くろにゃんこの読書日記

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わが愛しき娘たちよ コニー・ウィリス

2009年09月15日 | SF 海外
コニー・ウィリスの長編は、「航路」と「ドゥームズディ・ブック」「犬は勘定に入りません」と読んでいるけど、短編集は初めて。
この短編集は作品の前にちょっとした著者の覚え書が入っていて、それを読んでから本編を読み、さらに覚え書を読み返すことで、著者に近づいたような気分になれます。

「見張り」はドゥームズディ・ブックシリーズの一つで、久しぶりにキヴリンやダンワージィ教授に会えて嬉しさを感じる一方、もやもやとした印象を最初は受けました。
主人公の思い違いを読者がとらえられるのか、そこが一つのカギになるわけですが、最後に劇的に転換させるには、伏せておかねばならないところもあるわけで、その伝わらなさがもやもや感を生んでいたのだと思います。
これを読んでいて思い出していたのは、数年前に自分が脚本した人形劇「オオカミのひみつ」で、勘違いが勘違いを生み勘違いしたまま終わってしまうというストーリィを果たして観客に伝わるだろうかと非常に心配したことでした。

表題作である「わが愛しき娘たちよ」は、問題作であるという評判は知っていたので、多少身構えて読んだつもりでしたが、正直、鳥肌が立ちましたね。
フェミ的な考察は本書解説にお任せすることにして、私がいちばん考えさせられたのは、翻訳ってほんとうに難しいなぁということ。
女子学生の話しことばって、その時々によってかなり違いがあるので、今、これを女子高生が読むとかなり古めかしく感じるのではないかしら。
もしかしたら「ぷっつん」ていう言葉さえ知らないかもしれないよ。

女の子というキーワードで言えば「デイジー、日だまりの中で」は、男性にはちょっとわからないかもね。
デイジーよりも「わが愛しき娘たち」のタヴィのほうが理解しやすいと思う。
個人的には、なるほど、洗練されるっていうのはこういうことなんだなとジャネット・ウィンターソンっぽい作風に感心したけれど。

「遠路はるばる」は、最近あった日食と重ね合わせることができるタイムリーな1作でした。
そういや、中国でもミサイルを打つとか打たないとかありましたよね。
私の住んでいる地域では、雲が厚くて観測不能でありましたが。

「月がとっても青いから」も、翻訳の難しさを感じる作品だけれど、タップシューズをはきつぶすことが「犬は勘定に入れません」に繋がっているんだなぁと思いました。

この短編集はほかにもキリスト教を基調としたものや、「通販クローン」のような馬鹿な男の話(そんな馬鹿な男いるわけがないと思いつつも、いや、もしかしたらと思ってしまう)などがあり、小説の着想の面白さをいろいろ感じさせてくれます。
わたしのイチオシは「鏡の中のシドン」ですが、人によってこれっていう作品が違うんだろうなって思います。
貴方はどの作品が好みですか?

わが愛しき娘たちよ (ハヤカワ文庫SF)


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2 コメント

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おひさしぶり (迷跡)
2009-09-17 20:38:32
こんばんは、迷跡です。

私も最近読んだばかり。
「月がとっても青いから」のドタバタがよかったです。
あとは「見張り」。あの悲しい「ドゥームズディ・ブック」の後で、キヴリンも元気を取り戻したようでホッとしました。目下積読中の「犬は勘定に入りません」は悲惨なことにはならないようなので安心して読めそうですね。

「鏡の中のシドン」は、読後、心が騒いで落ち着かない気分になったような記憶があります。
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月、青ってるね (くろにゃんこ)
2009-09-17 23:48:31
人の災難というのは、なんであんなに笑えるんでしょうか。
オゾン層の生成というのは喉から手が出るほど欲しい技術ですが、鍋で焼けどするとか、竹串を指に突き刺すとか、魚の鱗で指を切るとか、着ようと思ったスカートが見つからないとか、最近あった災難を考えると、絶対にイヤです!

「犬は勘定に入りません」を読んだら、ぜひ、「ボートの三人男」も読んでみてね。
イギリスの笑いが堪能できますから。
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