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ダンスとか。

黒沢美香&ダンサーズ 「家内工場」(第五回)(第一日)

2009-04-28 | ダンスとか
綱島・スタジオクロちゃん。
▼黒沢美香 『ソロ(盗聴)ダンス 夜』
赤紫色のブラウスに同じ色のストッキング、頭にはオレンジ色と黄色をしたヘンな枝のようなものが2本刺さっていて、白塗りの顔にもオレンジ色の丸い点々がついているという格好。巨大な電気スタンドとアップライトピアノ。素明りの状態で舞台に現れ、ゆっくり体の揺れを抑えて直立姿勢を安定させていくプロセスから、すでに2本のヘンな触角の揺れがおかしくて仕方ない。というか、この触角たちの揺れが、地味な体の動き(ちょっとした位置や姿勢の変化のようなものの、乾いた断続)をアンプリファイしつつ、比較的単純な揺れのリズムへと束ねて視覚化していたり、あるいは偶数の拍子を刻むことで形なきものに形を与えていたりする。屈み込めば揺れ、寝れば揺れ、そのうち先端がギュッと床に押し付けられて、撓んで硬直したりするのも微笑ましい。そのかわり黒沢の体そのものは後景に退いてあまり見えない。四つん這いになって斜め後ろを向いたところで、丸い尻が目立ち、初めて体が見えたという印象をもった。一度長い全暗になり、スタンドに明かりが灯ると、その周囲を実に不格好な動きで経巡る。ここでやっと、ああこの格好って本気で「虫」だったのか、と気付いた。顔の点々だってよく見ると両目の上と下に規則正しく並んでいて、複眼になっている。どうも(本物の)目の視線の向きがやけに不明瞭だと思っていたのも、マスカラのせいとはいえ、意味のあることだったのかも知れない。照明の関係で触角は目立たなくなり、体が見えてくる。ジャズ・ヴォーカルが一曲流れる。しかし「虫」というイメージが明確になってしまったせいか、動きそのものになかなか惹きつけられない。とにかくこの時、触角が見たくてたまらないと思っていた。また蛍光灯が点くと、黒沢は何やら考えている風で、しかしやはり、虫としては、明るくなるとうろたえて地面にひれ伏すのであったが、ここら辺でいよいよ、虫なんかを演じている!という事態のバカバカしさが圧倒的に優勢となって、黒沢美香的なステップの人間臭いヴァーチュオジティはむしろ異物に感じたし、触角の揺れもそれ自体としては焦点とならなかった。やはり触角、今日はこれに尽きる。
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