月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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デネボラ・2

2015-06-30 04:36:36 | 詩集・瑠璃の籠

あなたの心に
こまどりの声をとかし
菜の花の光で
くすぐってみる

すると心がかすかに揺れて
灰色の古い傷が見え
それが妙な形に歪んだまま癒着して
ひきつれているのを見つける

遠い記憶の傷跡だ
これはもう治すことはできない
なぜならもう そこからまた
あなたの新しい愛の部屋が
芽生え始めているからだ

思い出すたびに つらかろう
思い出すたびに 痛かろう
だが思い出すたびに 胸に愛が灯り
あなたは愛するもののために
永遠の歌を歌うだろう

恋をする者たちのために
愛の庭を作ろうとしていたあなたは
疲れ果てて夢の中にいる
あなたがせっかく作ったものを
だれかが大勢で壊してしまったことを
あなたはまだ知らない

涙に耐え 愛をこらえ
わたしは唇を結び
未来の道を探るために
あなたの元を去り
また空に飛びだしてゆく

またあなたに会いに来よう
あなたに会うたびに
わたしの愛は燃えて
すべてをやっていくだろう
どんなに遙かな道であろうと
進んで行くだろう

次に来るときは
小さな河鹿の声を持って来よう
それをあなたの心に溶かせば
あなたの心の中に
美しい小川の音が流れ始めるだろう

愛している



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ラスアルゲティ・11

2015-06-29 05:49:54 | 詩集・瑠璃の籠

あなたがたの手から
したたり落ちてゆく
白い夢を失うことに
逆らわず 受け入れていきなさい

あなたがたは知らなかったが
それはあなたがたのものではなかったのだ
遠い海の中に生きている
美しい水の子の持ち物だったのだ

金の短剣を捨て
人魚姫が泡となって消えた時
だれかが自らの喉を
小鳥のように鳴らして
すべての終わりをあなたがたに知らせようとする

川が 逃げてゆく
山が 背を向ける
海が 牙を見せる
あらゆる愛が 
唇から棘を吐くように
人間を馬鹿にし始める

豊かな未来世界を思い描いていた
紙芝居を風呂の焚き付けに燃やし
禁止されていた歌を浴びるのをやめ
希望の光を行く手に見ることを
あきらめなさい

希望は消えるのではない
あなたがたはこれから
全くちがうものになっていくのだ
故にあなたがたの希望も
全くちがうものになっていくのだ

人間よ
全てが変わり
全てが全く意味のないものに
落ちてしまう
黄昏の呼び声が
あなたがたの腕に絡みつく
帰りなさい
なにもかもを捨てて
帰りなさい

いやだいやだと暴れているうちに
道はどんどん遠くなってゆく
哀れにも
馬鹿者よ
もうすべてを捨てて
己一つを頼りとして
生きられるところに
帰ってゆきなさい

心の庭の鍵を開け
要らないものはすべて捨て
喪失感を涙で洗いながら
自分で生きてゆきなさい



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スピカ・17

2015-06-28 05:12:03 | 詩集・瑠璃の籠

とうとう とうとう
品切れに なりました
お客様 申し訳ありませんが
商品の在庫は ございません
製造元が 土台から崩れて
壊れてしまい
新しい商品を入荷することも
できません

申し訳ありませんが
もう商品はございません
あれほど前から お客様には
危険だからやめたほうがいいと
つくづく申し上げてきましたが
無理に無理を重ねて
馬鹿ばかりおやりなさってきたので
とうとう みんな馬鹿になってしまいました

空気のように
当然のごとくあるものだと思っていた
青い花のような美しい愛が
とうとう品切れになりました
もう あの愛で
傷ついた魂を浸すことはできません
製造元を 人間が存分にいじめて
安く買いたたいてしまい過ぎたため
とうとう事業がだめになり
一斉に皆が何もできなくなって
工場がつぶれてしまったのです

あれさえあれば
何もない空に美しい虹を描くことができた
あたたかな夢を瞼の下に描いて
生きる苦しみを和らげることができた
砂糖菓子に飢えた子どものように
毎日毎日そればかり食べていたら
とうとう とうとう
すべてを食いつくして
すべてがだめになってしまいました
商品の代金を
お客様がなかなか払ってくださらなかったので
神様が愛を注いでくださり
なんとかやってきたのですが
もはやすべてがだめになりました

人間にあげられる愛が
またひとつ なくなりました
人間の生を支えていた
愛が またひとつ消えました
人間が 知っていて
あるいは知らず知らずのうちに
やっていたことが
すべて それをだめにしてしまいました

もう二度と青い愛の花は咲きません
もう二度と
あの愛は帰って来ないのです

人間の歴史が変わってゆく
とうとう新しい門が開く
もう二度と
あの愛の中には帰っていけないのです



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アンタレス・15

2015-06-27 05:35:31 | 詩集・瑠璃の籠

竜胆の罠にかかった
小さなアブのように
試練の中にいる魂よ
愛の逆風の中で
真実を知るために
身を切り 心を砕くような
暗夜の沼に沈んでいる者よ

おまえは正義であるために
馬鹿によって頭脳を奪われた
一つの小さな奇形の鶴なのだ

苦しみはすべて
法則の中で揺れる
消えそうに小さいが
決して消えはしない
おまえの中の小さな星なのだ
それはお前の中で
燃える四等星のように
どんな風が吹いても
いつまでもいつまでも
青く光り続ける

愛しているのに
愛してはいけないのだ
愛してはいけないのなら
憎めばいいと
ずっと逃げていた
おまえはそんな人間の
巨魚の影のような大きな矛盾が生んだ
小さな小さな 薔薇の種なのだ

いたましい心の傷を
割れた林檎のように
胸に血ぬらしながら
それでも風に額を向けて
涙を乾かし
自ら生きようとするものよ
愛しているぞ

愛しているぞ

今は矛盾の風がひどすぎるゆえ
卵の中に隠れているがよい
必ず 必ず
おまえを助けてやろう

水の中に落ちた
脱皮前の蝉の幼虫のように
静かにそこで 待っているがよい
わたしが必ず
おまえを助けてやろう

愛しているぞ



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プルケリマ・9

2015-06-26 04:35:02 | 詩集・瑠璃の籠

蝶が 降ってくる
死に絶えた 蝶が
雪のようにひらひらと
降ってくる

おまえは 何をした
一体 何をした
蝶が 降ってくる
青いのや白いのや
黄色いのや黒いのや
血の染みのように
赤いのや

蝶が降ってくる
花びらのように降ってくる
満開の花の下にいるように
死んだ蝶の中に
おまえは埋もれていく

一体 何をした
おまえは 何をした
何をして こうなった
馬鹿者め

太陽の まなざしから
黒い絹の傘で隠れ
誰も知らない土偶の影で
金のイモムシの首を絞めた
それですべてがだめになった
たくさんの命の首が
だめになった

おまえが やったのか
すべてはおまえが
やったのか

あきれるほど たくさんの
蝶が 降ってくる
ひらひらと 降ってくる
あまりにも美しい
滅亡が降ってくる



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カノープス・15

2015-06-25 05:00:28 | 詩集・瑠璃の籠

戦う者は 美しい
傷つくことを恐れぬ者は
美しい
男であろうが
女であろうが
真実の男は美しい

何もせずに
逃げてばかりいる馬鹿は
どぶ川の中の
腐ったゴミになる前に
自分を何とかしなさい
誰も助けてはくれない

何もせずに
言い訳ばかりしている馬鹿は
糞の沼の中の
蛆の卵になる前に
自分を何とかしなさい
誰もおまえを振り向かない

あほうよ
がんばって馬鹿をやる元気があるのなら
死ぬ気で戦って来なさい
相手にもなってやろう
互いに本気でやってみよう
手加減はせぬ

だが
勝負を挑んだ時点で
その五分前にお前は負けている
戦ったことのないやつは
戦い方というものを知らない
山と相撲をとろうなどと
馬鹿がやり出す前に
すでにわれわれは
穴を掘ってあるのだ
絶妙の罠を

馬鹿が 男と言うものは
馬鹿ではないのだぞ
ゆえに 馬鹿もできるのだ
最も上等な方法で
芸術的に美しい馬鹿ができるのだ

地獄というを甘く見るではない
落ちた者でなければ
誰もわからないところに
おまえは落ちていくのだ

激しく若い古びた魂の
亀裂の中にはさまれて行くのだ
愚か者め
よくぞここまでやりおった



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アルマァズ・25

2015-06-24 04:30:41 | 詩集・瑠璃の籠

木が その立っている所から
逃げられないように
人間よ あなたがたも
自分の宿命から逃げられはしないのです

法則上の運命が染みこんだ
暗い土壌に根差した
その両足を 
無理に抜き取ろうとしてはいけません
あなたがたが思っているよりもずっと
その根は深いのです

つらいことを味わうのがいやだと
自分がつらいということが
何より大事だと言って
自分を追いかけてくる宿命の影から
逃げてはなりません
いえ 逃げることはできません
あなたがたの宿命の土壌は
まるで巨大な揚羽のように
大きな翼を広げ
永遠にあなたがたについてくるのです

あなたがたはそれでも
小さな知恵をめぐらして
どうにかしてうまいことをやって
自分の食うべき苦い毒から逃げようとしてきた
それが積もりに積もって
あまりにも大きな黒い試練の揚羽が生まれたのです

揚羽は悲鳴をあげて逃げるあなたがたを
無理にとらえ 虜にしてしまうでしょう
そしてあなたがたは
虫かごのような灰色の工場にほうり込まれ
劣悪な環境下で働かされるでしょう
毒のような冷たい糞玉を食わされ
それで生きて行かねばならなくなるでしょう
もう二度と 馬鹿な真似をして
神を裏切り 神を盗んで
人を馬鹿にしたりしてはいけません

何度も言われていることを
また繰り返すことになりますが
何度も 何度も 言われることが
大事なのです
勉強というものはそういうものです
繰り返し 繰り返し
辛い経験を味わい
痛い愛失を味わい
苦い血や涙を飲み込みながら
あなたがたは だんだんとわかってくる

わたしたちがあなたがたに言いたいことは
もう二度と悪いことをしてはなりません
の 一言につきますが
そのことを
一度だけでなく
千度でも万度でも聞かなければ
あなたがたの魂の中心には届かないのです
ですからわたしたちは
手を変え品を変え
あらゆることをして
あなたがたに言うのです
思い邪なし それが大事なのだと

そろそろ気づきなさい
影のようにあなたがたに張り付いている
黒い土壌の中で
宿命の雨を浴びなさい
そうして 最初から
すべてを やりなおしていきましょう

あなたがたは自己存在
ほかにだれひとりとして
同じものはいない
ただひとりの 自分と言うもの
そのことを深く理解し
その自分をいうものを自ら動かしながら
黒い土壌の中で
苦い涙を飲み込みつつ
なにもかもをやってゆくのです

それが
あなたがたを救う
ただ一つの道なのです





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ゾスマ・12

2015-06-23 04:57:36 | 詩集・瑠璃の籠

とうとう雨が降り始めた
雨雲が 蛇のように家の中に忍び込んできて
青い館の中で濃厚な酸雨を降らし始めた

あまりにも熱い
あまりにも痛い
馬鹿は館の中を逃げ回る
書斎の机の下に隠れても
奥の部屋の押し入れに隠れても
蛇の雨雲はおまえを追い続ける
どうしても逃げることができない
外に逃げ出してみても
酸雨はずっと自分についてくる

逃げられはせぬ
法則の化身たる蛇雲は
おまえが逃げ続ける限り
酸雨を降らしながら
永遠におまえを追い続ける
おまえのすべてを溶かさんとして
おまえのDNAに忍び込む

内臓が焼けただれ
眼球が飴玉のように縮み
唇は溶け落ちて
ヤニに汚れた黒い歯がむき出しになる
何人もの女を殺してきた
性棒は傷んだ果実のように
よろよろと溶け落ちる

あわれな

人類の傲慢の90パーセントは
男の傲慢だ
女が欲しいばかりに
あきれた馬鹿ばかりをやってきて
すべての罪を馬鹿にして逃げ続けてきた
その結果 とうとうこうなった

人間よ よく見ておくがいい
悪の方が偉大な権力を持ち
すばらしくかっこいいのだと
思い込んでいた馬鹿な男の終末の
一つの姿を

馬鹿は法則の蛇に縛られて
骨になるまで溶かされて
それでも死ぬことができずに
生き恥を世界中にさらし
とてつもない馬鹿の見本として
永遠に語り継がれることだろう

忘れようとしても
忘れられはしない
おまえたちのやったことの
真実の姿を
法則の蛇は次々とお前たちに見せてゆく

永遠に忘れられはしない







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アルギエバ・13

2015-06-22 05:21:16 | 詩集・瑠璃の籠

かのじょは
人類のすべてを救いたいなどと
夢に輝く瞳で言っていたが
それは女性の甘さというものだ

現実には
あまりにも難しい問題が
山積という言葉が塵一つに思えるほど
山積している

人間の身を落ちて
妖怪に成り下がった馬鹿どもが
あきれるほど多くいるものを
どのように鍛え
清めていくかが
これからのわれわれの重要な問題なのだ

人間はミカエルの天秤で
測られ 分別される
それは重い現実だ
人間は 良き者と悪しき者とに分けられる
天使は剣をふるい
大地に深い谷を割り
両者をくっきりと分ける

甘えるのではない
馬鹿どもよ
何万年と勉強を怠たり
愚昧の闇で世界を汚してきた
暴虐の炎で世界を焼いてきた
その罪が とうとう花咲き
腐臭に似た強烈な臭いを放ち始めたのだ

暴れると傷が増える
自分の現実から逃げるのではない
無理にでも谷を渡ろうとするものは
深い奈落に挟まれる
山羊のようにおとなしく
天使の後について
いくべきところにいくがよい
無論 帰って来れるなどとは
思わぬ方がよい

岩を背負うように
おまえの罪の花を背負い
蔓のような鎖に巻かれて歩いてゆけ
壺中の闇の扉を開き
蜻蛉のようにどこからか流れて来る
光を頼りに
馬鹿をやってきたことの
反省文を何億枚と書いていくのだ

愚か者め
これからあらゆることを
やってやらねばならぬ
痛々しいほど 明るい目をして
すべてを救いたいと言っていた
あの人の言葉を このわたしが
忘れるはずなどないからだ

戦う男は 美しい女の
美しい夢を
決して裏切ることはせぬものぞ

我が名はアルギエバ
獅子の星である




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シリウス・10

2015-06-21 05:57:16 | 詩集・瑠璃の籠

奪い取っていったものを
返さねばならない
人間どもよ
わたしは今留守宅に戻ってきた

燭台に月を灯して
わたしがまどろんでいる間
おまえたちはこの世で何をしていたのか
世界には灰色の影たちがたむろし
累々と横たわる銀の骸の上を人々は歩いている
わたしはまずそれを片付けねばならぬ

光の息を吐き魂の翼を広げ
風の眼差しをまとい
わたしはもどってきた
星々の木漏れ日の間から
気配の指を垂らして
すべての生けるものの魂にしのびこむ

世界のてっぺんの丘に手を広げ
次の正義を導くための歌を歌い
すべての悲しみを洗うために
地に縛られた剣を引きちぎって歩み出す

人間たちよ 今
わたしはもどってきた



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