キリアン・マーフィとデ・ニーロの怒涛の対決に突入していくんだけど、

 まあ、それについては予定調和な結末なので、あえて触れる必要もない。

 つまりは、たかがスプーン、されどスプーンってことだ。

 ちなみに、ぼくは、いまだにスプーンが曲げられない。

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オズ はじまりの戦い

2013年03月22日 20時57分16秒 | 洋画2013年

 ◇オズ はじまりの戦い(2013年 アメリカ 130分)

 原題 Oz: The Great and Powerful

 staff 原作/ライマン・フランク・ボーム『オズの魔法使い』

     監督/サム・ライミ 脚本/ミッチェル・カプナー デヴィッド・リンゼイ=アベアー

     撮影/ピーター・デミング 美術/ロバート・ストロンバーグ 音楽/ダニー・エルフマン

     視覚効果監修/スコット・ストクダイク

 cast ジェームズ・フランコ ミシェル・ウィリアムズ レイチェル・ワイズ ミラ・キュニス

 

 ◇ハリウッドは童話ブーム?

 ぼくはどうにも活字が苦手で、幼児期から少年期にかけて絵本すら読んだことがない。

 だから、アンデルセンも知らなければ、グリムも知らないし、宮沢賢治も知らなかった。

 当然『不思議の国のアリス』も『オズの魔法使い』も読んだことはなかった。

 かろうじて、受験時代に英語の副読本で『アリス』の一部をテキストにしていたくらいだ。

 だから、おとなになっても、ふたつの話の区別がつかなかったし、ごっちゃになってた。

 もっといえば、なんとも恥ずかしい話ながら、いまもって読んだことがないため、

 何度か映画化された作品で、おおまかな話の流れはなんとなくわかってるんだけど、

 原作でどのような物語がどのように展開しているのか、まるで知らない。

 つまり、この映画のように、オズの前日譚とかいわれても、

 恥ずかしながら「ああ、そうなのか~」としか、いえない。

 ただ、そんな人間でも、充分、あらすじはわかった。

 続編も作られるらしいから、それで本来の『オズの魔法使い』の理解度も深まるかも。

 にしても、この映画、200億円くらい製作費をかけたのだろうか、

 どのシーンのどのカットを観ても、CGのオンパレードだ。

 その一方で、たぶん、オープンセットの他に大ステージに巨大セットも組んだのかな?

 なんだか、往年のミュージカル大作を観ているような気分になった。

 セットがばればれなのは、CGとの並立を考慮したためで、

 リアルな絵作りはかえって作品世界の邪魔になるとおもったんだろね。

 ただ、ハリウッドのこの手の話は、

 どうしてサーカスや見世物小屋や夜の遊園地とかが出だしになるんだろう?

『Dr.パルナサスの鏡』とかおもいだしちゃうのは、ぼくだけかな?

 ま、そんなことはいいんだけど、最初のモノクロームの現実世界で、

 いかに、このオズっていうにやけた若造が如何につまんない男なのかが語られるんだけど、

「現実世界でも運命の女性はパラレルワールドでも運命の糸で繋がってるんだよ」

 てな、ロマンチックさがそれとなく入れられてたりして、こういうのは嫌いじゃない。

 ケシの花畑が永遠の眠りを誘うとか、シャボン玉の中に入って空を飛ぶとか、

 そういったメルヘンチックな世界の中でも、

 やっぱり現実世界をひきずってる男が頼りにするのは、トーマス・エジソン。

 動画撮影機キネトグラフを発明した「映画の父」に憧れる若造が、

 オズの創造主のひとりになっていくなんて、

 なんだかいいよね。

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