月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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眠れるヴィーナス

2013-11-30 05:12:04 | 虹のコレクション
No,20
ジョルジョーネ、「眠れるヴィーナス」、16世紀イタリア、盛期ルネサンス、ヴェネツィア派。

有名すぎる絵だが、ここでまた取り上げる。ジョルジョーネの絵は、レオナルドと師ベッリーニの影響から、もとはもっと静かでどこかさみしい感じがするが、これには、ティツイアーノの筆が入っているので、そのぶん暖かさを感じる。

ジョルジョーネへの、ティツィアーノの愛が、風景の中で横たわるヴィーナスを包んでいる。

ヴィーナスをテーマにした絵は、たくさん描かれているが、はっきり言って、ボッティチェリのヴィーナスを超えられた絵は、一枚もない。その中で、これは特に目立つ作品である。

見れば安らぎを感じる、美しい絵である。

人間が人間らしく表現していた芸術は、ルネサンスまでではないかと感じる、一枚の絵である。後期ルネサンス、古典主義、ロココ、新古典主義、印象派、ロマン主義、象徴主義と、芸術はだんだん、堅苦しくなり、概念的になり、果てに、キュビズムがでてくる。ここにいたって、芸術は人間性を破壊した。

風景の中で、静かに眠っているヴィーナスは、芸術の魂が、もはや眠って行くしかない時代に向かっていくという、表現なのかもしれない。



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ボルドーのミルク売り娘

2013-11-29 05:07:02 | 虹のコレクション
No,19
フランシスコ・デ・ゴヤ、「ボルドーのミルク売り娘」、19世紀スペイン、ロココ、ロマン派。

この画家の絵はあまり好みではないのだが、特筆すべき点があるので採用した。

技術的に優れた画家である。卓越している。だがこの画家は、自己存在の中枢を、きついウソにむしばまれている。それがゆえに、絵の中にいる人間が、たいそう苦しんでいる。

こういう画家には、ほかにカラヴァッジョがいるが、ゴヤのほうが、矛盾に苦しむ自分に気づいている分だけ、優れている。

このミルク売り娘なども、まるで死んでいるように見える。

「黒い絵」のシリーズなどには、人間存在の魂の真実が描かれている。暗黒面に苦しむ人間の叫びが聞こえる。

人間はゴヤの絵に、暗黒面を生きるものの真実を見ることができる。




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ばらの”み” 20

2013-11-28 04:56:33 | 月夜の考古学

「ほんとうに、サンタはいないと、君は思ってるのかね?」
 おじいさんはさみしそうな声で言った。環が鼻息を荒くして次に何を言おうかと考えていると、不意に、おじいさんは胸の前で組んでいた腕をほどいた。そして、ゆっくりと環の方に体の正面を向けた。おじいさんは笑っていたが、瞳の中には重い決意が見えた。環のあからさまな宣戦布告を、正面から受けとめなければと、おじいさんは覚悟を決めたのだ。環は、一瞬おじけづいて、半歩退いたが、すぐに勇をふるい起こして、元の姿勢に戻った。
(負けるもんか。絶対、絶対、やっつけてやる)
 環はアスファルトの上に背骨を突き刺すように立ち、目の前の敵をにらみ、まるでナイフのように指でその鼻を差して、言った。
「サンタがいるんだったら、いるんだったら、どうして、どうして……、子どもの気持ちが、わからないのよ。なんで、つらい思いしてる時に、助けてくれないのよ……」
 相手が立ち直れないような一言を言おうと思っていたのに、途中から環は何を言っているのかわからなくなった。最後の方には、泣き声さえ混じった。
「君は今、つらいのかね?」
「あ、あんたなんかに、わかるもんか! だれも、気がついてくれないんだ。我慢してるのに。ずっと、ずっと耐えてるのに……、みんな要のことばっかりで、わ、わたしのことなんか……」
 いったい自分は何を言ってるんだろう? これではやつあたりじゃないかと、環は頭のすみで思った。でも、負けを認めたくない思いが、それを無理やりにぎりつぶした。どうにかして、こいつを言い負かさなければ、こいつの化けの皮をはいでやらなければ……。でも、本当は、自分が何をのぞんでいるのか、そんなに、おじいさんをやっつけて、一体どうするつもりなのか、環にはまるでわかってはいなかった。
「そうか、君は今、ひとりぼっちなのか」
 おじいさんは、そう言うと、さみしそうな目をして、「わたしと同じだね」と言った。環は顔をあげた。おじいさんはそんな環の顔に、ぽっと笑いかけると、胸ポケットを探ってたばこを出した。そしてたばこを一本くわえて、火を点けながら、石を一つおくように、沈黙をおいた。吐き出したたばこの煙が、灰色の空の中へ、ぼんやりと消えていく。
「……わたしは、はやくに妻をなくしてね」
 やがておじいさんが、もそりと言った。その声は、今までの芝居じみた優しい声とはどこか違っていた。環には、目の前のおじいさんの体が、急にしぼんで小さくなったように、見えた。
「長いこと、一人娘と、二人で暮らしていた。……祥子という名前だったんだが、いい子でね。中二の時に母親が死んでから、ずっと家の中のことをやってくれていた」
 おじいさんは、たばこを持っていない方の手を顔にあて、少し照れくさそうに笑った。そして空を見上げて、目をしばしばさせた。
「……あの子が、短大を卒業して、保育園に就職が決まったときは、うれしくてねえ。わたしは仕事中心の人間で、あの子にはさみしい思いばかりをさせてしまったから……。なにもかも、これからだと、そう思っていた、矢先……」
 おじいさんの声が、弱々しく、あえいだように、聞こえた。環は、胸が圧迫されるのを感じた。いやな予感がした。そんな話、聞きたくない。そう言おうと思ったが、できなかった。
「あの子の乗ってたバスが、居眠り運転のトラックと、衝突してね……」
 おじいさんは視線を空に釘付けにしたまま、淡々と言った。
「……運も、悪かったんだろう。運転手もふくめて、バスには十二人も乗っていたのに、死んだのは、あの子だけだった」
 環はぎゅっと目を閉じた。おじいさんの顔を見たくなかった。逃げようという思いが、どこかにあるのに、体が動かない。おじいさんの声がふるえている。
「信じられなかった。信じられなかったよ。とても、とても……病院やら、葬式やら、それからいろいろとあったんだが、なあんにも、覚えちゃいないんだ。……気付いた時は、弔問客も、葬儀屋も、みんないなくなって、狭い家に、自分ひとりになっていた……」
 環の耳を切るように、冷たい木枯らしが、ざっと、吹いて、虚空に抜けた。
「……長いこと、仕事もせず、家にとじこもってた。祭壇の前にぼんやり座って、祥子の笑った写真ばかり、日がな一日、見ていた。高校時代、コーラス部に入っていた時の写真だった。ずいぶんとうれしそうだった。歌うのが、好きな子だった。わたしは、仕事を理由に、この子の発表会をあまり見に行かなかったことを、後悔した。後悔ばかり、していた……。わたしは、この子のために、何かしてやったろうか? 文句などめったに言わない子だった。二十年余りの間、生きていて、本当に幸せだったろうか? ……そんなことばかり考えて……」
 おじいさんは、そこで少し息をついた。環は目を開けた。おじいさんの横顔に、深い影がかぶさっていた。つやつやしていたほおが、幾分ひからびて、引きつれたような深いしわがいくつも見えた。それが寒さのせいとは気づかずに、環は、この人はこんなに年をとっていたのかと、思った。
「……そうやって、考えているうちに、ふと、いい方法を思いついた。……そうだ、自分も死ねばいいじゃないか。向こうには妻もいるから、また三人で一緒に暮らせる。……まるで、散歩に行くみたいに軽い気持ちだった。何かないかとあちこち探すと、カゼ薬が一びんとブランデーがあった。この際眠くなれば何でもよかった。窓を厳重に閉め、ガスのコックを開いた。そして台所の椅子に座って、薬を酒で流し込み、それから、目を閉じた……」
 おじいさんが、ふるえながら、たばこを一息吸うと、たばこの先に小さな明かりの点が、灯った。宵闇が、迫ってきていることに、環はふと気づいた。おかあさんの待つ家のことが頭をよぎった。すると、急に、おなかがきりきり痛むほどの空腹を感じた。そういえば、朝からほとんど何も食べていない。
「どれくらい時間が経ったのか、外ががやがや騒がしいと思ったら、ふと目が開いた。けたたましい音がして、いきなり窓が蹴破られ、だれかがどかどか入って来た。そこまでは覚えてるんだが、あとはわからない。気がつくと病院のベッドの上に寝ていて、見知らぬ看護婦さんが、じっとわたしの顔をのぞきこんでいた」
 おじいさんは、くっくっと思い出し笑いをしながら、たばこを持った手で額をごしごしとこすった。髪がこげやしないかなと、環がなんとなく思っていると、おじいさんは懐から携帯用の灰皿を取り出し、たばこをもみ消した。そしてさっと背筋を伸ばすと、また空を仰いだ。
「……病院で、意識がなかった時、わたしはずっと、夢をみていた」
 短い沈黙が、話を区切った。
「娘の、嫁入りの、夢だった……。奥の部屋で、妻が、娘に花嫁衣装を着せているんだ。わたしは礼服を着て、居間で所在無げに新聞を読んでいた。なんだか、複雑な気持ちでね。しんみりしてはいけないと、無理に気持ちを張って、読めない新聞の字をにらんでた……。そんな時間が、どれくらいあったのか、ふと気づくと、妻が居間に来ていて、何かをしきりに探している。わたしが、何してるんだと聞くと、妻は、『ねえ、赤いバッグを知らない?』と言う。わたしが、なんだ赤いバッグって、と問うと、妻はこう答えた。『赤いバッグがないのよ。せっかく今日のために買っておいたのに』
 わたしは、バッグなんて後でもいいだろうと言ったが、妻はどうしてもあきらめられないらしく、まだ探し続ける。わたしはいらいらしてきて、もう時間だから後にしろ、と言った。すると妻はしぶしぶ奥にひっこんだ。全く、そういうすぐにものをなくす性は、昔とちっとも変わらん……そう、わたしが、ぶつぶつ言いながら新聞に目をもどした時だった。突然、後ろから娘の声がした。
『おとうさん』
 驚いて、ふり向くと、そこは玄関先で、白無垢の綿帽子を着た娘が、開いた戸口の向こうに立って、わたしを見ていた。戸口の向こうには白い光に満ちていて、目を細めなければ、娘の姿がよく見えない。
『おとうさん、長いこと、ありがとう』
 娘はお辞儀をして、言ったように思う。わたしは涙がこみあげてきた。何か言ってやらねばと思うんだが、胸がいっぱいで言葉が出てこない。
『それじゃあ、行ってきますから。おとうさん、あとはお願いしますね』
 どこからか妻の声がした。わたしははっとして、立ち上がった。思わず叫んだ。
『待て! わたしもいく!』
 するとまた、遠いところから、ころころと笑う妻の声が聞こえた。
『娘の嫁ぎ先についていく父親がどこにいますか』
 声はだんだんと遠のいていき、白い光の中で、娘がゆっくりとわたしに背を向けはじめた。
『……待て! 待て!』
 戸口が目の前でゆっくりと閉じていく。わたしは、追いかけようとしたが、どうしても足が言うことをきかない。それもそのはずだ。足もとを見ると、何か赤いひものようなものがしっかりとからみついて、離さない。わたしは焦ってそれをひきちぎろうとするのだが……そのうちに、目が覚めて、病院のベッドの中にいた」
 おじいさんの視線がふと環にもどった。環は思わず笑い返してしまいそうになり、あわてて目をそらした。おじいさんは目を細めると、一言、寒いねえ、もう少しのしんぼうだ、と言って、続けた。
「……この話には、ちょっとしたオチがあるんだよ。実はね、あの時窓を蹴破ってわたしを助けてくれたのは、宅配便の青年だったんだ。おせっかいなやつでね。チャイムを鳴らしたのにだれも出て来ないわ、なにか変なにおいがするわで、これはもしやと思ったんだそうだよ。それにまた、そいつのもって来た荷物が傑作だったんだ。……バッグなんだよ。それも、真っ赤な」
「バッグ?」
「ああ。どうやら娘は、生前、通信販売で赤いバッグを買ってたらしいんだ。革製の小さなやつで、赤くて長いヒモがついていた。……はは、環ちゃんは、これをどう思う?」
 笑いながら、おじいさんは、目頭をこすった。環は目を伏せた。空腹と寒さで、もうほとんど、おじいさんとやり合う気力はなえていた。えれど、それでもやはり、負けたくないという思いが、どこかに燃えかすのように残っていた。頭の中をどうめぐらしても、他に言うことが見つからなくて、環はかすれた声をしぼりだした。
「……それって、自分はほんとのサンタじゃないって意味なの?」
 おじいさんは、それには答えず、視線をはるか遠くに上げると、大きな深呼吸を一つした。再びおじいさんの体が大きくなったような気がして、環はびくりと目を上げた。
「……あの日を境に、わたしの世界は変わった」
 おじいさんは空を見上げながら、まるで何かを抱きしめようとでもするように、両手を大きく広げて、笑っていた。環はけげんな顔をした。
「……娘は、祥子は、わたしに、後悔をさせないようにと、ああして夢に出てきてくれたんだ……わたしは今も、そう信じている。だれが何と言おうと、信じている。だから、わたしも、娘のために、何かをしてやりたい。娘のために。だが、今さら死んでしまった者のために、何ができる? いいや何かあるはずだ。まだ、何かできることが、きっとあるはずだ。だからこそ娘は、わたしを助けてくれたのだ。わたしは考えた。ずっとずっと、考え続けた。そして、ある日、ふと思い出した。娘が勤めていた保育園に、一度だけわたしがサンタ役でかり出された時のことを。子どもたちの喜ぶ顔に囲まれて、わたしを見た時の、娘の誇らしげな、幸せそうな顔……。ああ、これだ。これしかない。わたしは決めた。そして、仕事をやめた。退職金で、赤い車と服を買い、大きな白い袋や、ブーツもそろえた。ひげを伸ばし、名刺を作って、それに、サンタクロースと、書いた……」
 環はため息をついた。頭の中がこんがらがっていた。早く家の中に入りたいという思いと、おじいさんの話を聞きたいという思いが、頭の中でぶつかっていた。
「不思議なことだが、わたしは今も、娘がすぐそばにいるような気がして、しょうがないんだ。ほら、こうやって、目を閉じて、呼びかけると、今でもあの子は答えてくれる。……簡単なことなんだ。ただ、静かな気持ちで、耳を開けば聞こえる。……失ったんじゃない。わからなかっただけなんだ。それがわかった時、わたしには、急に、今まで見えなかったものが、たくさん見えるようになった。……タマキちゃん、君は信じないかも知れない。でもこの世界には、だれかが隠した秘密の声が、光が、無数に隠れている。……見えないたくさんの声が、さまざまな形を通して、わたしたちの心に、いつもプレゼントを送ってくれている。たくさんの見えない思いが、わたしたちを取り巻いて、わたしたちを、大事に、つつんでくれている。愛してくれている……。ひとりぼっちじゃない。ひとりぼっちじゃないんだ。わたしには、本当に、それがわかったんだよ」
 おじいさんは、子どものように真剣な瞳で、環を見た。環は、ぽかんとおじいさんを見かえした。おじいさんの言っていることは、今の環にはほとんど理解できなかったが、なぜか、ふと、湯河香名子の顔が、くっきりと頭にうかんだ。
 突然、胸がぎりぎりと痛みだして、環の口からうめくような声がもれた。涙がぽろぽろとあふれ出した。すると、空から、真っ逆さまに、何かが落ちて来て、自分の中にすとんと納まったような、そんなめまいがして、環はよろよろとその場にうずくまった。
 何かが、砂のように、さらさら崩れていく。環は声を出さないで泣き続けた。そんな環を、つつみこむように、おじいさんの声が、周りを流れた。
「……いつか、そのすべての見えないものの持ち主が、突然わたしの前にあらわれて、わたしに、こう言うとする。
『やあ、やっと会えたね。わたしが、ずっとそばにいたことに、気がついていたかい?』
 わたしはこう返事をする。
『もちろん。ずっと会いたいと思っていたんです』
 すると相手は、こう言うかもしれない。
『そうか。実はね、わたしの本当の名前は、サンタクロースというんだよ』
 そう聞いても、わたしは決して驚かない。むしろこう言うだろう。
『ああ、やっぱり! 前からそうじゃないかと思っていたんです!』
 と……」
 おじいさんの声の余韻が、風にさらわれると、歩と沈黙があらわれて、環は涙でぬれた顔をあげた。意外なほど近くに、おじいさんの笑顔があって、環は息を飲んだ。おじいさんは優しく笑って、環にささやいた。
「今日はクリスマス・イヴだね。君に、プレゼントをあげよう」
「プレゼント……?」
 環が、問い返した。目の前のおじいさんの顔は、さっきまでの人と同一人物とは思えないほど、変わっていた。大きく、暖かな、包みこむような、ほほ笑み。なつかしいような、ずっと前にも、会ったことが、あるような……。
「力だ。小さな、小さな、力。そら、今、君の中に、すうっと、入っていった。まるで、魂が、キャンディを飲みこむみたいに」
 サンタクロースはいたずらっぽく片目をつむると、歌うような声でささやいた。
「力? なんの?」
「……例えば、小さな一つのことばの中にも、それは隠れている。文字に込められた、簡単な意味にも、それは宿っている。目に見えない光のようなもの。聞こえない響きのようなもの。だが、それは確かにある。だれかが君のことを、遠くで思っているように、君のためにそれは、ひそかに燃え続けている……」
「意味が、わからないわ……」
 環はしゃくりあげながら、問い返した。サンタクロースは、ふと目を閉じると、呪文のように、おごそかに言った。
「そうだね。簡単に言おう。それは、大事なときに、大事なことを、思い出す力だ……」
「大事な、ときに……?」
 環は吸い込まれるように、サンタの目を、見た。すると、まるで、真っ白な映画のスクリーンが、突然落ちて来たかのように、環の目の前に、むき出しになった自分の本心が、現れた。
 サンタの瞳は、笑っていた。腕を広げて、待っていた。そして、環は、今すぐにでも、その腕の中に飛び込んでいきたいと、心の底から、思ったのだった。前に、要が言ったように、だっこしてくださいと、いう言葉が、舌の奥から、今にも飛び出そうとしているのを、環はどうしようもなく切ない気持ちで、全身で感じとっていた……。
 だが、同時に、まだその前にやることがあるということにも、気づいていた。
 環は、ふらりと立ち上がった。そして、まるで砂に足をとられるように、ゆっくりと、きびすを返した。後ろでおじいさんが何かを呼びかけたが、応えないまま、環は次第に足を速めて、木枯らしの向こうへ消えていった。

(つづく)



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ばらの”み” 19

2013-11-27 05:44:05 | 月夜の考古学

10 木枯らしの駐車場

 その頃、要は、校門の石柱の陰で冷たい風を避けながら、環を待っていた。
 寒いから教室で待ってろと、環に何度も言われているのだけれど、要はどうしても、雨の日以外は校門で待ってる方がいいと、言い張るのだ。
(ここに立っていると、いろんな音が聞こえるんだ)
 がやがやとさわがしい子どもたちの声が、要の前を流れていく。要は体をゆらして寒さをごまかしながら、一身にその声に耳を傾ける。
――ねえ、これからだれのとこで遊ぶ?
――そしたら先生がさ……なあんていうの!
――アイちゃん、あしたから旅行なんだって。
――宿題多すぎ! こんなにやれねえよ!
これは、川だと、要は思う。たくさんの声や音を集めて、どこか広いところに向かって流れてゆく、川……。
川がどんなものかってことくらい、要は知っている。小さい頃に、家族みんなで山奥にピクニックに行って、その時小川で泳いだことがあるからだ。あの時の水の冷たさ、匂い、味、水底の石の感触、首までつかって、全身で感じた川の流れ……みんな、覚えている。
おかあさんは、要に川がどういうものか、言葉で教えてくれた。川は、空から降ってきた雨水を、山が飲み込んで、それを山が身体の中できれいにしてから吐き出して、それが細い流れになって、そんなのがいっぱい集まって、だんだんと大きな流れになり、やがて海という大きな大きな水のかたまりに、たどりつくのだと……。
でも、おかあさんの言葉よりも、もっと深く、要にはわかっていた。川が、何なのか。どういうものなのか。
あの時の、あの感じ。まるで、遠いはるかな所から、シャワーみたいに何かがいっぺんに落ちてきて、川そのものが、突然要の中に、ぐんと入ってきたような、あの不思議な感じ……。まだ小さい要には、何が自分に起こったのか、はっきりとは理解できなかった。ただ、体中が、びりびりとふるえていた。急に体の芯があらわになって、それに冷や水を浴びせられたような、そんな感じだった。そして気づいた時には、川は、ちゃんと要の中にあったのだ。
「おかあさん、おかあさん! 川がね、要のこと、好きだって!」
 要がおおはしゃぎで言うと、おかあさんの優しい笑い声が、耳元で答えた。
「カナメは、何にでも好かれるのね」
「うん! 要も、川、好き!」
 あの時のことを思い出すと、要はなんだか、うれしいような、泣きたくなるような、ヘンな気持ちになる。いても立ってもいられなくて、ぴょんぴょん跳びあがりたくなったり、大声をあげながら、走りまわりたくなったりもする。
 そして今、要は、校門のかげで、息をひそめ、じっと耳をすます。前を流れる音の川に向かって、要は、見えない網をなげるように、神経のレーダーを張る。そして、雑多なその音の流れの中に、まるでせせらぎの中に混じって、かすかに跳ねる小さな魚のような、きらめく音を探すのが、要は好きなのだ。
 要は、前にここで、今まで聞いたこともないような、とてもきれいな名前を、つかまえかけたことがある。それは、ほんの一瞬、要の耳にひっかかって、そして、まるで耳の中に、かすかな甘いつぶが跳ねるような、そんなせつない感覚だけを残して、またどこかに消えてしまった……。
 あれは、一体、どんな名前だったんだろう? 何度思い返してみても、要には思い出せない。もう少しで、思い出せるような、気がするのに。手を伸ばせば、すぐ届きそうな気さえ、するのに。
(空耳だったのかなあ? ううん、そんなこと、ゼッタイない。ここで待っていれば、きっとまた、見つかるわ。そして、今度こそは、つかまえるんだ!)
 要は、持っていた杖をにぎりしめると、また耳に神経を集中した。
 と、不意に、茶碗が割れるような音をたてて、鈴の音が急速に近づいてきた。
「かなめ! はやく!」
 環は乱暴に要の手を取ると、そのまま強引に引っ張って走りだした。
「お、おねえちゃん!?」
 驚いた要は、思わず環の手を引きもどそうとした。でも環は、まるで引きちぎるような力で、要を引っ張り返した。要は転びそうになりながらも、なんとか体制を取り直し、環について走った。
「おねえちゃん、待って! 痛いよ、痛いよ!」
 要が声をあげても、環は一向に速度をゆるめない。まるで何かにおびえてるみたいに、声もたてずに走り続ける。要は息を切らせながらやっとの思いで走っていたけど、二つ目の信号をわたり切った所で歩道の段差につまずき、ばたんと転んでしまった。
「あっ!」
 要の白杖が手を離れて、転がった。環は要が泣き出すひまも与えずにあわてて抱き起こすと、要の服についた土をぱんぱんとはらい、杖を拾って手渡した。
「さあいくよ」
 そしてまた、有無を言わさず引っ張ろうとする環の手をはらい、要は気持ちを投げた。
「待ってよ。何をそんなに急いでるの? 要、おねえちゃんみたいに速く走れないよ」
 環は黙りこんだ。目の見えない要には、今環がどんな顔をしているのか、当然わからない。ただ、なんとなく、いらいらした気持ちが空気の中に溶け込んできているのが、わかるだけだ。
 環は、きょとんと宙を見つめる妹の目を、憎々しげに見た。胸の底で、不穏な感情の渦が、ぐるぐるうず巻いている。自分一人だけだったら、さっさと家に逃げ帰れるのに。
 環は、こわかった。ほんのさっき、怒りにまかせて自分がしでかしてしまったことが、信じられなかった。まるで、何か別のものが自分にとりついたように、言葉と体が勝手に動いた。いつ、和希の取り巻きたちが自分を追いかけてくるかと思うと、気が気でないのだ。でも、環は、低い声の中に、気持ちをぐっと押さえこんで、言った。
「……ごめん。ゆっくり歩くよ」
 すると要が安心したように笑って、言った。
「うん。でも、ここはどこらへんなの? 要、途中から全然わかんなくなっちゃった」
 環は周囲を見回した。五十メートルほど先に、柿の木のある家が見えた。裸の黒い枝ばかりになった梢に、暗い赤色をした柿の実が、一つだけ残っている。
「もうすぐクロの道だよ」
 環はぼそりと言うと、要の手を握って、ゆっくりと歩きだした。
 あの柿は、どうして残ってるんだろう? 環は、なんとなく柿の実を見すえながら、一歩一歩、踏みしめて、歩いた。じりじりした気持ちの炎が、薄い幕のように自分に張り付き、じわじわと皮膚を焼いているような気がした。そして炎は、環をあざ笑いながら、得体の知れない黒い煙りを、どこかから呼ぼうとしている。
 よく見ると、柿は半身を食われて、まるで何かの遺骸のように半ば朽ちて、枝にぶら下がっていた。環は目を細め、奥歯をかんだ。近づくにしたがい、柿の実は、環の目の中で、次第に大きく、ふくらんでいった。重い風邪の高熱の中で、天井がぐるぐると回って見える時のように、周囲の風景を巻き込みながら、おばけのように、大きくなっていく……。
 不意に、環は立ち止まった。あごをそらして、見あげる黒い実の向こうに、どんよりした灰色の雲が、のしかかっていた。
 突然、頭の奥で、何かが、きんと、はじけ飛んだ。そして、どこか知らない虚空へ、風のように、魂が、さらわれるように、思った。
「おねえちゃん、どうしたの?」
 止まったまま、なかなか歩きださない環に、要が言った。たけど環は答えない。要が環の手をぎゅっとにぎろうとすると、不意に、環が、要の手をふり離した。
「おねえちゃん?」
 突然放り出された要の手が、環を探して空中をさまよった。やがて環の低い声が、少し離れた所から聞こえた。
「……行きなさいよ」
「え?」
 一拍の沈黙が、小石のように要の耳につまった。環の声が、蛇のように周囲をとりまいて、じわりと要のまわりの空気をしめつけた。
「一人で、行きなさいよ。もう、ここにきて半年以上経ってるんだから、一人でだって帰れるでしょ?」
 要は、環が一体何を言っているのか、しばし理解できなかった。ただ、前はすぐそばに感じた環の気配が、今、幕を一枚はさんだ向こうに行ってしまったかのように、遠く感じられた。要はどうしていいかわからなくなり、環の声がする方に手を伸ばした。
「でも、でも……」
 あせる要に、環はくぐもった声で言い続けた。
「いいかげんにしてよ。いつまでも人に甘えないで。現実はそんなに甘くないんだからね。自分でやらなきゃ、他人はだれも助けてくれないのよ。わたしだって、いつまでも、あんたの世話ばかりしてるわけにいかないんだから!」
「だって、クロが……」
 要はとうとうべそをかきはじめた。だけど環はフンと顔をそむけ、豆を投げつけるように冷たい言葉を吐いた。
「クロはつないであるって、何度も言ったでしょ?」
 環は再び要の手を取ると、乱暴に引っ張ってクロの道の前まで連れて行き、要の体を通りの入り口に向かって立たせた。
「ほら、ここがクロの道。こっちにまっすぐ行って、あとは二回道を曲がるだけよ。今までに何回も通ってるんだから、もうわかるわよね。じゃあ、わたし、もう行くから」
「ど、どこ行くの?」
 要は、再び離れた姉の手に何とか取りすがろうとしたが、環は巧みにそれをよけた。
「どこだっていいでしょ! わたしにはわたしの用があるの!」
 それだけ言うと、環は要をおいて、もと来た方向に向かって走りだした。胸の中で、何かがこすれて、悲鳴をあげるような音をたてた。痛みさえ感じたけれど、環は気づかぬふりをした。環は、石をかみつぶそうとでもするように、ぎりぎりと奥歯をかんだ。そして、足を地面から引きちぎるように、走った。途中で、ふとふり向くと、ずいぶんと走ったような気がするのに、まだじっとこっちを見ている要の小さな顔が見えた。環ははっと、要が鈴の音を見ているのだと、気がついた。
「何よ、こんなもの!」
 環はカバンから鈴をもぎとると、それを道端の溝の中に投げ捨てた。そして、そのまま、ふり返らずに走り続けた。
(もう知るもんか!)
 木枯らしが、切るように、環のほおを打った。

 いったい、どこを、どう走ってきたのか、環は覚えていない。何回かめちゃくちゃに道を曲がって、住宅街を突っ切ると、突然目の前に大きな鳥居が現れた。鳥居の向こうには小さな森があり、小ぎれいな参道が、奥の小さな社に向かって、白く伸びていた。
 環はなんとなく鳥居をくぐると、正面のお社の前に、しばしたたずんだ。古びた賽銭箱の向こうで、だれのために作ったのか理解できない建物が、沈黙を中に閉じ込めたまま、静かにたたずんでいる。環は何かに導かれるように賽銭箱の前まで歩いた。石段を上り、目の前に垂れ下がった綱に手をのばすと、拝殿の暗いガラス戸に、ふと自分の顔が映った。
ガラスの中の自分は、きっと口元をかたく結び、見開いた目が風に乱れた髪の奥からぎろりとのぞいていた。まるで山姥みたいだった。見ているうちに気分が悪くなってきて、環はぷいとガラス戸から目をそらした。
 石段をけってお社の前から下りると、砂袋のような心臓が、ぜいぜいとあえいだ。歩きだそうとしたが、どこへ行けばいいのか。環はぼんやりと鳥居の向こうの景色を見た後、ようやく決意して、参道を右にそれ、しばらく砂利をざりざりと踏んで歩いた。やがて、頭の上を常緑樹の梢がおおい、足の下は土の道になった。森の中の獣道のような細い土の筋が、お社の横をゆるやかに回りながら、神社の裏に向かって伸びていた。
 しばらく行くと、神社の森をかこんだ石の列が途切れて、狭い出入り口になっている所に出た。そこから木々におおわれた境内を出ると、不意に頭の上に高い空が広がり、S字型に曲がった細い路地に出た。路地は少し左に行った所で広い道と交差していて、電信柱の向こうにコンビニの派手な看板が見えた。環は少しためらった後、細い路地の方に入って行った。今は、とにかく、一歩でも家から遠い所に行きたいと、思った。
 引っ越してきて半年以上たつけれど、環はこんなにたくさん古い家並みがこの町にあることを、知らなかった。細い舗装道路をはさんで、両脇に小さな木造住宅がぎちぎちと並び、ときどき、とっくの昔に閉業した床屋さんの看板などが、寒空の下でさみしそうにペンキのはげた文字をさらしたりしていた。見知らぬ風景は、不安をかきたてもするが、反面、いきり立っていた自分の心をいくぶん静めるには、役に立った。
 いったい、ここはどこらへんだろう? 今は、何時ごろだろう? そんな思いが、ただ黙々と歩いている自分を、半歩後ろから薄い影のようについてきていた。が、環は、半ばやけくそになって、それに気がつかないようなふりをし続けた。どこに行くつもりなのか、何がやりたいのか、そんなことは考えたくなかった。ただ、今は歩き続けていたいだけなのだ。環は無理にでもそう思いたかった。
 やがて、いいかげん足も痛くなってきたころ、家と家の間の細い道を抜けて、環は広い駐車場に出た。アスファルトの上に描かれた白い枠の並び方を見て、環はふと、ここは前にどこかで見たことがあると、思った。
 駐車場の奥に、二階建の建物があって、あの建物の形にも、見覚えがあるような気がする。どこだったろう? 環がしばし首をかしげて考えていたら、建物の横の、表の広い道に通じた細い入り口の方から、一台の赤い車が駐車場にすべりこんで来るのが見えた。
(あっ!)
 車は、奥の建物に一番近い白い枠の中に、ゆっくりと停まった。その車から下りて来た人を見て、環はやっと気づいた。
(ここ、プチ・ノーレの裏の駐車場だ!)
 赤い車から下りて来たのは、白いヒゲをはやしたおじいさんだった。地味なグレーのスーツを着て、同じグレーのコートを羽織り、頭にはベレー帽をかぶっている。ヒゲは前に見た時の半分もないけれど、絶対見まちがうはずはない。あれは、あの時のサンタクロースだ。
 突然、環の体に、熱い怒りのようなものが走った。環はいきなりわきおこった感情につき動かされるまま、声を投げつけた。
「こんにちは!」
 おじいさんは、驚いたようにふり向いた。見ると、駐車場のすみで、全身トゲだらけといった感じの女の子が、寒い木枯らしの中に仁王立ちになって、こっちをぎりぎりとにらんでいる。髪はクシャクシャで、頬はソーダキャンディのように青かった。
「おやおや、どうしたの?」
 あの時と同じやわらかい声が、環の耳をくすぐった。でも環は、目の前を飛んだ虫をつぶすように、おじいさんがその声に込めた気持ちを、にぎりつぶした。もうその手にのるもんかと、思った。環は、おじいさんの顔を鋭い爪で引っかこうとでもするように、荒々しくわめいた。
「あんた、ほんとはサンタなんかじゃないんでしょ!」
 おじいさんは、また、悲しそうな顔で、環を見た。そして、小さく息を吐いて、行った。
「……思い出した。君はタマキちゃんだね」
「わたし、もう知ってるんだから、あんたの正体!」
「ここは寒いよ。中に入って話をしないかね?」
「ほんとのこと、白状しなさいよ! あんた、ただの人間なんでしょ。難しいこと適当に言って、うそついて、子どもをだましてるんでしょ? サンタなんか、本当はいないんだって、あんただって知ってるんでしょ!」
 こちらが何を言っても、環が聞く耳をもたないことに気づいて、おじいさんは目を落とし、しばし考えこんだ。

(つづく)



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神の空

2013-11-26 17:27:38 | 天然システムへの窓





活動している。

ネガとポジが反転している。

背景が動き始めている。



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ルナ・13

2013-11-26 04:41:44 | 詩集・瑠璃の籠

失ったことを
最大の
財産にしましょう

わたしは
いませんが
いつも
そばにいます

幻と消えた
月は
永遠に 見えませんが
あなたの中に
わたしは 
いつも
笑っています

愛していますよ

もう
いかねばなりませんが
わかれを
いわねばなりませんが

わたしは
きえませんよ
いつまでも
ありますよ
あなたが
いきているかぎり

愛していますよ
永遠に
愛していますよ

おそいなどと
いうことは
ありません
これまでのことよりも
これからの永遠の方が
ずっと長いのですから

馬鹿をやりすぎたからと
後悔ばかりしていては
いけません

間にあうから
すべての愛に
あなたの
真心は

愛していますよ



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ヴェガ・7

2013-11-25 03:23:21 | 詩集・瑠璃の籠

蜘蛛の糸のように
細いものではないよ
わたしの指は

しっかりと
つかまりなさい
たすけてあげよう
あなたがたが
大空を飛べるように

石くれのように
じぶんをみじめなものにしてはいけない
わたしの指に
ふれることもゆるされないほど
あなたがたが
おろかなものならば
なぜ
わたしは
なんども
あなたがたのところに
指をさげてゆくのか

おそれてはいけない
落ちてゆくものと
自分を見限ってはいけない
しっかりとつかまりなさい
たすけてあげよう
あなたがたが
大空にふさわしい
うつくしいものであることを
知るために

たすけてあげよう

さあ
つかまりなさい



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ソル・14

2013-11-24 05:28:27 | 詩集・瑠璃の籠

愛していきなさい
すべてを
愛していきなさい

あらゆる暗黒の波に
洗われる真実を
あらゆる汚染の海に
もてあそばれる
希望を

愛していきなさい
人類よ
あなたがたには
その使命があると
思いなさい

愛しているよ
すべての
あなたがたを
あなたがたの
運命
ゆえに

愛していきなさい
すべてを
愛していきなさい
あらゆる惨い運命を
美しくしてゆくために
あなたがたは あらゆることを
せねばならない

あなたがたは
そういうものなのだ




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ツィー・3

2013-11-23 05:43:42 | 詩集・瑠璃の籠

酔いしれなさい
存分に
味わいなさい
それが 
真実の幸福です

たとえ百万金の富があろうとも
絶世の美をもつ恋人が百人いようとも
千億の軍隊を持つ絶対の王であろうとも
味わうことのできない
ただひとつの
まことのしあわせです

あなたが
しんじつの
あなたである
ただひとり
わたしだけの
わたしである
わたしであること
それが
ただひとつの幸福
唯一の神に等しき
価値を持つ
宝です

存分に味わいなさい
酔いしれなさい
あなたが
真実のあなたである
まことの幸福を

目覚めたものよ
あらゆる愛が
あなたを祝福します
永遠の世界をつくる
自分自身よ
新たなる創造を始めなさい
あなたを
始めなさい

それこそが
永遠の天国
決して失われることのない
金剛不壊の 
光です



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クォーツ

2013-11-22 05:21:15 | 天然システムへの窓

これは練り水晶だが、とてもよい。
持って10年にはなるだろうか。買った当初は、練りであるためか、少々そっけない気がしたが、長い間持っている間に、何かが変わったようだ。

とても美しく、持っているだけで気持ちがすがすがしくなる。ほっと安心する。水晶はよい。透明な水晶の表現する愛は、自分というもののそのままの存在を素直に認めてくれるというものだ。ゆえにこれをもっているものは、やすらぎを感じるのである。だれかが自分をしっかりと認めてくれているという気がする。

練り水晶もよいが、やはり自然の結晶を加工したもののほうがよいだろう。

形というものも、考えねばならない。勾玉という形は少々動的で、落ち着かない気がするが、勇気が出てくる。だが丸いものやまろやかなものは、より安定を感じる。

前にも言ったが、鉱物というものは、目に見えない高い愛を見える形に変換して表現してくれる。よい石は積極的に持ってみた方がよい。感性を磨いていけば、石に、人間には表現できない愛を感じることができるようになる。

それは人間の人生を豊かに高めていくことにつながるだろう。




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