月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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フォマルハウト・13

2019-02-14 04:28:05 | 詩集・瑠璃の籠

深山の奥から声がする
帰って来いと
だれかが呼ぶ声が聞こえる

塔上の舞台で
ないだ金の海を泳いでいる
馬鹿どもよ
もう帰ってきなさい
おまえたちのいるところは
そこではない

おまえたちは
銀の毛皮一枚の姿になって
鹿のように
森の奥で死なねばならないのだ

終了の鐘の音が聞こえないか
逃げることは許されない罪から
逃げ続け逃げ続け
幻の栄光の夢ばかりみて
小鳥のように着飾っていたおまえの
人生の夢が今終わる

人間だったころに
降りていればよかった
まぼろしの金の海から降りて
本当の自分の人生が始まる

あのとき
おまえが首をちぎった
鬼の人形が
遠い奥底で芽生える音を
おまえは何も知らないままに聞く

深山の奥で声がする
遠い昔にお前が落とした罪の種が
大樹となって
ふりかえるお前の見る空を
覆いつくす




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コカブ・17

2019-02-11 04:15:32 | 詩集・瑠璃の籠

たくさんの美女が
氷上で姸を競っても
たくさんの美丈夫が
トラックで健脚を競っても
もう楽しくないのだ
オリンピアードは

金色のメダルを噛むために
表彰台の上で
まぶしいライトをあびるために
馬鹿どもがやっていることを
もう人間は見抜くことができる

ごらん
広い舞台の上で組み合っている
力士たちの麗しい肉体を
あれは絹の肉布団でできたロボットなのだ
たくさんの透明な幽霊たちが
人形のように操っている

盗んだ神の真珠を胸につけ
それがもはや
カラータイマーのように点滅している

ごらん
虚偽のボールを抱いて
踊る美女たちの怯えを
恥の冠をかぶり
魂がどこかへ逃げていこうとする
勝利者たちのゆがんだ笑いを

静かにしていなさい
破滅は星のように静かに降ってくる
一切が苦いことにならないように
競技場は神の手で閉じられる

あきれるほど澄んだ空が
虚偽と真実の二色で彩られた
おかしな人類の祭りを
高みからごらんになっているだろう




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ルナ・52

2019-02-06 05:22:26 | 詩集・瑠璃の籠

あおい ちきゅうの
あいの おかのうえで
うたいましょう
おどりましょう
もうにどと
かなしいことはない

にんげんの いのりが
ひゃくまんの はなになって
うたいます
おどります
もうにどと
かなしいことはない

ああかみさま
このよに
わたしを うんでくださって
ありがとう
ありがとう
なみだがでます

わたしはわたしに
めざめた
わたしがわたしで
あることに
めざめた
にどとかなしいことはない

うれしい こうふくが
はれつしそうなほどに
ふくらんで
さけびます
さけびます
ここにわたしはいると

もうにどと
もうにどと
かなしいことはない




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