ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

Consensus2010日本版新生児蘇生法ガイドラインについて

2010年12月08日 | 周産期医学

新生児の蘇生(NCPR)

コンセンサス2010によるNCPR改訂に関するQ&A

当院では、現在、コンセンサス2005に基づく新生児蘇生法を実施してますが、来年1月に院内スタッフを対象にNCPR2010アップデート講習会を開催し、周知徹底後にコンセンサス2010に基づく新生児蘇生法に移行する予定です。新しいNCPR2010版テキストが年内にも発刊される予定とのことですので、新しいテキストが発売され次第なるべく早く購入し、反復熟読してコンセンサス2010に基づく新生児蘇生法に早く習熟したいと思います。

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Consensus 2010での新生児心肺蘇生法の主な変更点と追加点

1. 出生直後の児の評価項目から“胎便による羊水混濁”は除外された。
たとえ、胎便による羊水混濁があったとしても、その他の状況に問題がなければ、ルーチンケアに進む。ただし、気道開通には十分気をつける必要がある。

2. 胎便による羊水混濁があって児に活気がない時も、ルーチンに気管内吸引する必要はない。
胎便による羊水混濁があって、児に活気が無くても、MAS防止策としての出生後の気管内吸引はルーチン処置から外された。しかし、気管挿管に熟達したスタッフが実施していけないわけではない。

3. ルーチンケアは母親のそばで行う。
ルーチンケアを行う際に母親と別室ではなく母親が児の様子を感じられる場所で行うことを推奨している。カンガルーケアも、児の状態が安定していればスタッフの慎重な監視の元で、行っても支障ない。

4. 酸素化と心拍数の評価にはパルスオキシメータを活用する。
酸素化の評価は右手のパルスオキシメータで行う。SpO2が不明の時は皮膚色で酸素化を評価するが、信頼性は低い。

5. 酸素投与は慎重に行う(パルスオキシメータ、ブレンダー、CPAP)。
心拍数が100/分以上で自発呼吸がしっかりしているが、努力呼吸かつ中心性チアノーゼを認めた場合は、 パルスオキシメータを右手に装着すると共に、まず空気を使用した持続的気道陽圧(CPAP)管理を行う。 マノメータを見ながらCPAP圧を調節する(CPAP圧は5~6cmH20を目標とし、8cmH20をこえないようにする)。 空気によるCPAP管理ができない場合には、フ リーフロー酸素投与を行う。 SpO2が95%以上なら酸素濃度下げるか、または中止する。

6. 正期産児や正期産に近い児での人工呼吸は空気で開始する。
自発呼吸が無いか、喘ぎ呼吸か、心拍数が100/分未満の場合は、正期産に近い児では空気での人工換気を開始するとともに、パルスオキシメータを右手に装着する。

7. アドレナリンの気管内投与する量は0.05~0.1mg/kg。
アドレナリンの気管内投与は静脈ルートを確保するまでのつなぎで、この場合は高用量を注入する。10倍に希釈したボスミンを0.5~1ml/kg。

8. 循環血液増加薬は失血が疑われる場合に限定する。
循環血液増加薬:生理食塩水、乳酸リンゲル液、O型Rh (-) 赤血球。注入量は10ml/kgで、5~10分かけてゆっくり注入する。アルブミンは感染の危険性から勧めない。

9. 蘇生後は低血糖に注意する。

10. 正期産もしくは正期産に近い児で、中等症から重症の低酸素性虚血性脳症の児では、低体温療法を考慮すべきである。

11. 臍帯遅延結紮に関しては、日本では保留とする。
Consensus2010では、「合併症のない正期産児の出生では、児娩出後1分から臍帯拍動の停止までのいずれかの時期での臍帯結紮、あるいは最低1分以上の臍帯遅延結紮は有益である。」として臍帯遅延結紮が推奨された。しかし、黄疸発症の多い日本では保留とする。

新生児蘇生法アルゴリズム(2010日本版)

Consensus2010_2
(クリックすると拡大)

****** 追記

新生児の蘇生(NCPR)

NCPR 基本手技の実習

NCPR ケースシナリオによる実習


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