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ダンスとか。

天狼星堂 『八月』

2007-08-11 | ダンスとか
中野・テルプシコール。
闇配師/大森政秀、出演/大倉摩矢子、ワタル、小野由紀子、山下浩人。
三人がパラパラと出てきて、いきなり稽古場っぽくウォーミングアップのようなことを始めて面喰らった(素の表情で稽古着なのに白塗りはしっかりしている)。するとそこへ明らかに異質な感じの、白い服を着て髪を前に垂らした男(山下)が入ってきて、三人はあわてて去り、短いソロ。その後はワタルと小野のデュオやソロ、さらに山下のソロ、という具合に続いて、大倉の出番は最後の方の長いソロのみだった。これといった仕掛けや筋立てもない上、個々の体というよりむしろ技術(テクニック)を見せようとしているなあという印象を受けたのだが、特定の誰かを目当てにしているとかえって他の踊り手をニュートラルに見ようと努力してしまって落ち着かなくなり、翻って、自分はどれだけ大倉の踊りをニュートラルに見られるだろうかというプレッシャーにもなってくる。大倉は客席入口からサッとお客のように入ってきて、素の感じで舞台に進み、妙な具合に腕を持ち上げたりして下手の方を気にしながら上手に移動、壁に寄って止まった。そのまま長い間止まっていて、どんどん素の感じから遠ざかっていく。特に何か踊りのモード(非日常)に入っていくわけでもなくて、柔らかい体のまま「すごい勢いで止まっている」というか、ドアから入ってきた時の足取りの普通っぽさからの落差が広がるために、大倉の周りを時間が加速しながら流れていくように感じられる。その後、奥の壁伝いに、片腕を上に粗く突き上げて、上体を上に引き上げながら、体重を部分的に壁に預けつつヨロヨロと進んでいく。ここの、無調のヴァイオリン(わりと知られている曲)の部分は正直よくわからなかった。型じゃない何か明確なことをやろうとしていながら踊りの核がまとまらない感じがした。その後いきなり下手からさっきの山下が現われ、大倉は再び一気に素に戻って声を出してコミカルに追っ払い、おもむろに舞台中央辺りで腕を浮かした踊りに戻る。嵐の音にノイズが混ざったようなものが流れ始めると、さっきまでと大体同じ動きが芯をもってきた。体を浮かしていっているのか沈めていっているのか、重みの中心が不安定なまま柔らかく激しく縦に揺れる。全く型に落ち込まずに、シンプルなモチーフから強く出力する。ここの動きは、見ていて入り込み過ぎてしまって、あまり記憶が残ってないが、大倉の踊りを見るというのはこういうことなんだと思った。ところで白い衣装を着た山下は、何だか幽霊みたいで、しかも足元がゲートルだか包帯だかで締められているから、時節柄、戦没者の霊なのだろうか。
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