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ダンスとか。

Wallie Wolfgruber & Friends

2006-03-05 | ダンスとか
Wallie Wolfgruber & Friends, Dire Circumstances

NY, The Club at La MaMa ETC.
会場はステージに向かってテーブルとイスが置かれたクラブで、フロア両サイドにギャラリーがある。ウォルフグルーバーはドイツ出身で、ラー・ルボヴィッチ・ダンス・カンパニーの元ダンサー。96年の作品から2006年の作品まで、短いダンスを並べた構成。ピアノは客席後方で Colin Huggins が演奏する。
Hatch
シューベルトのソナタを使ったウォルフグルーバーのソロ。暗闇の中から、腕と足を左右対称に折り曲げた姿が現れ、立ち位置を変えずに痩せた身を上下にくねらせる。舞踏というより表現主義的な踊り。4分半。
▼Chopin: Prelude No.24
ハギンズによる演奏が挿入される。
Cross-Over
舞台下手から上手に向かって真横に、低い姿勢あるいは床についた体勢で移動していくウォルフグルーバーのソロ。痛々しく屈曲しては伸び広がる身体。6分。
Presto ma non troppo
客席最前列から太った黒いスーツ姿の大男(Lawrence Goldhuber)が現れ、舞台上で片足を浮かせてバランスをとったり、モダンダンス風に跳び回ったりする。音楽はリゲティのエチュードだが生演奏ではなく録音。重さもさることながら、たるんでいるのではなくて固く締まった肥満体の、反りも捻れもしない、全く動きに参加しない石のような胴体ばかり見ていた。観客のウケを取って、またもとの席に戻る。6分。
Debutante
ボブのかつらを付けてキャバレー歌手のような格好をしたウォルフグルーバーのソロ。舞台奥に直立して、動きは小さく、少ない。2分半。
A Hands-on Affair
Alvin Booth との共作によるヴィデオ作品。二人の手が、カーラ・ブレイとディーン・マーティンによる『ラ・パロマ』にのって床の上をトコトコと動き回る。ここまで手垢の付いたアイディアをあえて堂々とやってのける態度に迫力を感じて、真剣に見てしまった(8分)。手にメイクをしているのか、画像処理をしているのかわからないが、コントラストの強い褐色の肌が照り輝き、あれこれと自在に変化する動きのパターンやロジックが緻密に振り付けられていて、人間の手が「妙な動きをする手」から徐々に「何か違う生き物」に見えるようになっていった。それそのままでありながら、動くことで、それそのものから逸脱してしまえるのは、人間の身体だけだと思う。人間の身体は、他の何かになることはできないが(例えば他の動物になることはできない)、「人間」という一定のあり方から離れることができる。つまり他の「何か」になることはできないが、「何ものでもない何か」「名指し得ない何か」になることができる。
American Blessings
Janet Forward とのデュオ。音楽はバッハの『ゴールドベルク変奏曲』をハギンズが弾く。これといって特徴のないモダンダンスの振付だが、中盤で唐突に、ウォルフグルーバーが全裸になって顔に黒い布を巻きつけ、床に屈み込んだフォワードの上に立って両腕で自分の体を抱きしめるポーズをする。アブ・グレイブの米軍の事件を再現しているのは明白だが、前後との関係は特に見えず、ほとんど街頭でのゲリラ的なデモ行為に似ていた。16分。
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