dm_on_web/日記(ダ)

ダンスとか。

ベケット・ライブ vol.5 『あしおと』

2004-03-24 | ダンスとか
下北沢・「劇」小劇場、昼・プレヴュー。
ベケットが76年に書き、自ら初演の演出も手がけた戯曲で、女が9歩ずつ歩いては折り返し、歩いては折り返ししながら、闇の中の声(女の母親らしい)と対話ならざる対話のようなことをするというもの。演出・美術/阿部初美、出演/鈴木理江子、井出みな子。舞台には下から蛍光灯で光る4枚のパネルがあって、ここを女(鈴木)が歩く。女はすでに初老で、大きな灰色の布をすっぽり被るような衣装で足元まで隠れている。もちろん「足音」が重要なのだが、スタートと同時に興醒めだったのが鈴木の歩き方だった。やや腰を曲げつつ、爪先は浮かせるのだが踵で床を擦って歩く。衣装といい、明らかに能を匂わせている。「足音」といったら少なくとも摺り足はないだろうと思うのだが、非常に硬質で人工的な音が、几帳面なリズムで発せられる。ああ文学なのだな、苦手だな、というところでまず引いてしまった。そういえばこの劇場(初めて行った)もすごく綺麗だし、なんか「清潔さ」と「余計なものを削ぎ落としたシンプルさ」と「(本質志向的な)観念性」が渾然一体となっている、こういうジャンル。表面がツルツルに磨き上げられているので、こちらから身体的な接触を試みてもことごとくはじかれてしまう。発声や対話も極度にストイックな性質のもので、それと足音との絡みなどというところへ関心はなかなか向かわず、気を張って見ていただけに余計シームレスに睡魔と闘い始めてしまっていた。すぐに立ち直ったと思うが、女とその母親らしき人の声との対話だったセリフを今度は女が一人で喋っていて、人物の境界が曖昧になったりしていた。ダメだ。よくわからなかった。
コメント    この記事についてブログを書く
« 濱谷由美子 CRUSTACEA 構成 ... | トップ | 大駱駝艦 『海印の馬』 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ダンスとか」カテゴリの最新記事