ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

NCPR ケースシナリオによる実習

2012年01月13日 | 周産期医学

Neonatal Cardio-Pulmonary Resuscitation

新生児の蘇生(NCPR)

NCPR 基本手技の実習

① 正常新生児1

【設定】母親30歳。0経妊0経産。妊娠経過は異常なし。妊娠40週0日、陣発後に来院した。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー

・ 出生時の情報として何を確認しますか? 
⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:元気に泣いている、筋緊張:良好、成熟度:40週の正期産児。どうしますか? 
⇒ルーチンケアをお母さんのそばで行います

・ ルーチンケアでは何をしますか? 
⇒保温する、顔・口を拭く、体を拭く、タオルを取り除く

・ 気道開通の方法は? 
⇒気道確保の体位をとらせる、分泌物を拭く、必要ならゴム球式吸引器か吸引カテーテルで吸引する

・ その後も元気で泣き、中心性チアノーゼは認めません。心拍も100以上/分あります。どうしますか? 
⇒5分後まで観察を続ける、または、保温に注意しながら母親の元へ

・ 引き続き保温に注意しながら、母親のそばで観察を継続します。

② 正常新生児2(羊水混濁)

【設定】母親36歳。2経妊2経産。妊娠経過は異常なし。41週0日に陣発し、来院した。胎児心拍モニターにて遅発一過性徐脈を認めた。分娩が遷延したため人工破膜したところ、羊水混濁を認めたので分娩立ち合いが要請された。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒ラジアントウォーマー、バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル(12Frまたは14Fr)、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー、喉頭鏡、気管チューブ、固定用テープ

・ 吸引カテーテルのサイズは? 
⇒羊水混濁があるので12~14Fr

・ 出生時の情報として何を確認しますか? 
⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:泣き始めている、筋緊張:手足をよく動かしている、成熟度:41週の正期産児。どうしますか? 
⇒羊水混濁があったので、口・鼻吸引をしてからルーチンケアに入ります

・ ルーチンケアの実施にあたっては、母子関係に配慮して何に気を付けますか? 
⇒母親のそばでルーチンケア

・ 保温に注意しながら、引き続き呼吸症状が出現しないかの観察を行います。

③ 新生児仮死1(軽度呼吸抑制)

【設定】母親28歳。1経妊1経産。妊娠経過は異常なし。妊娠38週5日、陣発後に来院した。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー

・ 出生時の情報として何を確認しますか? 
⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:弱々しく泣いている、筋緊張:良好、成熟度:38週の正期産児。どうしますか? 
⇒啼泣が弱いので蘇生の初期処置を始めます

・ 蘇生の初期処置を行ってください。 ⇒ラジアントウォーマーに収容、体位を整える、顔・口を拭く、体をふく、ぬれたタオルを取り除く

・ 分泌物が多く吸引が必要なようです。吸引カテーテルのサイズは? 
⇒10Fr

・ 吸引の順序は? 
⇒口→鼻

・ まだ弱い啼泣が続いています。何をしますか? 
⇒呼吸刺激

・ 刺激する部位は? 
⇒足底、背中をこする

・ 気道確保のために体位を整える方法は? 
⇒肩枕を使用して気道確保の体位を整える

・ すぐに元気に泣きだしました。

・ 30秒経ちました。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できればSpO2

・ 心拍数の確認法は? 
⇒聴診または臍帯動脈の拍動で

・ 呼吸:元気に泣き出した、心拍数:6秒間に12回。次にどうしますか? 
⇒パルスオキシメータを装着しながら、努力呼吸と中心性チアノーゼの有無をチェックする

・ 努力呼吸も中心性チアノーゼもありません。

・ さらに、30秒経ちました(60秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できるだけSpO2

・ 呼吸:泣いている、心拍数:6秒間に15回。努力呼吸も中心性チアノーゼもなし。この後、どうしますか? 
⇒5分後まで観察を続ける、または、保温に注意しながら母親の元で観察

・ 引き続き保温に注意しながら、観察を続けます。

④ 新生児仮死2(羊水混濁、努力呼吸、中心性チアノーゼ)

【設定】母親32歳。1経妊1経産。妊娠経過は異常なし。41週0日に陣発し、来院した。胎児心拍モニターにて遅発一過性徐脈を認めた。分娩が遷延したため人工破膜したところ、羊水混濁を認めた。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒ラジアントウォーマー、バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル(12Frまたは14Fr)、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー、喉頭鏡、気管チューブ、固定用テープ

・ 出生時の情報として何を確認しますか? 
⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:泣き始めています、筋緊張:手足をだらりとしています、成熟度:41週。どうしますか? 
⇒蘇生の初期処置を始めます

・ 蘇生の初期処置を行ってください。 
⇒ラジアントウォーマーに収容、体位を整える、顔・口を拭く、体をふく、ぬれたタオルを取り除く

・ 口腔内には胎便の混じった羊水がたくさんあります。気道の吸引を行います。吸引カテーテルのサイズは? 
⇒羊水混濁があるので12~14Frと太めのカテーテルを使います。

・ 吸引する部位の順序は? 
⇒口→鼻

・ 頭部が前屈になって気道が保ちにくいようです。どうしますか? 
⇒肩枕を入れます

・ 吸引物がきれいになってきました。どうしますか? 
⇒気道吸引をやめます

・ 吸引中に啼泣が弱くなりました。どうしますか? 
⇒呼吸刺激をします

・ 30秒経ちました。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できればSpO2

・ 呼吸:しっかり啼泣しています、心拍:6秒間に14回。次に、何を確認しますか? 
⇒努力呼吸の有無・中心性チアノーゼの有無

・ 努力呼吸:あり、中心性チアノーゼ:あり。次にどうしますか? 
⇒SpO2モニターを右手に装着し、空気でマスクCPAPを開始します(または、フリーフロー酸素を投与します)

・ マスクCPAPにおけるマノメータの圧は? ⇒5~6cmH2Oを目標(8cmH2Oは超えない)

・ フリーフロー酸素投与における酸素の流量は? 
⇒5~10L/分

・ さらに30秒経ちました(60秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・その後に努力呼吸と中心性チアノーゼとSpO2の値

・ 努力呼吸:なし、中心性チアノーゼ:なし、SpO2:未表示。どうしますか? 
⇒CPAP(またはフリーフロー酸素投与)を徐々に中止する

・ さらに30秒経ちました(90秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・その後に努力呼吸と中心性チアノーゼとSpO2の値

・ 呼吸:しっかりと強く啼泣しています、心拍数:140/分、努力呼吸:なし、SpO2:90%。どうしますか? 
⇒CPAP(またはフリーフロー酸素投与)を中止する

・ その後の方針は? 
⇒繰り返し評価します

・ 蘇生できました。保温に注意しながら、引き続き観察を行います。

⑤ 新生児仮死3(人工呼吸のみ)

【設定】母親31歳。1経妊0経産。妊娠経過は異常なし。陣発し、破水後に来院した。胎児心拍モニターにて変動一過性徐脈を認め、吸引分娩で出生した。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒ラジアントウォーマー、バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー

・ 出生時の情報として何を確認しますか? ⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:弱い啼泣のみ、筋緊張:低下している、成熟度:39週の正期産児。どうしますか? 
⇒蘇生の初期処置を始めます

・ 蘇生の初期処置を行ってください。 
⇒ラジアントウォーマーに収容、体位を整える、顔・口を拭く、体をふく、タオルを取り除く

・ 分泌物が多く吸引が必要のようです。吸引カテーテルのサイズは? 
⇒10Fr

・ 吸引の順序は? ⇒口→鼻

・ 弱い啼泣が続いています。何をしますか? 
⇒呼吸刺激

・ 刺激する部位は? ⇒足底、背中をこする

・ 体位を整える方法は? 
⇒肩枕を使用して気道確保の体位を整える

・ 30秒経ちました。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できればSpO2

・ 心拍数の確認法は? 
⇒聴診または臍帯動脈の拍動で

・ 呼吸:泣いている、心拍数:6秒間に12回。次にどうしますか? 
⇒パルスオキシメータを装着しながら、努力呼吸と中心性チアノーゼの有無をチェックする

・ 努力呼吸:なし、中心性チアノーゼ:あり。次にどうしますか? 
⇒経過観察

・ さらに、30秒経ちました(60秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できるだけSpO2

・ 呼吸:あえぎ呼吸、心拍数:6秒間に12回。口腔内の分泌物も多いようです。どうしますか? ⇒吸引し、その後、人工呼吸を開始する

・ 人工呼吸の適応基準は? 
⇒“無呼吸もしくはあえぎ呼吸”、“心拍100未満/分”“30秒のCPAPか酸素投与後でも努力呼吸と中心性チアノーゼあり”のいずれか

・ 正期産児で人工呼吸を開始するときの酸素濃度は? 
⇒空気で始める

・ さらに、30秒経ちました(90秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:泣き始めている、心拍:パルスオキシメータで150/分、SpO2:80%。この後、どうしますか? 
⇒人工呼吸を中止し経過をみます。

・ さらに、30秒経ちました(120秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:元気に泣いている、心拍:パルスオキシメータで150/分、SpO2:85%。この後、どうしますか? 
⇒呼吸とSpO2モニターを観察します

・ さらに、30秒経ちました(150秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:しっかり呼吸し努力呼吸なし、心拍:パルスオキシメータで140/分、SpO2:90%。その後の方針は? 
⇒呼吸とSpO2モニターの観察を継続します

・ 引き続き保温に注意しながら、モニターを継続します。

⑥ 新生児仮死4(人工呼吸+胸骨圧迫)

【設定】母親34歳。0経妊0経産。妊娠経過は異常なし。39週2日、陣発後に来院した。破水後、臍帯下垂となり、緊急帝王切開となった。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒ラジアントウォーマー、バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー、喉頭鏡、気管チューブ、固定用テープ

・ 出生時の情報として何を確認しますか? 
⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:なし、筋緊張:低下している、成熟度:39週の正期産児。どうしますか? 
⇒蘇生の初期処置を始めます

・ 蘇生の初期処置を行ってください。 
⇒ラジアントウォーマーに収容、体位を整える、顔・口を拭く、体をふく、タオルを取り除く

・ 口腔・咽頭内に分泌物を多く認めます。吸引カテーテルのサイズは? 
⇒10Fr

・ 吸引の順序は? 
⇒口→鼻

・ まだ呼吸が出現しません。何をしますか? 
⇒呼吸刺激

・ 刺激する部位は? 
⇒足底、背中をこする

・ 体位を整える方法は? 
⇒肩枕を使用して気道確保の体位を整える

・ 依然として呼吸は出現しません。

・ 30秒経ちました。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できればSpO2

・ 呼吸:呼吸なし、心拍:6秒間に7回

・ 心拍数の確認法は? 
⇒聴診または臍帯動脈の拍動で

・ 次にどうしますか? 
⇒人工呼吸を開始しながら、パルスオキシメータを装着する。

・ 人工呼吸の適応基準は? 
⇒“無呼吸もしくはあえぎ呼吸”、“心拍100未満/分”“30秒のCPAPか酸素投与後でも努力呼吸と中心性チアノーゼあり”のいずれか

・ 人工呼吸を開始するときの酸素濃度は? 
⇒正期産児では空気で開始する

・ 人工呼吸の回数と圧の目安は? 
⇒1分間に40~60回、最初の数回は20~30cmH2O、その後は胸の上がりを見て

・ さらに、30秒経ちました(60秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できるだけSpO2

・ 呼吸:呼吸なし、心拍:6秒に5回。どうしますか? 
⇒高濃度酸素での人工呼吸と胸骨圧迫を開始します

・ 胸骨圧迫の適応基準は? 
⇒人工呼吸をしても心拍が60未満/分

・ 蘇生者の立つ位置は? 
⇒児の頭側と体の横に

・ 指をあてる位置は? 
⇒胸骨の下1/3

・ 圧迫の深さは? 
⇒胸郭前後径の1/3

・ 胸骨圧迫と人工呼吸の連動の仕方は? 
⇒胸骨圧迫3回に換気1回、1サイクル2秒

・ さらに30秒経ちました(90秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:ごくわずかに呼吸を認める、心拍:パルスオキシメータで90/分、SpO2:70%。どうしますか? 
⇒胸骨圧迫は中止し、人工呼吸継続

・ さらに、30秒経ちました(120秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:弱い呼吸を認める、心拍:パルスオキシメータで120/分、SpO2:80%。どうしますか? 
⇒SpO2の値によって酸素濃度を調整しながら人工呼吸継続

・ さらに30秒経ちました(150秒)。何を確認しますか?
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:泣き始めている、心拍:パルスオキシメータで150/分、SpO2:90%。どうしますか? 
⇒人工呼吸を中止し、人工呼吸時の酸素濃度でCPAP(あるいはフリーフロー酸素投与)を行い、引き続きSpO2の値で酸素濃度を調整します

・ さらに30秒経ちました(180秒)。何を確認しますか?
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:元気に泣いている、心拍:パルスオキシメータで150/分、SpO2:95%。どうしますか?
⇒CPAP(あるいはフリーフロー酸素投与)は中止し、呼吸とパルスオキシメータの評価を継続

・ 蘇生できましたが、その後も注意深い経過観察が必要ですから、小児科医師と相談して収容先を決めます。

⑦ 新生児仮死5(気管吸引に熟達した小児科医が蘇生を行う場合のバリエーション)

【設定】母親38歳。2経妊0経産、妊娠高血圧症候群を合併しFGRを認めた。38週3日に陣発し来院した。心拍数モニターにて基線細変動消失を認めた。破水したところ羊水混濁著明であった。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒ラジアントウォーマー、バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー、喉頭鏡、気管チューブ、固定用テープ

・ 出生時の情報として何を確認しますか? 
⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:あえぎ呼吸、筋緊張:低下し手足はだらんとしている、成熟度:38週の正期産児で体重は2kgと推定される。どうしますか? 
⇒蘇生の初期処置を始めます

・ 蘇生の初期処置を行ってください。 
⇒ラジアントウォーマーに収容、体位を整える、顔・口を拭く、体を拭く、口・鼻の吸引を行う

・ 吸引カテーテルのサイズは? 
⇒羊水混濁があったので12Frまたは14Fr

・ 吸引の順序は? 
⇒口→鼻

・ たくさん胎便が気道に残っている様子なので気管挿管をし、気管吸引をします。(気管挿管して吸引してよいが、ルーチンに行う必要はない。)

・ 気管チューブの太さは? 
⇒3.0mm

・ 気管チューブの深さは? 
⇒左口角8cm

・ 気管吸引カテーテルの太さは? 
⇒6Fr

・ 気管吸引物は胎便で汚染されています。気管吸引の後、吸引物はクリアになりました。筋緊張は低下し、呼吸も弱いままです。その後どうしますか? 
⇒呼吸刺激し、パルスオキシメータを装着する

・ 刺激する部位は? 
⇒足底、背中をこする

・ 30秒経ちました。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:呼吸なし、心拍:6秒間に8回、気管吸引物はクリアです。次にどうしますか? 
⇒空気で人工呼吸を開始する

・ 人工呼吸の適応基準は? 
⇒無呼吸またはあえぎ呼吸、心拍100未満/分、CPAPかフリーフロー酸素投与でも努力呼吸と中心性チアノーゼが続く

・ 人工呼吸の回数と圧の目安は? 
⇒1分間に40~60回、最初の数回は20~30cmH20、その後は胸の上がりを見て

・ さらに、30秒経ちました(60秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:呼吸なし、心拍:聴診上、心拍は6秒に5回。どうしますか? 
⇒人工呼吸をしてもさらに心拍が低下しているので、高濃度酸素を加えた人工呼吸に加え、胸骨圧迫を開始する

・ 胸骨圧迫の適応基準は? 
⇒人工呼吸をしても心拍が60未満/分

・ 蘇生者の立つ位置は? 
⇒児の頭側と体の横に

・ 胸骨圧迫で指を置く位置は? 
⇒胸骨の下1/3

・ 圧迫の深さは? 
⇒胸郭前後径の1/3

・ 胸骨圧迫と人工呼吸の連動の仕方は? 
⇒胸骨圧迫3回に換気1回、1サイクル2秒

・ さらに、30秒経ちました(90秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:弱い呼吸を認める、心拍:パルスオキシメータで90/分、SpO2:60%。どうしますか?
⇒胸骨圧迫は中止し、高濃度酸素のままで人工呼吸継続

・ 胸骨圧迫の中止基準は? 
⇒心拍60以上/分

・ さらに、30秒経ちました(120秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:弱い陥没呼吸を認める、心拍:120/分、SpO2:80%。どうしますか? 
⇒呼吸は不十分なので人工呼吸を継続する

・ 人工呼吸中に確認することは? 
⇒気管チューブの深さ、胸の上がり、含気、体位、圧の確認

・ 酸素の流量は? 
⇒5~10L/分

・ さらに30秒経ちました(150秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:自発呼吸はまだ弱いまま、心拍:120/分、SpO2:100%。この後、どうしますか?
⇒SpO2が95%以下になるように酸素濃度を下げて人工呼吸継続

・ 人工呼吸管理を含めた集中管理が必要です。直ちにNICUに搬送します。

⑧ 新生児仮死6(人工呼吸+胸骨圧迫+ボスミン投与)

【設定】母親34歳。1経妊1経産。妊娠32週より妊娠高血圧症候群を合併し、減塩食・安静にて管理された。妊娠37週1日。強い腹痛と出血を認め、来院した。エコーにて常位胎盤早期剥離が疑われ、緊急帝王切開となった。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒ラジアントウォーマー、バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー、喉頭鏡、気管チューブ、固定用テープ

・ 出生時の情報として何を確認しますか? ⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:呼吸なし、筋緊張:低下している、成熟度:37週の成熟児(推定体重は約2.5kg)。どうしますか?
⇒蘇生の初期処置を始めます

・ 蘇生の初期処置を行ってください。 
⇒ラジアントウォーマーに収容、体位を整える、顔・口を拭く、体をふく、ぬれたタオルを取り除く

・ 口腔・咽頭内に血性羊水を多く認めます。吸引カテーテルのサイズは?
⇒10Fr(or 8Fr)

・ 吸引の順序は? 
⇒口→鼻

・ まだ呼吸が出現しません。何をしますか? 
⇒呼吸刺激

・ 刺激する部位は? 
⇒足底、背中をこする

・ 体位を整える方法は? 
⇒肩枕を使用して気道確保の体位を整える

・ 依然として呼吸は出現しません。

・ 30秒経ちました。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できればSpO2

・ 呼吸:呼吸なし、心拍:6秒間に5回

・ 心拍数の確認法は? 
⇒聴診または臍帯動脈の拍動で

・ 次にどうしますか? 
⇒人工呼吸を開始しながら、パルスオキシメータを装着する。

・ 人工呼吸の適応基準は? 
⇒“無呼吸もしくはあえぎ呼吸”、“心拍100未満/分”“30秒のCPAPか酸素投与後でも努力呼吸と中心性チアノーゼあり”のいずれか

・ 人工呼吸を開始するときの酸素濃度は? 
⇒正期産児では空気で開始する

・ 胸が上がっていません。確認することは? 
⇒体位、マスクのリーク、分泌物、換気圧など

・ 人工呼吸の回数と圧の目安は? 
⇒1分間に40~60回、最初の数回は20~30cmH2O、その後は胸の上がりを見て

・ 胸が上がってきました。

・ 人工呼吸をしながら徐脈が続けばどうしますか? 
⇒ブレンダーの酸素濃度を上げます

・ さらに、30秒経ちました(60秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:呼吸なし、心拍:6秒に4回、SpO2:未表示。どうしますか? 
⇒高濃度酸素での人工呼吸に加え、胸骨圧迫を開始します

・ 胸骨圧迫の適応基準は? 
⇒人工呼吸をしても心拍が60未満/分

・ 胸骨圧迫中の酸素濃度は? 
⇒高濃度酸素(80%以上)とします

・ 蘇生者の立つ位置は? 
⇒児の頭側と体の横に

・ 指をあてる位置は? 
⇒胸骨の下1/3

・ 圧迫の深さは? 
⇒胸郭前後径の1/3

・ 胸骨圧迫と人工呼吸の連動の仕方は? 
⇒胸骨圧迫3回に換気1回、1サイクル2秒

・ さらに30秒経ちました(90秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:まだ呼吸は出てこない、心拍:パルスオキシメータで40/分、SpO2:50%。どうしますか? 
⇒人工呼吸と胸骨圧迫を再開

・ 人工呼吸と胸骨圧迫を行っても心拍が改善しない場合、何を確認しますか? 
⇒胸郭の動き、酸素濃度、胸骨圧迫の位置、人工呼吸と胸骨圧迫のリズム

・ SpO2も低いので酸素濃度は高濃度のままにします。確認した事項に注意して蘇生を続ける。

・ さらに、30秒経ちました(120秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:まだ呼吸は出てこない、心拍:パルスオキシメータで40/分、SpO2:50%。適切な人工呼吸、胸骨圧迫でも改善傾向がありません。次にどうしますか? 
⇒気管挿管の準備をして、その間は高濃度での人工呼吸と胸骨圧迫を続ける。

・ 気管チューブの内径は? 
⇒3.0mm(先端まで同径のものがよい)

・ 気管チューブの深さは?推定体重は2.5kgです。 
⇒左口角8.5cm(2.5+6)

・ 気管チューブの位置確認は? 
⇒換気状態、両肺野の聴診、CO2モニター

・ 気管吸引カテーテルの太さは? 
⇒6Fr

・ 胸骨圧迫と人工呼吸の連動の仕方は? 
⇒胸骨圧迫3回に換気1回、1サイクル2秒

・ 20秒以内に挿管できなければ、再びバッグ・マスクで十分換気を行ってから再施行する。

・ さらに30秒経ちました(150秒)。何を確認しますか?
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:まだ呼吸は出てきません、心拍:パルスオキシメータで50/分、SpO2:60%。次に、どうしますか? 
⇒人工呼吸と胸骨圧迫を続けながらボスミン?を投与します

・ ボスミン?の投与経路はどうしますか? 
⇒臍カテーテル、または静脈ラインから

・ 静注するボスミン?の濃度、投与量は? 
⇒生食で10倍に希釈したものを、0.1~0.3mL/kg

・ 静脈ライン確保前に投与したい場合は? 
⇒気管内投与

・ 気管内投与の場合のボスミン?の濃度、投与量は? 
⇒生食で10倍に希釈したものを、0.5~1.0mL/kg

・ ボスミン?の投与は、人工呼吸と胸骨圧迫を続けながら行う。

・ さらに30秒経ちました(180秒)。何を確認しますか?
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:わずかに呼吸が出現している、心拍:パルスオキシメータで80/分、SpO2:80%。この後、どうしますか? 
⇒胸骨圧迫を中止し、SpO2の値によって酸素濃度を調整しながら人工呼吸を継続する

・ 胸骨圧迫の中止基準は? 
⇒心拍数60以上/分

・ さらに30秒経ちました(210秒)。何を確認しますか?
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:弱い呼吸のみ、心拍:パルスオキシメータで140/分、SpO2:95%。この後、どうしますか? 
⇒吸入酸素濃度を下げながら人工呼吸を続けます。

・ 人工呼吸管理を含めた集中治療が必要です。人工呼吸しながらNICUに搬送します。