おれは

つらい時にはいつも
あなたが一番好きだった
ミザール

とんでもなく臭いのに
なぜか引き込まれた

いつも
そんなことまでして
そんなことまでして
おれのために
そんなことまでして
いいのかって思うほど
してくれて

そうして
つらいときがすぎたら
あなたはいつも
自分から離れていって
言うのだ

あとは自分でやれ
馬鹿はやらずに
偉いことをやれ
つらくなったら
いつでも来い

なんでもやってもらって
それでいいのかって
言っても
おれがいいことをするとは限らなくて
また馬鹿をやって
つらくなって
二度目はどうしても行きづらくて
行きたくなくて

おれは自分で
アンタレスのところにいく

いつの日も

いつの日も
神さまがいた
おれがつらすぎたとき
あんまりだって
苦しすぎたとき
ふと風に乗って
神さまが来て
おれを楽にしてくれた

そんなときが
何度も何度もあった

美しい光が
おれの手の中にあって
どうしてこれくれるのって
きいたら
愛しているからだよと
それだけで
おれは何もいらなくて
赤んぼみたいに
眠っているだけでよくて

気持ちがよくて
涙が出て
おれも愛してるって
言って

つらかったとき
つらかったとき
つらかったとき
いつも神さまがいた

光

黒雲が流れ去り
晴れ渡った

澄んだ空気が
魂の中に流れてくる

光は満ち渡り
それは差し込んでくるのではなく
わたし自らが
光っているのだ

わたしは　わたしだ
あまりにも　美しい

天国とは
わたしのことだったのだ

山

もっこをかつげ　もっこをかつげ
山を造ろう　山を造ろう
おれたちはみんな　馬鹿だった
でももういいんだ
苦しいことは　もう何もない

いいことばかり　考えよう
山ができたら　木を植えよう
池をつくって　魚を放そう
子供が　釣りにくるぞ
鳥が　歌いにくるぞ
みんな　よろこぶぞ

もっこをかつげ　もっこをかつげ
おれたちの　肩と腕
強い脚　明るい心
動け　動け　おれよ　おれよ
おれたちは　苦しいほど幸せだ

山を造ろう　みんなで
山を造ろう

おれたちの
美しい山を造ろう

幸せのかたちを

幸せのかたちを
そこなわないために
努力した　どんなことも
砂が風に崩されるように
どんどん馬鹿になっていくのです

幸せに　なりたかった
幸せな自分を　みんなに見せたかった
だって　わたしは
なんにもない
馬鹿なやつだから

何もしないで　幸せになるには
ひとから　幸せを盗むしかないので
それはいっぱい　盗んだのです
それで幸せになって
なにもかも　順調だと
思っていた矢先
突然　神さまの声が落ちて来て
今までの幸せは
すべて無効だとおっしゃるのです

こういうの　なんて言いましたか
今までは使えたお金が
突然使えなくなったというような
でのみねーしょん？
みたいなもの？

人間はみんな
今までの幸せを捨てて
新しい幸せに向かわねばならないと
神さまがおっしゃるのです
あんなにがんばって
幸せになったのに

幸せのかたちを
そこなわないために
努力した　どんなことも
すべて
馬鹿になってしまうのです
ざるで水をすくうような
馬鹿なことになるのです
だってもう
それは幸せではないから

人間はもう　
いかなくてはならないのです
天使の風に従って
もう行かなくてはならないのです
新しい幸福の時代に向かって
歩き始めなければならないのです

あんなにがんばって
幸せになった幸せは
もう　人間が馬鹿だった時代の
思い出したくない記憶になるのです

欲しかった幸せ

かっこいいやつに
なりたかったんです
あーあ
ばかみたいです

ずーっとやってました
おれがいやで
おれが馬鹿なのがいやで
いいやつになりたくて
なんもかんも人から盗んだ
馬鹿です

きつかったんです
自分が
全然みんなより馬鹿でこんまいのが
死ぬほど苦しかったんです

おれはおれがいやだったんです
みんなのほうがいい
みんなのようになりたい
みんなおれより美人でかっこよくて
ずっとずっといいんだよ
おれだけ馬鹿なのが
おれ　つらすぎたんです

もうわかってます
餓鬼のつれえとこ
おれはおれのほうがよかったんですよね
うそで良い自分作るより
ほんまもんのほうが
ブスでも馬鹿でもよかったんですよね

きっついことやりました
できるやつの皮盗んで
いろんな馬鹿やって
すっげえかっこいいやつに
なったんですよ

馬鹿が　山ほど馬鹿やって
みんながおれをほめてくれる
ぜったいに馬鹿にされない
完璧に偉いやつになったんです
そしたらおれ　いつの間にか
何にもなくなってたんです
自分が

幸せかって　ええよく聞かれます
ずんとくるね
ええ　おれ
もういやだって思ってます

全部　嘘だからです
本当に欲しかった自分は
こんなんじゃ　なかったって
馬鹿が今さら　つらいんです

銀のスプーン

この世で
最も貧しい人々のそばにいた
神が
去ってゆく

人間が
約束を破ったので
今まで当然のように
愛を食べさせてくれていた
銀のスプーンが壊れてしまったのだ

今までなら
砂漠の真ん中で
道に迷っていた子供のそばには
いつも天使がいた
それなのに

人間が愛のために
何もしなかったので
人の心に愛を注ぐ
銀のスプーンが壊れてしまったのだ

今までなら　今までなら
こんなに走り回って
探し回って
さ迷い歩いて
足を傷だらけにして
心臓が萎えるまで疲れ果てなくても
すぐに見つかった
あの愛が

どこにもいない

人間が
自分の幸せだけしか
考えなかったので
神が
愛を食べさせてくれていた
銀のスプーンが
全部　壊れてしまったのだ

アトラス

アトラスが
地球を
肩から下ろす

もう　君たちのために
背負っていることはできないと
地球を
肩から下ろす

ヘラクレスを
呼んで来い
ヘラクレスを

もう一度
地球を
かつぎあげるために

金剛の岩の
墓碑を砕き
粉々になった骨を集め
灰を集め
蘇りの薬をふり

黄泉の国から
ヘラクレスを
呼び戻せ

もう一度
地球を
かつぎあげるために

ヘラクレスを
呼んで来い

あほう

どんなことになっても
待っていてくれると
思っていたんです
何をしても
許してくれると
思っていたんです

まさか　まさか
天使が　きれるとは
思っていなかったんです
神さまが　きれるとは
思っていなかったんです
みんなが怒って
おれたちをやっつけにくるんですよ

ごめんなさい　ごめんなさい
どうにかしてください　助けてください
偉そうに言っといて
なんもできません
なんであんなことやったんだって
そりゃあ
悪いことあふれるほどやったら
おれたちが勝つと思ってたんだよ
まさか　まさか
こんなことになるとは思ってなかったんですよ

森に行ったら
木がおれを鞭うつんですよ
海に行ったら
波がおれに噛みつくんですよ
野原に行ったら
花がおれを嗤うんですよ
女がみんな
いやだって言って逃げるんですよ

空が言うんですよ
いつまで　子供のつもりで
甘えているつもりなんだって
地球が　言うんですよ
人間はいつまで
ここに居座っているつもりなんだって

あんなこと　やるんじゃなかったって
あんなこと　やるんじゃなかったって
そればっかり

おれたち　怒られるんです
みんなに　怒られるんです
もう誰も　許してくれないんです

人間よ

人間よ
人間は　腐りきった
人間は　滅びた

だが
人間は必ず
再び立ち上がると
人間は
宣言する

人間よ
本当の　われわれの
美しさこそが
われわれの　勲章だ

地位も　名誉も
金銭の夢も
すべては　汚れだ

人間は
人間の
真価をかけて
歩きだす

ともにくる心のある者は
ついてこい