月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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ベネトナシュ・11

2016-10-31 04:18:29 | 詩集・瑠璃の籠

無理に無理を重ね
また無理を重ねて
ようやくなした
月の功のおかげで
人間は自分を知ることができた

自分というものを
正しく生きることによって
正しい幸福に向かって
生き始めることができた

世界に
明るい光が差した
それなのにまだ
人間は月の功を認めない

あれがあったからこそ
今の自分があるだろうに
あれをやったのが
誰なのかを知らないわけではなかろうに

人間が
未だにそれを
振り向こうともしないことを
苦い思いで
皆が見ている

人間はまだ
月の勲を認めようとしない
あれがどんな苦労をして
やってくれたかを
知っているはずなのに

わかっているとも
人間はいやなのだ
月があまりにも美しい女であることが
美しい女が
人類を助けてくれたのだと
そんなことを考えるだけでも
人間はつらいのだ
ああ いやなやつらだ

人間は
人間を
あらゆるものが見ていることを
考えねばならない
人間がやっていることを
神も
天使も
花も
森も
海も
山も
動物も
すべてが
見ていることを




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ズブラ・7

2016-10-30 04:16:18 | 詩集・瑠璃の籠

男は
女の方が
自分よりいいのが
つらいのだ

まだ自分は
男として
何もできていないからだ
男らしいことを
まだ何もできていないのに
自分が男であることが
馬鹿みたいに
きついのだ

だから女に
おまえはおれより
よくなってはいけないと
言い含める
それで
女が男よりよくなるような
機会をことごとく奪う

それでなければ
困るのだ
男が男らしくなければ
女もつらいのに
自分がまだ
立派に男ができない
男であることが
女にばれるのが
きついのだ

それで
嫌になるほど
馬鹿なことばかりやって来て
一層自分の男が
嫌なものになる
それがつらくて
また女を馬鹿にする

おまえはおれより
えらくなってはいけない
おまえはおれより
いいものになってはいけない
もう少し待て
おれは必ずいいことをして
とんでもない男になるから

それでごまかして
ずっとやってきて
とうとう最後まで
男をやらなかった

そういう男が
世界をだめにした




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アルテルフ・6

2016-10-29 04:15:23 | 詩集・瑠璃の籠

心が闇の方に流れていくときの
自分を捕まえなさい

こそ泥を捕まえる
捕り方のように
自分の
おこがましい逃げ心を捕まえるのだ

塩を泥に溶かすように
自分の嫌なものを隠そうと
馬鹿なことをしようとすれば
おまえは闇に流れていく
そして闇に動かされるまま
嫌なことをし続け
ますます自分を嫌なものにしていく

それが耐えられず
嫌なものになった自分を忘れるために
また嫌なことをする
いつまでも抜けられない

馬鹿はそうしてできるものだ

痛ましい自分の心の中に
正義の剣を作り
それを取る白い捕り方をこしらえよ
それを自分で動かし
闇に流れようとする自分の逃げ心を
逮捕するのだ
嫌がるのも無理やり捕まえろ
そうでなければ
おまえは永遠に天の下に戻ることはできない

今のおまえが
嫌になるほどつらいのは
自分というものが
自分にとって
一番嫌なものになっているからだ
それを
白い正義の縄で縛りあげるのだ

馬鹿でない証拠に
やってみよ




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メンカリナン・11

2016-10-28 04:16:03 | 詩集・瑠璃の籠

つらいと思えば
人間の心はすぐに
泥の中に溶けてゆく

いやなものはいやだと言って
言い訳にもならない理由を挙げて
人を馬鹿にし始める

つらいからいやだ
つらいからいやだ
あんなものはいやだ
消えてしまえ

そういって
あらゆるものに
泥を投げつけて
馬鹿馬鹿しい下らぬものに
貶めてやろうとするのだ

なぜそんなにも痛がる
なぜそんなにも
あらゆるものを馬鹿にする

自分が痛いからだ
灰色の忘却で覆い隠した
膿んでいる傷が
あれを見ると
うずき始めるのだ
それがいやだ
いやだと言って
馬鹿になって
泣きわめいて
あらゆるものを攻撃する

そんなことをしていれば
いずれは大変なことになるぞと
神がささやいて
通り過ぎていく
だが人間は耳を貸さない

いつまでも
つらいからいやだ
つらいからいやだ
と言って
馬鹿にし続ける




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ゾスマ・33

2016-10-27 04:15:50 | 詩集・瑠璃の籠

きれいな女が欲しくて
きれいな女ばかり馬鹿にして
きれいな女をみんな殺した
それで
とんでもないことになった
つらいことになりすぎた

馬鹿はあえぐように繰り返す
あれは
つらいことになったから
誰かおれを助けてくれという意味なのだ

だが誰も助けるものはいない
馬鹿め
存分につらい思いをするがいい
おまえたちのせいで
どれだけみんながつらい思いをしたと思うのだ

そう言われても
まだ馬鹿は
つらいことになった
つらいことになったと
繰り返す
誰か助けてくれ
誰か何とかしてくれ
このままではおれたちは
あれらのことを
すべて返さなければならなくなる

けっ
という声が聞こえる
馬鹿ほどあきれたものはない
何度でもあんなことを言って
何にも思うことができないほど
馬鹿になっているのだ
永遠にやっていろ

つらいことになった
つらいことになった
だれか




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アルヤ・18

2016-10-26 04:15:52 | 詩集・瑠璃の籠

あなたがたは非常に
真似が上手です

最もうらやましいと思う
上等な人間を
なめるようにつぶさに観察し
細かいところまで見逃さず
絶妙に真似をして
その人そのものに化ける

王侯貴族が上等であった時代は
王侯貴族に化け
芸能界のスターが上等であった時代は
芸能界のスターに化けた
それは上手に
本物そっくりに化けたのです
あらゆる人がそれに騙された

そしてこの時代
最も上等な人間は
真実の自分だというものになると
あなたがたは
今まで培ってきた模倣の技術を尽くして
本当の自分というものに化けた
なんと愚かしいのか

陰りのない微笑みのくちびるを
絶妙な技術で描いた
明るい澄んだまなざしを
透明に近いベリルを磨いて作った
だがそれは
作れば作るほど
悲しいものになる

本当の自分の
偽物とは
一体何なのですか

あなたがたは
技術でそれを作らねばならないほど
どうしようもなく馬鹿げた
偽物だということなのですか

真正の自己存在は
そんなものではないと
あなたがただとてわからないはずはあるまい

もうやめなさい




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ベネトナシュ・10

2016-10-25 04:16:09 | 詩集・瑠璃の籠

逃げてしまった馬鹿が住む
灰色の家がある
糞のような細い虫がうじゃうじゃと棲み
腐臭がする不細工な蔦に覆われた
豚のような形をした家がある

黒い影のような森の奥に
それはある
どぶのような腐った流れに導かれ
背負わなければならない咎から
ネズミのように逃げた馬鹿が
こそこそと走りこんでくる

ここまでくれば
神も追いかけてこないだろう
しつこい法則の借金取りも
まくことができただろう
何も怖くはない
俺は永遠に何もしないで
ここでとぐろをまいていればいいのだ

だがいつまでも安心してはいられない
ともしびを持った白い蛇が
必ずそいつを追いかけてくる
蛇はその家の狭い戸口を訪れて
こそこそと戸を叩きながら言うのだ
入れてくれ
おれはおまえだ
入れてくれ
おれはおまえだ
長いこと会わなかったが
もう離れてはいられない

だが逃げた馬鹿は
決して戸を開けはしない
開ければすぐに
神に居場所がばれると思っているからだ
蛇は繰り返す
入れてくれ
おれはおまえだ
おれはおまえだ

いやなやつだ
いなくなれ
と馬鹿は蛇に言う
そして今も
永遠にそこに住むつもりで
何もしないでいる




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青の掲示板

2016-10-24 23:24:18 | 星の掲示板


26枚目の掲示板を設定する。






絵/ケース・ファン・ドンゲン





コメント (233)
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スピカ・36

2016-10-24 04:16:55 | 詩集・瑠璃の籠

小賢しい知恵を使って
うまく得しようとしてはいけません
それは
自分がやるのはいやだから
おまえがやれということを
うまい言い方で取り繕って
自分の背負わなければならない荷を
他人に押し付けるということなのです

一度はうまく騙せても
いつまでも同じ手が通用するはずはない
人間は痛い目に会うと勉強するものですから
どんなにうまい手にも
いつかは引っかからなくなる

馬鹿な知恵を使って
自分の背負わなければならない荷を
他人に押し付けると
それで他人を苦しませた分
また自分の荷が増える
それがいやで
また他人に押し付けると
また増える

勉強しなければならないことが
重い石のように積み重なって
山のように膨れ上がる
それを背負うのがいやで
また小さい知恵で他人に押し付けようとする
それでとうとう破たんしても
まだ押し付けようとして
もう誰もだまされない馬鹿な知恵を使おうとして
みなに笑われる

自分の荷は
正直に自分が背負うということが
一番正しく
一番幸福なことなのです
そろそろ馬鹿なことはやめなさい

もうどんなにがんばっても
悪魔の知恵に人間はひっかかりません
見破られてしまったからです
悪魔はただ
人を馬鹿にして
人が弱くなったスキをついて
自分の影を他人に押し付けようとしているのだと

もう誰も
その手に引っかかるものはいないのです




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ベラトリックス・16

2016-10-23 04:15:33 | 詩集・瑠璃の籠

自分らしく生きるのがいいと
あなたがたは簡単に言うが
それがどんなに難しいことか
わかってはいません

暴虐をしたいという欲望を
自分の中に見つけるとき
あなたがたはそれを
どうやって何とかしていくつもりなのか

森を一つ焼き滅ぼしてしまいたい
すべての女を犯してしまいたい
そういう衝動が自分の中にあるのを
見つけるとき
あなたがたは
自分らしく生きるのがいいと言って
それをやるつもりですか

否定しても否定しても
自分の奥からもたげてくる
何者かをつかみ
乱暴に制御し
支配しつくすことができるようになるまで
人間は苦しみつくすのだ
それが自分らしいということです

甘いことを言うのではない
自分らしいなどとほざくやつほど
自分が何者なのかを
まるでわかってはいない

自分のことなど
何もわかっていないうちは
生意気に高いことを言いたがるのではない
良い師について
素直に勉強しなさい
時には自分らしくないことを
死ぬほどやって
自分といういものをかみしめなさい

自分の修行というものは
そういうものです




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