くろにゃんこの読書日記

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ノラネコロジー

2009年01月04日 | 科学&ノンフィクション
ノラネコの社会や生態を研究する分野をノラネコロジー、その研究者をノラネコロジストという造語で呼んでいるのはこの本の著者ですが、なんだかとっても語呂がよくありませんか?
著者は正真正銘の研究者で、この本の趣旨は小中学生を対象としたノラネコ研究のフィールドワークの実践的な手ほどきと、著者のノラネコ研究を簡単にまとめたものです。
実際問題、私の生活圏(自宅中心に徒歩30分圏内)を探索してみても、ノラネコを見つけることは困難を極めます。
おっ、ネコ発見!とワクワクして後をつけても、案外イエネコ(飼い猫)である場合が多いです。
我家のネコもそうですが、病気やケガ、ご近所トラブルの予防策から、イエネコは家から出ることをあまり推奨されてはいません。
でも、たまに戸外でのんびり日向ぼっこをする猫をみつけるとホノボノとした気分になるものです。
私の住む地区ではあまりノラネコは見かけることはありませんが、漁港付近ではノラネコを多く発見することができます。
そのノラネコたちは、釣り人の残していくエサ(ゴミ)や漁港から出るエサ(ゴミ)をたよりに生活し、子を産み、生きているのです。
そういったノラネコの生活のありかた、ネコの数やエサ場の数、グループがあるのか、一匹一匹の行動範囲はどれだけ広いのか、そもそも一日何をして過ごしているのか、などを夏休みの自由研究にするのも面白いのではないかと思います。
まあ、ネコが好きであればですが。

著者が研究対象に選んだのは、福岡県の相島(あいのしま)にいるおよそ200匹のノラネコで研究機関は7年間に及びます。
身体の大きなオスネコが本当に繁殖に有利なのかという疑問を繁殖回数と遺伝子解析による親子鑑定から解き明かします。
結論から言ってしまえば、身体が大きなオスネコほどグループ内のメスネコとの交尾成功率は高く、身体が大きければ有利であることがわかります。
推測としては、体重の大きなオスネコの子ネコが多く生まれるに違いないわけですが、実際親子鑑定をしてみると予測に反した結果が出てしまったのです。
重量クラスと中量クラスのオスネコの子供の数には差がなく、さらにグループ内のオスネコよりも他のグループから遠征してきたオスネコの子供の数が多いという事実です。
発情期間中のメスの周りにはグループ内のオスネコによる取り巻きができます。
有利な場所を占めるのはグループ内の重量クラスのオスネコで、他のグループから遠征してきたオスネコはなかなか近づくことが出来ませんが、すきあらばメスはその取り巻きを振り切って遠征してきたオスネコと交尾をすることを著者は確認しています。
そのことから、メスネコは遠征してきたオスネコのほうをよりよい相手として選ぶという戦略があることがわかります。
オスネコとしては、より自分の子孫を残すには、危険を冒しても他のグループに遠征に出かけなければならないというわけですね。

最後に参考資料としてポリメラーゼ連鎖反応法については「ネコと遺伝学 (新コロナシリーズ)」に、電気泳動については「ネコの毛並み」に多少載っています。

わたしのノラネコ研究


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2 コメント

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図書館で見つけました (タマ)
2009-02-14 04:07:25
くろにゃんこさんの紹介を読んで面白そうなので図書館で探して読みました。ノラ猫はみぢかな野生の動物だったのですね。ノラ猫の生活や生き方がこんなに面白いなんて目からウロコでした。じつは私も昔テレビ番組を見て動物の研究をする職に憧れておりました。そんな私は今では普通の主婦ですが、この本のノラ猫の研究なら私でも子供と一緒にできそうです。おかげさまで、ほんとうによい本に出会えました。どうもありがとうございました。
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野生の王国 (くろにゃんこ)
2009-02-14 09:34:29
あの番組は、私も昔よく観ていました。
ジープに乗ってサバンナを駆け巡る学者さんとか、動物保護官とか無性にかっこよく感じたものです。

最近、野良猫はあまり見かけないとここには書きましたが、この記事を書いたあと、見かけない数匹の猫を近所で発見しました。
時期的に、ちょっと遠くまで遠征してきた猫だろうかと考えて、ひとり納得していました。

とにかく、喜んでいただけてよかったです。
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