ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

ある研修医の奇跡の産婦人科入局宣言

2010年12月19日 | 飯田下伊那地域の産科問題

現在、当科は常勤産婦人科医6名、非常勤医師2名、研修医3名(1年目1名、2年目2名)で、産婦人科診療を行ってます。

11月中旬より産婦人科研修中のT医師(2年目研修医)は、これまでの研修期間中に当院各科をローテートし、最後の研修先として産婦人科にまわって来ました。彼はこれまで産婦人科との接点がほとんどなく、後期研修先の候補として産婦人科は全く考えてませんでした。産婦人科研修が始まって約1ヶ月経過し、病棟回診、外来診療、手術、分娩立ち会い、カンファランス、抄読会など、チーム医療の一員として忙しく働いているうちに、来年4月からの後期研修先の候補の一つとして産婦人科を考えてくれるようになり、12月16日(木)には信大産婦人科に施設見学に行きました。

一昨日(12月17日)の病院互助会の大忘年会で、産婦人科医師団による出し物は昨年以上に大いに盛り上がり、アンコールで産婦人科医師団は舞台に呼び戻されました。アンコールで何をするかは全く考えてなかったのですが、T医師が産婦人科入局を決意したらしいという情報は得ていたので、その場のとっさの思いつきで、「実は、この場に産婦人科医がもう一人います。T先生、壇上へ。」とT医師を舞台に呼び込みました。するとT医師は、「研修医のTです。現在、産婦人科研修中ですが、このたび信大産婦人科入局を決意いたしました。長野県の産婦人科医療のために一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします。」と何百人という大勢の聴衆の前で、高らかに産婦人科入局宣言をしてくれました。大歓声があがり、感激で涙が止まりませんでした。もちろん、産婦人科医師団の出し物は、2年連続で最優秀賞を獲得しました。

昨日(12月18日)は信大産婦人科同門会の忘年会があり、教授をはじめ多くの教室員、教室OB、県内各基幹病院の院長、産婦人科部長などの居並ぶ席上で、T医師は産婦人科入局宣言をして研修申込書を教授に直接手渡しました。

彼はこれまで産婦人科医になることは全く考えてこなかったので、言うなればゼロからの出発ですが、これから来年3月までの間に当科において産婦人科学の基礎の基礎を猛特訓したいと思います。

当院初期研修医(たすぎがけも含む)を経て信大産婦人科に入局した者が、最近3年間だけで計5名(平成20年2名、平成21年2名、平成23年1名)となりました。初期研修後に当院産婦人科の後期研修医として直接採用された者も2名(平成19年1名、平成21年1名)います。現在、彼らは若手産婦人科医として、大学病院や県内各地の基幹病院で大活躍中ですが、初期研修を開始した時点では将来の専門科として産婦人科はほとんど考えてなくて、初期研修中にいろいろ迷いに迷った末に、長い時間をかけて最終的に産婦人科に入門することを決断してくれた者が多かったです。今回のT医師ほど短期間のうちに決断に至った例は、これまであまり記憶にありません。人と人との出会いは、まさに奇跡の連続だと思います。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。