ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

NCPR 基本手技の実習

2012年01月11日 | 周産期医学

Neonatal Cardio-Pulmonary Resuscitation

新生児の蘇生(NCPR)

① 蘇生の準備

・ ラジアントウォーマー
・ バスタオル(数枚)
・ 肩枕用ハンドタオル
・ ゴム球式吸引器
・ 吸引カテーテル(6Fr、8Fr、10Fr、12Fr、14Fr)
・ 吸引圧
・ 酸素、ブレンダー
・ 新生児用聴診器
・ パルスオキシメータと新生児用プローベ
・ 蘇生用フェイスマスク(丸型、鼻合わせ型)
・ 自己膨張式バッグ(閉鎖状酸素リザーバー付)
・ 流量膨張式バッグ(マノメータ付) →漏れの確認
・ 気管チューブ(Endotracheal tube: ETT)
 (内径2.5mm、3mm、3.5mm)
・ 呼気CO2検知器
・ 新生児用喉頭鏡(直型)ブレードNo.0(新生児用)、No.00(低出生体重児用)
・ 気管チューブ固定用テープとはさみ

②出生時における新生児の状態評価

出生直後の児のチェックポイント:
 1. 正期産児か? 
 2. 呼吸や啼泣は良好か? 
 3. 筋緊張は良好か?
以上の3項目を評価し、いずれかに問題があれば、蘇生の初期処置を開始する。

コンセンサス2010では、出生時に蘇生処置が必要かどうかを判定するための評価項目から、“羊水の胎便混濁”は除外された。

③ルーチンケア

出生時の3項目(正期産児、呼吸または啼泣、筋緊張)に異常がなければ、ルーチンケアを母親のそばで行う。

ルーチンケア:
 保温に配慮する
 気道を確保する体位をとらせる
 皮膚の羊水を拭き取る
以上の処置を行ってから、皮膚色を評価する。

鼻や口の分泌物はガーゼやタオルでぬぐえばよく、必ずしも吸引は必要ない。乱暴に咽頭を吸引すると、咽頭痙攣や迷走神経反射による徐脈、自発呼吸の遅延をもたらすことがある。

コンセンサス2010では、ルーチンケアのために母と児を分離すべきではないことが改めて強調されている。カンガルーケア(羊水をぬぐって皮膚を乾かした新生児を、母親の胸部に肌と肌が触れ合うように抱いてバスタオルなどで覆う方法)には保温効果があり、また早期の母子接触は愛着形成にも有用であるが、スタッフによる注意深い観察が必要である。

④蘇生の初期処置

出生直後のチェックポイントの3項目(正期産児、呼吸または啼泣、筋緊張)のいずれかに異常があれば蘇生の初期処置を開始する。

蘇生の初期処置:
 1. 保温し、皮膚の羊水を拭き取る
 2. 気道確保を行う(気道確保の体位と、胎便除去を含む必要に応じての吸引)
 3. 優しく刺激する
 4. 再度気道確保の体位をとる

羊水の胎便混濁の有無によるアルゴリズムの流れの変更はなくなった。初期処置の一つとして、胎便で混濁した羊水の気道からの除去を行う。

● 気道確保(体位と必要に応じての吸引)

・ 仮死の徴候のある新生児は、直ちに仰臥位でsniffing positionをとらせる。肩枕を入れると気道確保の体位をとりやすい。

・ 気道確保の体位で呼吸が弱々しい場合や、努力性呼吸があるにもかかわらず十分な換気が得られない場合は、気道の閉塞が考えられるので吸引を行う。分泌物が少なく呼吸に問題がなければ、ルーチンに吸引する必要はない。

・ 吸引が必要な場合には、ゴム球式吸引器(バルブシリンジ)または吸引カテーテルで、まず口腔を吸引し、次いで鼻腔を吸引する。

・ 吸引カテーテルのサイズは羊水混濁の有無によって変更する。羊水の胎便混濁があった場合は、太めの吸引カテーテル(12または14Fr)、羊水が清明な場合は、正期産児で10Fr、低出生体重児では児の大きさに応じて8Frまたは6Frの吸引カテーテルを用いる。

● 皮膚刺激

・ 乾いたタオルで皮膚を拭く。(低体温防止、呼吸誘発のための皮膚刺激)

・ 温められた別のタオルを用いて児の背部、体幹、あるいは四肢を優しくこする。

・ これで自発呼吸が誘発されなければ、児の足底を平手で2、3回叩いたり指先で弾いたりする。背部を優しくこすってもよい。(足底刺激、背中刺激)

⑤バッグ・マスクを用いた人工呼吸

コンセンサス2010では以下の点が強調されている。

1. 過剰な酸素投与(特に100%酸素)はできるだけ避ける。 →パルスオキシメータとブレンダーの活用

2. 出生後10分間は正常新生児でも中心性チアノーゼがあっても異常とはいえない。酸素投与の目安は右手に付けたパルスオキシメータのSpO2が以下の値未満の場合である。 
 生後 1分 …… SpO2の下限値 60% 
 生後 3分 …… SpO2の下限値 70% 
 生後 5分 …… SpO2の下限値 80% 
 生後10分 …… SpO2の下限値 90%

なお、SpO2の値が95%以上になったら、吸入酸素は徐々に下げて中止する。

3. 蘇生の初期処置の後(出生後30秒)で、無呼吸(ないしあえぎ呼吸)か心拍数100/分未満ならば直ちに人工呼吸を開始する。正期産かそれに近い児では空気で開始する。32週未満の児では30~40%の低濃度酸素で開始する。空気や低濃度酸素で開始しても心拍数が下がり続けたり、SpO2の上昇傾向が認められなければ、吸入酸素濃度を上げる(自己膨張式バッグを使用しているときはリザーバーを装着する)。

4. 蘇生の初期処置の後(出生後30秒)で、自発呼吸がしっかりあって心拍が100/分以上ならば、中心性チアノーゼがあっても、努力呼吸(陥没呼吸・呻吟・多呼吸)を伴わなければ、あわてる必要はない。パルスオキシメータを右手に装着して、SpO2が上記2.の値未満ならその時点で空気を用いた持続的気道陽圧CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)またはフリーフロー酸素の投与を開始すればよい。

5. 蘇生の初期処置の後(出生後30秒)で、自発呼吸があり、心拍が100/分以上であるが、努力呼吸(陥没呼吸・呻吟・多呼吸)と中心性チアノーゼの両者が同時に認められる場合は、パルスオキシメータを右手に装着し、まずは空気を用いたCPAPを優先する。空気を用いたCPAPがどうしても適応できないような状況では、フリーフロー酸素の投与を考慮する。CPAPの施行や、フリーフロー酸素の投与にもかかわらず、出生後60秒の評価で努力呼吸と中心性チアノーゼの両者が持続する場合は人工呼吸を開始する。

6. 以上の対応で、中心性チアノーゼのみや努力呼吸のみが続く場合は、原因検索(チアノーゼ性心疾患、RDS、新生児一過性多呼吸)を進めながら、CPAPを検討する。

手技の練習:

1. パルスオキシメータの新生児用プローベを右手掌か右手首に装着する方法を練習させる。

2. インストラクターの指に新生児用プローベを装着して、パルスオキシメータの心拍数とSpO2が表示されるのに時間がかかることをデモする。体動などで脈波が検出されないと数字が信用できないことを、プローベを装着した指を動かして実演する。

3. ブレンダーの吸入酸素濃度を空気に設定して、マノメータ付き流量膨張式バッグを用いてマスクCPAPを実演し、受講生に実施してもらう。マノメータの圧は5~6cmH2Oを目標(8cmH2Oは超えない)とする。人形だと口→食道に圧が逃げてCPAP圧がかかりにくいことがあるので、インストラクターが喉頭を外から少し圧迫するか、受講生にマスクを強く顔に密着させるように指導する。メトロノームで40/分くらいの音を聞かせながら行うと教育効果が上がる。

4. フリーフロー酸素投与法を、酸素チューブをつかんだインストラクターの手をカップ状にして実演する。5~10L/分の流量で使用する。ブレンダーがないときは、顔に近づけると高濃度酸素投与になり、5~6cm離すと低濃度酸素投与になることを説明する。流量膨張式バッグではフリーフロー酸素投与ができるが、自己膨張式バッグではできないことを説明する。

5. ブレンダーがない施設の受講者の場合は、
ⅰ)酸素チューブを付けた自己膨張式バッグで、リザーバーを付けずに、低濃度酸素投与のバッグ・マスク換気の練習を全員にさせる。
ⅱ)次いで、酸素チューブを付けた自己膨張式バッグにリザーバーを付けて、高濃度酸素酸素投与のバッグ・マスク換気の練習を全員にさせる。

● “IC”クランプ法の要点

・ マスクは眼より下、顎より上できっちり鼻と口をカバーできるものを使用する。

・ 眼にかかると眼損傷を、顎より外に出てしまうとガス漏れを起こす。

・ 親指と人差し指を用いた“C”ではマスクを顔面に密着させることに注意する。

・ 肩枕を入れるとマスクを“C”で顔面に密着させるだけでもバッグ・マスク換気が容易となる。

・ 小児では“E”は気道確保のため下顎から頤までに3つの指をかけるが、新生児では中指のみで下顎を引き上げるようにする。⇒新生児では“IC”テクニック

・ 中指は下顎の骨の部分に指をかけ、決して咽頭のやわらかい部分を圧迫しないようにする(舌を押し上げて気道閉塞を起こしやすいため)。

● 自己膨張式バッグ

・ 使用が容易である。

・ リザーバーがないと40%未満の低濃度酸素投与、リザーバーをつけて酸素流量を上げると高濃度酸素と使い分けができる。

・ フリーフロー酸素の投与は容易でない(特殊な閉鎖式のリザーバーがないと難しい)。マスクCPAPも特殊な装置がないとできない。

・ リリーフ弁があるので、一定の圧(35cmH2Oや40cmH2Oなど)以上はかからない。

● 流量膨張式バッグ

・ 使用に熟練を要する(難しい)。

・ 高濃度酸素(100%酸素)を含めてブレンダーで調整されたとおりの濃度の酸素を投与できる。

・ フリーフロー酸素の投与ができる。

・ 使用になれると肺のコンプライアンスや気道抵抗がわかる。

・ マノメータを使用しないと過剰の圧をかける危険性がある。

・ 圧調整のためにはリークシステムと流量を調整する必要がある。

・ マスクが密着してないとバギングができない(これは「マスクが密着していないことがすぐわかる」という点ではメリットでもある)。

・ マノメータを使用してマスクCPAPができる。

バッグ・マスク人工呼吸では1回の換気に約1.0秒をかけ、胸上がりを必ず確認する。

流量膨張式バッグに流す酸素の量は、新生児では5~10L/分くらいが適量である。流量膨張式バッグでは必ず圧マノメータに接続し、換気圧をチェックする必要がある。出生直後の空気呼吸開始時には20~30cmH2Oあるいはそれ以上の高い圧と長めの吸気時間が必要とされることもある。効果的な換気かどうかは、圧を指標とするよりも児の胸部の動きのほうが信頼できる。人工呼吸の回数は40~60回/分(胸骨圧迫を併用する場合は30回/分)が必要である。

90%の仮死児は気道確保とバッグ・マスク人工呼吸で蘇生ができるので、周産期医療関係者にバッグ・マスク人工呼吸を体得させることがNCPR講習会の一番重要な行動目標である。

⑥胸骨圧迫

● 胸骨圧迫の適応:

人工呼吸を開始して30秒後に心拍数を確認し、

・ 心拍数が100/分以上で、自発呼吸が認められれば人工呼吸は中止してよい。

・ 心拍数が60/分以上100/未満の場合は、人工呼吸が適切に行われているかどうかを確認する。また、気管挿管による人工呼吸を検討する。

・ 心拍数が60/分未満であれば、胸骨圧迫を開始する。

● 胸骨圧迫の方法:

胸骨圧迫は胸骨上で両側乳頭を結ぶ線のすぐ下方の部分(胸骨の下部1/3の所)を圧迫する。圧迫位置が低すぎると肝臓の損傷を起こすことがある。圧迫期は胸壁の厚さの1/3程度がへこむ強さで、圧迫を反復する。圧迫解除期にも指は胸壁から離さない。

胸郭包み込み両拇指圧迫法(両拇指法)を第一選択とするが、蘇生施行者が一人で人工呼吸と胸骨圧迫を行わねばならない場合や臍カテーテルをとる場合などには、2本指圧迫法(2本指法)に切り替える必要がある。

⑦人工呼吸と胸骨圧迫の組み合わせ

胸骨圧迫:人工呼吸=3:1

3回の胸骨圧迫と1回の人工呼吸を1サイクルとし、1サイクルは2秒で行う。1分間に胸骨圧迫90回、人工呼吸30回。30秒ごとに6秒間だけ心拍数をチェックし、心拍数60/分以上を保持できるまで胸骨圧迫を続ける。

胸骨圧迫中は体動のため正確なSpO2モニターが困難なので、心拍上昇が確認されるまで高濃度酸素投与で人工呼吸を施行してよい。

胸骨圧迫の術者が「イチ、ニ、サン、バッグ」と声を出してペースメーカーをする。

まず両拇指法とバッグ・マスク人工呼吸を組み合わせて受講生全員に実施してもらい、一巡したら、2本指法とバッグ・マスク人工呼吸を組み合わせて受講生全員に実施してもらう。できればメトロノームで120/分の音を聴かせながら実施する。

⑧薬物投与とその準備

心肺蘇生を必要とする新生児の99%の児は、有効な人工呼吸とこれに同期した十分な深さと速度で行われた胸骨圧迫により改善が得られるが、1000人の新生児中2人以下という低い確率であるが、30秒間の有効な人工呼吸と、それに続く30秒間の有効な人工呼吸とこれに同期した十分な深さと速度で行われた胸骨圧迫による蘇生を行っても、心拍数60未満/分が持続する新生児に対して薬物による蘇生が行われる。薬物投与時も、有効な人工呼吸とこれに同期した十分な深さと速度で行われた胸骨圧迫による蘇生は継続されていなくてはならない。

◆ アドレナリン(ボスミン?:0.1%アドレナリン):

・ ボスミン?は、「30秒間の有効な人工呼吸とこれに同期した十分な深さと速度で行われた胸骨圧迫による蘇生を行っても、心拍数60未満/分が持続する場合」に投与の適応となる。

・ 投与経路は静注(臍帯静脈が第一選択)が推奨され、投与量は10倍希釈として0.1~0.3 mL/kgで、急速静注で投与する。

・ ボスミン?は10倍希釈液(生理食塩水で希釈)を使用する。あらかじめ10mLのシリンジに生理食塩水で10倍に希釈した液10mLを準備し、それを1mLのシリンジに分け、すぐに使用できるようにしておく。

・ ボスミン?の気管内投与は静脈ライン確保までの投与法とする。投与量は静注法よりも高用量で、10倍希釈液(生理食塩水で希釈)として0.5~1.0 mL/kgである。10mLのシリンジに生理食塩水で10倍に希釈した液10mLのうち静注用に1mLとった残りの9mLを準備しておく。

・ 気管内投与の場合は、シリンジに栄養チューブを付けてETT内に投与(one shot)する方法と、シリンジでETTに直接投与後に生理食塩水でフラッシュする方法の2つがある。

・ 気管内投与後は気管での吸収のために、速やかに人工呼吸を開始する。

・ 投与後30秒ごとに心拍数をチェックし、心拍数が60未満/分であれば3~5分ごとに上記範囲量の10倍希釈ボスミン?を投与する。

循環血液増量剤

常位胎盤早期剥離、前置胎盤、臍帯からの出血、母児間輸血症候群、双胎間輸血症候群などの病歴があり、また病歴は不明でも明らかな循環血液量の減少によるショックのために十分な蘇生の効果が得られていないと考えられる場合には、循環血液増量剤の使用を考慮する。使用が推奨されている循環血液増量剤は生理食塩水で、その他、乳酸リンゲル液、また胎児期から貧血が考えられる場合にはO型Rh(-)の濃厚赤血球も使用可能である。

◆ 生理食塩水

・ ボスミン?の投与を行っても心拍が回復せず、循環血液量の不足が考えられる場合が投与の適応となる。

・ 投与する場合は10 mL/kgをゆっくりと静注する(5~10分くらいかけて)

・ 臍帯静脈カテーテルや抹消静脈ラインから投与する。

◆ 炭酸水素ナトリウム(メイロン?)

・ ボスミン?や生理食塩水の投与を行っても心拍の改善が得られない場合に、可能ならば血液ガス分析を行って、pCO2が高くないことと、代謝性アシドーシスがあることを確認した後に投与する。最近は副作用が強調されているので、どうしても他の処置で改善しない場合に限って投与する。

・ 浸透圧が高いため、蒸留水で2倍に希釈して、臍帯静脈カテーテルや抹消静脈ラインから投与する。

・ 投与する場合は希釈液にして2~4 mL/kgをゆっくりと静注する(1分間に1mL位の速度で)。

⑨気管挿管とその介助

新生児の気道の解剖のポイント:

・ 気道が大人に比べて絶対的に狭くて短いため、気道が容易に閉塞しやすい。 →気管挿管が難しい。

・ 声門が前上方(腹側かつ頭側)に位置していて喉頭展開しにくい。喉頭蓋も大きく垂れ下がっている。 →挿管時に頸部を過伸展してはいけない。肩枕を入れていた場合は、肩枕をとるか、頭の下に敷く。

・ 喉頭蓋ごと喉頭鏡で持ち上げる。喉頭鏡を「てこ」にして展開してはいけない(「釘抜きをするときのように手首をかえす」のではなくて「下顎を持ち上げる」ことを強調する)。

・ 舌が口腔の容積に占める割合が大きい。 →舌が原因となる気道閉塞もありうる。挿管時はきちんと舌をよけないと挿管できない。

・ 輪状軟骨が唯一の硬いリングとなっており、その上部の組織は脆弱であるため容易に閉塞しやすい。

気管挿管の要点:

・ 児の頭側に立つ(児に向かって、まっすぐに立つ)。

・ 児の体位を整える(児の足元に立った介助者が、肩を押さえながら、両手で児の頭を固定する)。

・ 新生児では後頭部が突出している場合が多く、外耳孔と肩の前面が床に平行に同じ高さになるように体位を整えると喉頭展開しやすくなる。

・ 肩枕ははずすか、頭の下にタオルを敷く。

・ バッグ・マスクで十分に換気を行う。

・ 必要であれば、喉頭展開前に咽頭~喉頭の吸引を行う。

・ 口元酸素を流しながら喉頭展開の処置に移る。

・ 直型ブレードを用いる。

・ 右口角から舌をよけながらブレードを挿入する。

・ 喉頭蓋が大きく垂れ下がっているのを確認する。

・ ブレードで喉頭蓋を押さえ込んで、被裂部(声門開口部)を確認する。

・ 喉頭展開時に喉頭が見えにくい場合には、介助者に輪状軟骨を外から軽く圧迫するか、右口角を外側に引っ張ってもらうと見えやすくなる場合がある。分泌物が貯留していて声門が見えにくいときは吸引する。

・ 児の体軸に斜め45度を保ったまま、平行にブレードを拳上させる。手首での「てこ」運動をしない(「釘抜き様に手首をかえす」のではなくて、「下顎を持ち上げる」ことを強調する)。

・ ETTを挿入する(滑りをよくして気道を傷つけないために、チューブの先端外周には、清潔な水で濡らしておくかキシロカインゼリーを塗布する)。

・ このときETTの声門マーカー(声帯指標線)が声門を通過するのを確認する。

・ ETTの固定では、ブルーラインが頭側に向くようにして、口角において“体重(kg)+6cm”の深さを固定の目安にする。

・ 1回の気管挿管の処置は20秒以内に行う。それよりも時間がかかった場合は、いったん処置を中止し、バッグ・マスクで換気を行った後、再度、気管挿管を行う。

・ 挿管が難しいときは、スタイレットを使用してもかまわない。その場合は、スタイレットの先端がETTの先から出ないようにし、ETTの口端でスタイレットを曲げて押し込みすぎるのを防ぎ、ETTの先から2~3cmのあたりを少し曲げてカーブをつける。

● 気管挿管後の位置確認の方法

初期の確認

・ 人工呼吸で胸の上がり方に左右差がない。

・ 呼吸音に左右差がない(左右前胸部、左右腋窩部、上腹部の5点でチェック)。

・ 上腹部で呼吸音が聞こえない。換気による胃の膨満はない。

・ 呼気時にチューブ内に水蒸気が認められる(内面がくもる)。

二次的な確認

・ 心拍数が増加する。

・ SpO2が改善する。

・ 筋緊張、体動、皮膚色の改善を認める。

・ 呼気CO2検知器(カプノメーターなど)により呼気CO2が検出される。心停止している場合は呼気中にCO2が検出されないので注意が必要である。

◆ まとめ

・ 過剰な酸素投与を避けるために、蘇生が必要な児ではパルスオキシメータの新生児用プローベを右手に装着しましょう。

・ 新生児の気道の解剖の特徴を理解しましょう。

・ 確実なバッグ・マスクは何より大切です。

・ 肩枕+ICクランプ法により気道を確保しやすい。

・ 自己膨張式バッグと流量膨張式バッグの利点・欠点を理解したうえで、その扱いに習熟しましょう。

・ 胸骨圧迫とバッグ・マスクはリズムが大切です。

・ 正期産では、まず空気で人工呼吸しましょう。

・ 低濃度酸素投与法と高濃度酸素投与法を区別して行いましょう。

・ 気管挿管では喉頭蓋を持ち上げること、「釘抜き様に手首をかえして、てこ様動作をしない」ことが大事です。

・ 気管挿管では介助者の役割が非常に重要です。特に児の頭部をしっかり固定してsniffing positionをとらせると、処置がスムーズに進みます。

・ 術者から求められたときに速やかにETTや吸引カテーテルを渡すことも大切です。

・ 気管挿管後のETT先端の位置確認も忘れずに行いましょう。