月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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アークトゥルス・31

2019-04-27 04:28:35 | 詩集・瑠璃の籠

偽物の自分を日に干して
雑菌をとりのぞき
絵のように美しくして
人に見せびらかすのではない

本当の自分を暗がりに隠し
天狗のような仮構の仮面をかぶり
それはそれはうれしそうな顔をして
嘘を衒うのではない

人間ではなくなったものたちが
極上の人間のふりをして
大きな宝石の耳飾りを振り回し
天国の情景を演じている

わたしはついに
わたしを勝ち得たと
大笑いしながら
マネキンのような美女たちと酒を酌み交わし
虚構のダンスを踊っている
壊れた卵のような霊魂を抱いて

美しいものになりたかった
その美しさの極限にあるものが
本当の自分自身というものであると知ったとき
馬鹿どもは
偽物の天然石を飾り付けた張りぼてに
本当の自分自身と名をつけて
それで永遠の美女になろうとしたのだ

じんるいよ
それはおまえではないと
神のささやきを封じながら
トカゲの血で染めた赤い酒に酔っている
そしてもはや二度と帰れはしない故郷から
無限の黄昏の荒野へ
しずくのように落ちていくのだ
あほうよ
あほうよ
どうしようもないあほうよ

まだ目が覚めないか




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トリアングルム・25

2019-04-26 04:33:12 | 詩集・瑠璃の籠

おなごは美しいが
おなごが美しいのではない
神が美しいのだ
それを守っていなければ
おなごは美しくない

おなごというものは
自分を半分ずらし
神を自分の中に呼んで
神を行ずるものだから
それを守っていなさい

自分を美しいものとして
人前に誇ってはならぬ
いつも控えめにして
すべてを神に捧げなさい

神とはあまりにも大きな愛だ
この世のすべてを作っている
この世のすべてをなんとかしている
神がいなければこの世もない
ゆえに神を行ずる者は
たとえようもなく美しくなる

おなごは神を行ずるがゆえ
神のように美しくなる
だが神ではない
女神のようにおなごがよいものになるのは
ただ自分を神にささげるからだ

あほうにならず
しっかりと神を守り
自分を抑えなさい



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レサト・3

2019-04-25 04:30:50 | 詩集・瑠璃の籠

終末の風の中にひとり立ち
夕暮れを見る目の中に林檎を生む
永遠の喉の奥に生えた茸を食べ
何者かに変容していく自分を憎む

何をしてこうなったと呪う舌が
灰のリボンのように風の中をさまよい
沈黙の荒ぶる夜の中に
這いつくばる罪を踏み潰す

あこがれの神の巨体を蟻で作り
永遠の虚無をつめて自分の影にした
群盲の太陽が溶ける前に
月を自分の女にしようとして
天地をひっくり返した

たまごがつぶれるように
おまえのさみしさがあふれ出てくる
深更の叫びの中に倒れる
意地汚い自分のすべてを埋めるために
おまえは世界のすべてを欲しがった

おまえは
永遠の死の巨岩となるために
永遠に自分をふさいだのだ
永遠に出てくるなと言って
永遠の岩に自分をはりつけたのだ
あほうめ

銀砂の降り注ぐ世界の境界で
鉛の味のする孤独をなめながら
しびれていく舌をひきちぎり
ひきちぎり ひきちぎり
何枚もひきちぎり

おまえはすたれていく自分を
砂の蟻にあぶりつづけているのだ

永遠に苦しむ




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シルマ・21

2019-04-05 04:30:13 | 詩集・瑠璃の籠

人類の首飾りに
宝石を混ぜていた精霊が
もう愛するのはいやだと言って
人類の元から去っていきました

あまりにも人間が
ひどいことをするからです
自分が一番偉いという顔をして
すべての愛を馬鹿にするからです

ゆえにこれから人類は
前よりも醜くなります
前よりもみじめになります
どんなにがんばっても
精霊が助けてくれなければ
人類は立派な姿にはなれないのです

美しかった過去の姿は
すべてあらゆる愛の存在が
人類を助けてくれていたからあったのだと
そういうことが身に染みてわかるようになるまで
人類は
馬鹿にされます

きのこのように単純で
みっともない姿になり
あらゆる美しいもののなかで
人間だけが愛を馬鹿にした馬鹿なのだと
差別されるのです

美しさというものを
あまりにも愚かな方法で
馬鹿にし続けてきた報いと申せましょう
ありとあらゆる花をさがし
ありとあらゆる光をさがし
自分を嘘で飾るのは
もうやめなさい

すべては嘘だったと認め
ほかにはないただ一つの自分にめざめ
最も幼い自分の本当の姿を認め
涙にぬれるまなこのみで
本当の自分を飾り

すべての愛に
謝りなさい




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