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ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

NICU維持が焦点に/日製病院産科問題 (朝日新聞)

2009年01月31日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

3月いっぱいで産科医全員の派遣元大学への引き揚げが決まっている日立製作所日立総合病院(日製病院)で、NICUの維持ができるかどうかが問題になっているそうです。また、院内の助産師25人を中心に院内助産所の準備が進められているそうです。

いろいろ難しい問題があるとは思いますが、常識的に考えれば、病院に残留した25人の助産師、NICUのスタッフを有効活用するためには、残されたスタッフが散り散りにいなくなってしまう前に、近隣医療圏の産科医・小児科医が多く勤務する施設と合流し、集約化により強力な周産期センターを作るしかないと思われます。

その施設で、産科や小児科などの若手医師達をじっくりと育てていく必要があります。

今、全国的に産科や小児科の集約化が進んでいるところですが、周産期医療では産科と小児科との緊密な連携が不可欠ですから、産科の集約先と小児科の集約先が同じ施設でないと全く意味がないと思います。若手医師の研修のためにも、大勢の指導医がいて、症例数の多い病院の方が望ましいと思います。

患者さんにとっては、病院へのアクセスはかなり不便になってしまいますが、県内のどこにも受け入れ施設がなくなってしまう最悪の事態よりは、多少遠かろうとも、県内に確実に受け入れてくれる施設が存在する方がはるかにいいと思います。

もはや、一つの病院、一つの医療圏の努力だけでこの問題を解決しようとしても難しく、やはり、地元大学や、県、国などの強力なバックアップ、リーダーシップが必要だと思われます。

日立製作所日立総合病院:産科医1人が残留 分娩を継続へ(毎日新聞)

医師確保険しく 来春産科医0の日製病院(朝日新聞)

日立総合病院 分娩予約一時中止

****** 朝日新聞、茨城、2009年1月30日

NICU維持が焦点に/日製病院産科問題

 3月いっぱいで東大病院派遣の産科医全員の引き揚げが決まっている日立市の日立製作所日立総合病院(日製病院)では、県北地域で唯一同病院にあるNICU(新生児集中治療管理室)の機能が維持できるかどうかが焦点になっている。NICUは産科との連携が基本だが、産科の大幅縮小でその必要性が問われることになりかねないからだ。地元産科医らは存続を強く求め、県に働きかけている。【大塚隆】

 産科と新生児科が協力して出産前後の母子を診る周産期医療では、ハイリスクの妊婦や新生児に24時間態勢で対応し、NICU設置が不可欠となる。県内では水戸済生会総合病院・県立こども病院など3施設が県の総合周産期母子医療センターに指定され、即応態勢がとられている。

 07年に県内最多の出産を取り扱った日製病院は、総合センターのない県北でそれに準じた役割を担ってきた。県は同病院を県北医療圏の地域周産期母子医療センター(中核)に指定している。

 東大病院から派遣されていた医師は4人全員が今年度末で引き揚げる予定になっている。病院側は産科医の確保に奔走しているが、産科の大幅な縮小は避けられず、現在は助産師を中心にした院内助産所開設の準備が進んでいる。

 同病院は基本的には「県北の地域医療を担う病院としてNICUを存続させたい」(岡裕爾院長)との考え。同市で唯一産科を開業する瀬尾医院の瀬尾文洋医師も「周産期医療に不可欠」と言い、昨年末に市と県の医師会を通じ、県に同病院のNICU存続を求める要望書を出した。

 同病院の地域周産期母子医療センター指定について、山田保典・県医療対策課長は「病院側の意向を踏まえつつ、県全体の周産期医療をどうするかを考えたい」と話す。十分な産科医確保ができなかった場合、NICUの機能を別の病院に移し、県全体として集約することも視野に検討しているとみられる。

 NICUを運営する同病院新生児科は、筑波大から常勤医3人の派遣を受けている。筑波大も産科医確保の状況を見ながら、4月以降の医師派遣について検討する模様だ。

 県北地域の現状については「日製病院のNICUがなくなるとハイリスクを負う母子の搬送に時間がかかり、命にかかわる。水戸地域はすでに限界に近く、県北からの移送を受け入れるとパンクする可能性もある」(県央の医師)と存続を要望する声が強い。

 日製病院では現在、院内の助産師約25人を中心に正常分娩(ぶん・べん)に対応する院内助産所開設の準備を進めている。だが、4月以降の医師の態勢が明確にならないため、助産所開設時期や昨年8月から休止中の分娩受付をいつ再開するか決めていない。「新年度に助産所を開設するとしても最初は里帰り分娩への対応が中心になるのではないか」との見方も院内に出ており、部分的な再開になる可能性もある。

(朝日新聞、茨城、2009年1月30日)