くろにゃんこの読書日記

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魂の重さの量り方 レン・フィッシャー

2006年04月04日 | 科学&ノンフィクション
魂の重さは30グラム。
これを重いと見るか、軽いと見るか。
は、どうでもいい。
1901年、アメリカの市営病院の医師マクドゥーガル博士は、
魂が存在するかどうかには確信が持てなかったが、もし、それが存在するならば物質的な物体でなければならない(なんと西洋的な!)という論理のもと、瀕死の病人の体重を測定し、昇天の際の体重の差についての実験を行った。
この実験は、大変有名なものなので、結果を知っている人は多いと思う。
さて、博士は、本当に魂の重さを測定したのだろうか?
どう考えてみても、突飛なこの実験、しかし、実験を行った博士は大変真面目で、自分の実験結果を5年も伏せており、「本当に魂の重さを量ったのだろうか」と自問し、論文を発表しなければならなかった時でも、懐疑的な姿勢を崩していない。
マクドゥーガル博士の後も、同じような不運なネズミの実験が行われ、つりあっていた秤の、昇天するネズミが乗った方の皿が下がったのである。
ここまで読んで、ネズミも信心深い魂を持っていたんだと思った方もおられるはず。
魂という概念に明確性を与える、非常に魅力を感じる実験ではある。
ちょっと待て。
ここで、大事なのは、なぜ秤は動いたか。
体重が減ったから、ということだけではなく、この実験に共通して使われている秤というものに注目すると、その実がわかる。
それを知りたければ、本書を読むこと。

マクドゥーガル博士のように、常識では考えられない実験をしたり、
型破りな論理を展開するのが科学者である。
科学者というのは、自然界の働きを理解しようとする好奇心旺盛な人たちのこと。
科学の世界では、従来堅く信じられてきた学説が、
新しい学説のもと覆されるということがしばしば起こる。
天動説などはその実例である。
また、ある学説と、ある学説が真っ向からぶつかり合い、
学派を2分する激しい戦いに発展することもある。
だが、その論争により、科学は発展するということもある。
本書では、そのような例をいくつか挙げ、科学の歴史と現在の科学が持つ新たな謎を私のようなにわか科学ファンにもわかりやすく提示してくれる。
著者の子供のころの実験など、ユーモアを交え、
生物学、化学、物理学と取り上げる事柄も幅広い。
それもこれも、好奇心旺盛な科学者である著者のなせる業なのだろう。

魂の重さの量り方


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8 コメント

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Unknown (迷跡)
2006-04-04 12:30:00
この実験をテーマにしたアンドレ・モーロワの小説をSFマガジンで読んだはずとネット検索してみたら、ヒットしました。時代を感じさせるラインナップですね。

S-Fマガジン(S-F Magazine)1968/12 No.115

「幽霊第五惑星」 Ghost V ロバート・シェクリイ(Robert Sheckley)

「埃まみれのゼブラ」 Dusty Zebra クリフォード・D・シマック(Clifford D. Simak)

「オムニリンガル」 Omnilingual H・ビーム・パイパー(H. Beam Piper)

「ゲン」 眉村卓(Taku Mayumura)

「魂の重さ Part 1」 Le Peseur Dames アンドレ・モーロワ(Andre Maurois)

「コフィン療法」 The Coffin Cure アラン・E・ナース(Alan E. Nourse)

「継ぐのは誰か? -Part 7 End」 小松左京(Sakyo Komatsu)

リアルタイムで読んでいるはずはなく、古書店でバックナンバーを買ったんでしょうね。

今だと講談社文庫の『読心機』に収められているようですが、絶版でしょうか。
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読んでいるとは流石です (くろにゃんこ)
2006-04-04 14:33:05
本書の巻末のノートには、心理学者で作家のスーザン・ブラックモア博士の名前とフランスの作家ロマン・ガリ「魂の重み(The Gasp)」、アンドレ・モーロワが、紹介されていました。

ロマン・ガリについての知識がなかったので、検索をかけたところ、教育番組の「フランス語会話」でヒット。

日本ではあまり知られていない作家として紹介されています。

http://www.nhk.or.jp/gogaku/french/back/bn51.html

面白そうなんで、読んでみたいですね。



1968年のSFマガジンですか。

うおっ、これはステキなラインナップ。

惹かれるのは「コフィン療法」ですね。

『読心機』は絶版のようです。

楽天フリマでは1200円が最低価格でした。

ところで、1968年とは、私の生まれた年~~~。
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ターミナル・エクスペリメント (Takeman)
2006-04-04 19:12:15
魂の計測といえば、ロバート・J・ソウヤーも「ターミナル・エクスペリメント」で扱っていました。

もっとも途中から話が違う方向へ向かってしまうので、そういう話を求めると期待はずれかも知れませんが、これはこれで面白かった記憶があります。
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ガリ(ギャリ) (kazuou)
2006-04-04 20:54:55
モーロワ『魂の重さ』はけっこう面白かった覚えがありますね。講談社文庫版は二編しか入ってないんですが、その元版のハヤカワSFシリーズ版は四編収録してます。その中の『デブの国とノッポの国』がめちゃ面白いんですよねえ。あんまり関係ないんですが。

ロマン・ガリ『魂の重み』はたぶん未訳ですね。ガリ(ギャリ)の作品はミステリマガジンで以前何編か載ってた覚えがあります。たしか『フランス・ユーモア文学傑作選 笑いの錬金術』(白水Uブックス)にも短編が二編ほど入ってますよ。
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Takemanさま (くろにゃんこ)
2006-04-04 21:24:32
ロバート・J・ソウヤーといえば、「ホミニッド」の人ですね!

私はソウヤーって読んだことがないんですけど、「ホミニッド」は読んでみたいと思っています。

「ターミナル・エクスペリメント」の魂の測定は、脳波測定が出発点なのですね。

その電磁フィールドに人格を形成するものが存在するという仮説なのかな。

では、抜け出た電磁フィールドはいったいどこに行くんでしょうね。

あ、なんか面白そうかも。
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kazuouさま (くろにゃんこ)
2006-04-04 21:35:05
おお、やはりご存知でしたか!

「魂の重み」は、多分未訳だろうと私も思ってましたが、一縷の望みをかけて、図書館で検索してみますと岩波文庫「フランス短篇傑作選」というものをひとつだけ見つけました。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4003258819/contents/ref=cm_toc_more/250-4384631-6296202

この本、とてもよいラインナップなのです。

リラダン、アナトール・フランス、マルセル・プルースト、デュラス、もちろんモーロワも。

これは、絶対読まねば。
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この本もよいですよ (kazuou)
2006-04-04 23:28:17
『フランス短篇傑作選』これすごいいいセレクションですよね。編者の山田稔はアルフォンス・アレーの訳書などもある趣味のいい人で、この短編集も面白い作品が目白押しです。とくにモーロワ『タナトス・パレス・ホテル』とシュオッブ『ある歯科医の話』がすさまじい傑作。あとエルヴェ・バザン『結婚相談所』とトニー・デュヴェール『さまざまな生業』が意外な拾いものです。ちなみにギャリの作品はあんまり大したことないです。
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すさまじい傑作 (くろにゃんこ)
2006-04-04 23:35:49
とは、すごいですね。

私は、フランス文学はそれほど詳しくないのですけれど、このラインナップには興奮しましたよ。

ギャリはたいしたことがないのか。

でも、いいんです。

どんな作品を書く作家なのか知ることができるだけでも。

今度、図書館に行ったら、絶対借りてきます!
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