徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

【新型コロナ対策】マスクは何歳から着用させるべきか?

2020年05月10日 20時08分37秒 | 小児科診療
小児科医の中でも議論になる話題です。

現在の私の知識では、
・マスクを装着する意味がわかる年齢でないとすべきではない。
・マスクの意味がわからず嫌がる子どもは、それを触ってとろうとする・・・この行為が手指を汚染するため、かえってハイリスクとなってしまう。
・乳児にマスクをさせると窒息のリスクはないか?
くらい。

では何歳から? ・・・と聞かれてもハッキリと線を引くことは難しい。
上記のことをクリアできるのは3歳以降でしょうか。
2歳は「魔のイヤイヤ期」であり、素直にマスクをしてくれるとは思えません。

新型コロナ対策としては、上記に加え、
子どもは不顕性感染が多く、症状がなくてもウイルスをまき散らしている可能性があり、可能な限りマスクをすべき
という意見もあるでしょう。

ただ、家庭内で親から子どもに感染させても、子どもから他の家族に広がったという報告が聞こえてこないのが不思議です。
この辺は、まだ謎ですね。

私の知識が正しいのか、果たして“正解”はあるのか、検索して調べてみました。

アメリカのCDC(疾病管理予防センター)は、
2歳以上の子どもを含むすべての人が、それ以外の方法でソーシャル・ディスタンスを保つのが難しい公共の場所(スーパーや薬局)、特に、地域内で重大な感染がみられるエリアでは布マスクを着用
と推奨しているそうです。

出てきました「ソーシャル・ディスタンス」。
感染症分野のご意見番、イワケン先生(岩田健太郎医師)が、
マスクは飛沫が飛ぶのを防ぐものであり、ウイルスを防御する能力はない
マスクよりソーシャル・ディスタンスが大事、ソーシャル・ディスタンスを保てないからマスクが必要になると考えるべし
とコメントしている記事を読んだことがあります。

御意!

そうです、ソーシャル・ディスタンスをとれれば、(閉鎖空間でなければ)マスクの必要性は激減します。
あ、CDCも「マスクはソーシャル・ディスタンスの代わりにはならない」と注意を呼びかけているそうです。

話を戻しますが、CDCの推奨を逆の視点から見ると、
2歳未満の幼児にはマスク着用は推奨されない
ことになります。
最初に述べたように、
・感染対策を理解できない乳幼児はマスクを触りまくって汚染させるため意味がないこと
・乳児は気道が狭いからマスクをすると呼吸しにくくなる〜窒息する可能性・危険性がある
ためです。

以上より、CDCの見解は、
2歳以上は着用を推奨、2歳未満は推奨せず
となります。

ここに高いハードルが登場。
マスクを嫌がる子どもにどのように着用させるか?
・・・“魔の2歳児”がしてくれるかなあ。

幼児にマスクをつけされる方法を検索すると、結構ヒットします。
こちらのコラムには嚢胞線維症の娘さんを持つ保護者の経験談が紹介されていました。
子どもにマスクをさせるための様々なテクニックをリストアップ;

・親もマスクをする
・マスクをして鏡を見ながら、マスクについて語る
・お気に入りの人形やぬいぐるみにマスクをさせる
・マスクをしている他の子ども達の写真を見せる
・大好きな絵本の登場人物にマスクを描く

などなど。


・自分で選ばせてキャラクター柄マスクを購入
・マスクに好きなシールを貼る
・親もマスクを付けて「おそろい」と盛り上げる
・できたらひたすら“ほめる”

などのアイディアも。

すばらしい・・・思わず「私もマスクをする!」と言い出しそうなネタばかり。
「マスクをつけさせる」<「マスクをしたがるように仕向ける」
ことがコツですね。
ぜひ、保護者の方々と共有したい情報です。

そういえば、お母さん手作りのキャラクター入りマスクをしてくる子どもも見かけます。
あれは「市販の味気ないマスクはしてくれないから作ってみた」という例もいるのかも知れません。

ちなみに市販されている幼児用マスクの対象年齢は「2歳から」と「3歳から」があるそうです。
唯一、1歳半から使える「ピジョン はじめてのマスク」という製品もあります。
赤ちゃん用には顔面に装着するタイプはありませんが、バギーを覆うタイプの「バギーマスク」なる製品があります(夏は暑くて無理そう)。

<参考資料>2の日本小児科学会HPにあるQ&Aでは、

Q  子どももマスクはしておいた方がいいですか?マスクが出来ない場合はどうしたらいいですか?
A: 感染している人のくしゃみや咳に含まれる飛まつを直接浴びないという観点からは、マスクをすることの利点はあるかと思いますが、小さなお子さんでは現実的ではないと思われます。

と「小さなお子さんでは現実的でない」とぼかして年齢には触れていません。
う〜ん、役に立たない。

さて、このブログの前項目「マスクは誰のために必要?」での結論は、
① 普通の布マスクでは他人を守るため(咳エチケット系の考え方)
② 自分を守るには医療用マスク(サージカルマスク、N95マスク)が必要
でした。
子どもにマスクを付けされる目的も①につきます(年齢関係なし!)。
すると、不顕性感染のリスクのある新型コロナ流行中は、いろいろ工夫して着用させるべし、ということになります。

本日の結論;

・マスクの必要性は年齢を問わず存在し、その目的は「他人を守るため」である
・世界標準では2歳以上に推奨される
2歳未満には推奨されない(メリット<デメリットとなるため
・2歳未満の感染対策にはソーシャル・ディスタンスを重視すべし
・嫌がる幼児に着用させるコツは、「つけさせる」ではなく「つけたくなるよう仕向ける」スタンス

さてさて、まだ5月ですが今週は最高気温が30℃を越える日が続くと天気予報で言ってました。
マスクをするのが暑くてつらくなる季節がやってきます。
ますます、子どもにマスクをさせるのが大変になりそう。

<参考資料>
1.2歳未満にはリスクも。新型コロナ対策で子どもにもマスクをさせるべき?(2020.5.1 lifehacker
2.新型コロナウイルス感染症に関するQ&A(2020年4月12日 日本小児科学会
3.マスクっていつ(何歳)からつけるの? 嫌がる子どもにつけさせる方法(YuoTube動画 by しいのきクリニック

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