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ダンスとか。

エルヴェ・ロブ 『失われた地平線』

2004-07-11 | ダンスとか
水戸芸術館ACM劇場。
カンパニー名はないみたいだが、フランス国立ル・アーヴル振付センターの芸術監督としてダンサーともども来日。ロブの作品は初めて見たが、振付はバレエとモダン・ダンスをベースにしたいわゆるヌーヴェル・ダンスまたはダンス・コンタンポレーヌ。ロブを含む8人のダンサーは上手いけれども、ほとんど関節単位しか使わない振りのヴォキャブラリーが何とも物足りなく感じた。70分ほどの長さで、シーンや音楽など全てが波のように、ある一定の幅の中で滑らかに変化したり元に戻ったりする構成。最初は園芸店のカートと植木鉢、イスなど演劇的なモティーフも出てくるが、それは単なるとっかかりでしかなく、終始具体的な意味のようなものは見当たらなかった。鳥の声や、街の音、微かな音楽(プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ1番の第1楽章の終わりの方の一部だけ、とか)が織り合わされた環境音楽のようなものに、色鮮やかな照明、そして病院などにあるような折り畳み式の可動スクリーン、そこへヴィデオ映像が映される。シンプルな道具立てで空間を絶え間なく変化させていく手際の良さは堪能できた。特に終盤、何枚ものスクリーンで空間を区切って、ダンサーをあちこちに配置し、何箇所かに置かれたヴィデオカメラでライヴ映像を映し出し、さらに別の映像も重ねて、位置関係やスケール、方向や時間の感覚までがシャッフルされてしまうところなどは面白い。ここを見たとき、タイトルの意味がわかった。原題 Des horizons perdus は人が何かを認識する際の拠り所、規準として誰もがもっている様々な「地平」が失われるという経験のことをいっているのに違いないから、「失われた地平線」という訳はあまり適切ではないだろう。少なくとも「地平“線”」ではない。どうもしっくりくる直訳が思い当たらないが、もっとピンとくるタイトルがついていたらより楽しめたかもしれない。
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