ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

「医師には社会的常識がかなり欠落している人が多い」」「これだけ医師不足が激しくなってくれば、責任は医

2008年11月21日 | インポート

コメント(私見):

産科、小児科、救急などを中心に、全国いたるところで医療崩壊がだんだん現実化しています。医師不足の問題は、早急に解決すべき国家的課題です。国の主導のもとに、県、市町村、大学病院、一般病院、診療所などが足並みをそろえて、一致協力してこの問題を解決する方向に向かっていく必要があります。それなのに、国のリーダーの認識が、『現在の医師不足は、医師の常識欠落が原因!』ということでは、いつまでたってもこの問題は解決しないと思います。医療の担い手である医師達の全面的な協力が得られなければ、この問題を解決することはできないと思います。

****** 毎日新聞・社説、2008年11月21日

「医師は常識欠落」 麻生さん「失言」では済まない

 全国都道府県知事会議で医師不足への対応を問われた麻生太郎首相が「自分で病院を経営しているから言うわけではないが、医者の確保は大変だ。(医師には)社会的常識がかなり欠落している人が多い」と述べた。地方の医師不足の原因が医師側にあることを指摘したかったとみられるが、乱暴な発言だと言わざるを得ない。これには医師の団体だけでなく、首相を支える政府・与党からも批判や苦言が相次いだ。異例のことである。

 麻生首相はさらに「(医師不足が)激しくなれば、責任はお宅ら(医師)の話ではないのか。お医者さんを『減らせ、減らせ』と言ったのは、どなたでしたかという話も申し上げた」と追い打ちをかけた。

 医師の団体が医師抑制を働きかけたことは事実だが、それを後押ししたのは自民党だった。医師不足を医師側の責任と主張するのなら、客観的な事実を示すべきだ。自らの病院経営の中で感じたことを話したのだとすれば説得力がない。首相発言は医師不足の現状を打開する手がかりになるどころか、混乱をもたらすだけだ。こういう発言こそ「社会的常識」を欠いたものと指摘せざるをえない。

 麻生首相は同知事会議の後、記者団に「まともなお医者さんが不快な思いをしたというのであれば、申し訳ありません」と釈明、発言の翌日、首相官邸を訪れた日本医師会の唐沢祥人会長に対し「言葉遣いが不適切であり、撤回したい」と陳謝した。一日で撤回に追い込まれるような発言は二度とすべきではない。

 言わなくてもいいことを軽々に口にし、医師不足にどう対応するのかという、国民が一番聞きたいことを言わないというのは、おかしい。これでは医療に対する国民の不安を取り除くことはできない。

 医師不足を招いた歴史的な経過を踏まえて原因を分析し、具体的な解消策を示すのが政府の仕事である。麻生首相には発言を改めて謝罪し、医師不足対策の先頭に立ってもらいたい。妊婦が受け入れを断られて死亡した問題が起きるなど、医師不足の解消は直ちに取り組むべき問題だからだ。

 人手不足で過重な勤務をしながら、現場で患者のために日夜働いている医師はたくさんいる。こうした医師らの努力を麻生発言が無にしてしまうことにならないか、心配だ。「失言」だと釈明して済む問題ではない。医師不足という「未曽有の危機」を麻生首相はどこまで理解しているのだろうか、と言いたくなる。

 医師不足対策は緊急の課題である。国、都道府県、そして病院や診療所の医師らが足並みをそろえて動き出さないと、問題は解決しない。医師の理解と協力が何よりも必要なときに、あえて神経を逆なでするような不用意な言葉を投げつけてしまった責任は重い。

(毎日新聞・社説、2008年11月21日)

****** 共同通信、2008年11月21日

医師批判発言を陳謝 首相「不適切」と撤回 日医会長の抗議受け

 麻生太郎首相は20日午後、日本医師会(日医)の唐沢祥人(からさわ・よしひと)会長と官邸で会い「医師は社会常識がかなり欠落している人が多い」との自身の発言について陳謝し、撤回した。唐沢氏が「耐え難い環境で医療現場を懸命に守る医師の真摯(しんし)な努力を踏みにじるもので、奈落の底に突き落とされた思いだ」と抗議。首相は「言葉の使い方が不適切だった。発言を撤回し、謝罪する」と述べた。

 自民党を支持する有力団体からの抗議で発言の陳謝と撤回を余儀なくされ、首相の軽率な言動があらためて浮き彫りになった。日医内には「何が何でも自民党を支えるわけではない」(中川俊男(なかがわ・としお)常任理事)との意見があり、衆院解散・総選挙に向け支援態勢にも影響しかねない状況だ。

 面会は日医側が要求した。同席した竹嶋康弘(たけしま・やすひろ)副会長によると、唐沢会長が「特定の職業を名指しして、根拠なしに差別するものであり、激しい憤りを禁じ得ない」「日本の医療を根底から否定するものだ」とする抗議文を読み上げ、首相に手渡した。

 首相は19日の全国知事会議で、医師不足に関し「(医師には)社会的常識がかなり欠落している人が多い。ものすごく価値観が違う」と発言。その後「まともなお医者さんが不快な思いをしたというのであれば、申し訳ない」と述べたが、日医には首相発言に対し、会員からメールなどで数十件の抗議が寄せられたという。

(共同通信、2008年11月21日)

****** 共同通信、2008年11月21日

首相の資質疑われる発言 全国医師連盟も批判

 勤務医らでつくる全国医師連盟(黒川衛(くろかわ・まもる)代表)は20日、麻生太郎首相の「(医師には)社会的常識がかなり欠落している人が多い」との発言について「今後、一国の総理大臣としての資質を疑われるような発言は控えるよう要望する」とのコメントを発表した。

 コメントは、発言について「過労や経営的苦境の中で、患者のために努力している勤務医、開業医を大きく落胆させた」と指摘。「発言後に陳謝したことを差し引いても看過できない」と批判している。

(共同通信、2008年11月21日)

****** 共同通信、2008年11月21日

不愉快な思いさせた 舛添氏も首相発言で陳謝

 舛添要一厚生労働相は20日夜、麻生太郎首相の「(医師には)社会的常識がかなり欠落している人が多い」との発言について「他の政治家の発言を私が謝罪するわけにはいかないが、皆さまに不愉快な思いをおかけしたことをおわびする。その分いい仕事をして挽回(ばんかい)したい」と陳謝した。

 周産期医療と救急医療の連携を検討する厚生労働省専門家会合で述べた。会合は、医師を中心に検討を進めている。

(共同通信、2008年11月21日)

****** 朝日新聞、2008年11月21日

医師会抗議「医療を根底から否定」、首相は陳謝

 医師は「社会的常識がかなり欠落している人が多い」と発言したことをめぐり、日本医師会の唐沢祥人会長が20日、首相官邸に麻生首相を訪ね、「発言は日本の医療を根底から否定するものであり、国民を失望させた」などとする抗議文を手渡した。首相は「発言を撤回します」と述べ、陳謝した。

 唐沢会長は「医師の真摯(しんし)な努力を踏みにじるものであり、奈落の底に突き落とされた思いだ」などと、強い不快感を表明。首相は「『価値観が違う』ことを強調して、『社会的常識が欠落する』という言葉が出てきたわけで、言葉の使い方が不適切だった」と釈明した。

 また、茨城、栃木両県医師会も同日、それぞれ首相あてに「政治家として否、社会人として持つべき常識すら欠如している」「関係者の努力を無にし、日夜身を削っている医師の神経を逆なでする」などとする抗議文を送った。

 首相は同日夜、官邸で記者団に「(唐沢会長には)丁寧に真意のほどを説明して、理解を求めるようにさせていただいたということだと思う」と語った。一方で「具体的な発言の内容について、私の方からその内容をあなたに説明するつもりはありません」と述べ、唐沢会長とのやりとりの詳細は明かさなかった。

(朝日新聞、2008年11月21日)

****** 日本医師会、2008年11月20日
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20081120.pdf

                 平成20年11月20日
内閣総理大臣
麻生 太郎 殿

     麻生総理の発言に対する抗議

               社団法人 日本医師会
                  会長 唐澤 祥人

 昨日開催された全国都道府県知事会議において、麻生総理は医師について「社会的常識がかなり欠落している人が多い」と発言された。
 この発言は、特定の職業を名指しして、根拠なしに差別するものであり、激しい憤りを禁じえない。
 全国の医師会員を代表して、また国民の一人として断じてこれを認めることはできない。総理には、発言を撤回し、誠意をもって謝罪をしていただきたい。

 いま、医療現場は、常識では考えられないほどの過酷な労働環境にある。国民は、医療を受けられなくなるとの不安に怯え、救急、産科、小児科を中心に医療崩壊が現実化してい ることは、総理も認識されているはずである。
 日本の医療は、医療現場の献身的な努力と、厳しい現状の中でも国民が医師をはじめとした医療関係者を信頼してくれることにより、ぎりぎりのところで持ちこたえられているの である。
 こういう中にあって、総理の発言は、日本の医療を根底から否定するものであり、国民を失望させた。
 先般の二階経済産業大臣の発言に続き、国政を代表する立場にある総理のあまりにも認識を欠いた軽率な発言は、耐え難い環境で医療現場を懸命に守る医師の真摯な努力を踏みに じるものであり、奈落の底に突き落とされた思いである。
このままでは、日本の医療の再生はますます困難になる。

 総理自身が熟考された上で、あやまちを認め、認識をあらためられることを強く求める。

(日本医師会、2008年11月20日)

**** 全国保険医団体連合会、2008年11月20日
http://hodanren.doc-net.or.jp/news/teigen/081120asou.html

医師削減を決めた過去の閣議決定を無視する麻生首相の暴言に断固抗議する

                     2008年11月20日
                 全国保険医団体連合会
                     会長 住江 憲勇

 いま日本は、政府による長年の医療費抑制政策とその帰結である医師不足によって、地域医療が崩壊しつつある。とくに救急医療、産科医療、小児救急に顕著に現れている。ところが、麻生太郎首相は11月19日、全国知事会議で、地方の医師不足に関連し、「地方の病院での医者の確保の話しだが、自分で病院経営しているから言うわけじゃないけど大変だ。社会的常識がかなり欠落している人が多いんで」とのべ、地域医療を守っている医師を誹謗しただけでなく、医師不足の責任について、「責任はおたくら医者の話じゃないんですか。しかも医者の数を減らせ減らせ、多過ぎると言ったのはどなたでしったっけ」とも発言し、医師団体に責任転嫁した。二階俊博経済産業相が10日にのべた、「何よりも医者のモラルの問題だと思いますよ。忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」との暴言と軌を一にするものである。今日の深刻な医師不足を解決しようとする姿勢がまったく見えない麻生首相は行政府の長として失格と言わざるを得ない。

 そもそも、政府は1982年に医師数の抑制を閣議決定し、97年には再び「医学部定員の削減に取り組む」ことを閣議決定した。その結果、今日OECD加盟30カ国中27位で、加盟国の平均値と比べると日本の医師数は13万人も不足し、診療現場に深刻な医師不足問題を生じることになった。これは明らかな失政である。

 政府は今年になって医師の養成数を増やす方針に転換したものの、その内容はまったく不十分であり、現状の医師不足を解決できる内容ではない。就労医師数目標を最低でもOECD諸国平均値以上にするために、医学部定員を大幅に増加するとともに、毎年2200億円の社会保障費の削減を同時に止め、医療費抑制政策を転換させるべきである。

(全国保険医団体連合会、2008年11月20日)

****** 全国医師連盟、2008年11月20日
http://www.doctor2007.com/asou1.html

麻生総理大臣の「社会常識欠落の医師多い」発言に関する報道に際して、全国医師連盟の見解

麻生総理大臣の「社会常識欠落の医師多い」発言は、過労や経営的苦境の中で、 患者さんの為に努力している勤務医・開業医を大きく落胆させました。

多くの医療関係者や超党派国会議員などが、医療の再生に向かって論議し行動しています。 そんな中、現役閣僚である二階経済産業大臣の『医師のモラル』発言に引き続き、 このような発言がなされたことは、発言後に陳謝したことを差し引いても、看過できるものではありません。

一方で、残りの発言には、医師削減を主張してきた団体と、最終的に医師削減政策を推し進めてきた 厚生労働行政に対する苦言や、ハイリスク診療科へのインセンティブの導入の提案などがみられます。 これは、これまでの厚生労働行政における問題の核心を突いており、今後の方向性を示す発言と捉えることもできます。

麻生総理大臣には、今後、一国の総理大臣としての資質を疑われるような発言は控えた上で、 医療崩壊を加速する医療費抑制を転換し、診療環境改善をはかる医療政策を推進することで、 リーダーシップを取っていくことを要望します。

   平成20年11月20日 全国医師連盟執行部

(全国医師連盟、2008年11月20日)

****** 時事通信、2008年11月19日

「社会常識欠けた医者多い」=麻生首相が発言、すぐに陳謝

 麻生太郎首相は19日、首相官邸で開かれた全国知事会議で、地方の医師不足問題に関連して「社会的常識がかなり欠落している人(医者)が多い。とにかくものすごく価値判断が違う」などと述べた。首相はその後、記者団に「まともな医者が不快な思いをしたというのであれば申し訳ない」と陳謝したが、医師の資質を批判したとも受け取れる発言で、今後波紋を呼びそうだ。

 同会議で首相は、「地方病院での医者の確保は、自分で病院経営しているから言うわけじゃないが大変だ」と強調。その上で、「小児科、婦人科が猛烈に問題だ。急患が多いところは皆、(医師の)人がいなくなる」「これだけ(医師不足が)激しくなってくれば、責任は医者の(方にある)話じゃないか」と述べ、産婦人科に対する診療報酬加算などの対応が不十分との認識を示した。

 問題の発言は、医師の多くが産婦人科などでの過重な勤務を敬遠して開業医に流れる現状に、知事側が懸念を示したのに対して飛び出した。首相は同日夜、記者団に「医者は友達にもいっぱいいるが、おれと波長が合わねえのが多い」としながらも、「そういう(社会常識の欠落という)意味では全くない」と釈明した。

(時事通信、2008年11月19日)

****** 時事通信、2008年11月19日

麻生首相こそ社会常識欠落=鳩山氏

 民主党の鳩山由紀夫幹事長は19日夜、麻生太郎首相が地方の医師不足問題に関連し「社会的常識がかなり欠落している人(医者)が多い」などと発言したことについて、「首相の方こそ社会的常識が欠落している」と批判した。都内で記者団に語った。

 これに関連して同党幹部は、「東京も医師不足は深刻で、大都市への偏在が問題という意味なら、失言というより認識不足だ」と指摘。その上で「全国の医者を敵に回す発言で、(支持団体である)医師会の自民党離れに拍車が掛かるのではないか」と述べた。

(時事通信、2008年11月19日)

****** 時事通信、2008年11月20日

首相発言は不適切と官房長官=医師不足問題、自民・大島氏も苦言

 河村建夫官房長官は20日午前の記者会見で、医師不足問題に関連して「社会的常識がかなり欠落している人(医師)が多い」とした麻生太郎首相の発言について「医師不足、特に周産期医療で不幸な事例も起きた責めをすべて医師団に(負わせる)という問題でもない」と述べ、首相発言は不適切だとの認識を示した。

 河村長官は「(首相自身が)謝罪したので、あれこれ言うつもりはない」としつつも、「政府は一丸となって、産科・小児科、救急医療の医師を確保しなきゃいけない。勤務医環境の改善が必要だ」と強調した。

 また、自民党の大島理森国対委員長も同日午前の党正副国対委員長会議で、「昨日から首相のいろいろな発言があったが、首相に対して『言葉は大切である』と申し上げなければならないこともある」と述べ、首相は発言に注意を払うべきだと強調した。大島氏は総裁選で首相を支持するなど盟友関係にあり、異例の苦言を呈した形だ。 

 首相は19日の全国知事会議で「社会的常識の欠落」に言及したほか、「これだけ(不足が)激しくなってくれば、責任は医者の(方にある)話じゃないか」などと発言。その後、記者団に「まともな医者が不快な思いをしたというのであれば申し訳ない」と釈明した。

(時事通信、2008年11月20日)

****** 時事通信、2008年11月20日

「軽さ」際立つ首相発言=失言と軌道修正-与野党が批判

 麻生太郎首相の不用意な発言に与野党から批判が相次いでいる。首相は20日、日本医師会(日医)の唐沢祥人会長に、「社会的常識がかなり欠落している人が(医師に)多い」などとした自身の発言を撤回、陳謝したが、与党内からも首相への苦言は続出。政策に関しても前言撤回や軌道修正が目立ち、与党内には首相発言の「軽さ」を懸念する声が強まっている。

 「まったく言葉の使い方が不適切だった」。首相は同日午後、「医師常識欠落」発言の抗議に訪れた日医の唐沢会長に頭を下げた。

 民主党の菅直人代表代行は同日の記者会見で「常識がないのは首相の方ではないか。本人が非常識だ」と批判した。与党からも「指導者の一言一句に国民の注意が集まる。影響を考えて発言していただきたきたい」(津島雄二元厚相)などと厳しい声が出た。

 日医はもともと自民党の有力支持団体だが、茨城県医師連盟が次期衆院選での民主党支持を打ち出すなど、自民離れの動きがある。今回の首相発言で、自民党内には「医師会が自民党を支援しない口実になる」(閣僚経験者)と影響を気にする声もある。

 生煮えの政策をぶち上げてしまう首相への不満も政府・与党内には根強い。道路特定財源の一般財源化に伴って地方に配分する1兆円について、首相は19日は地方交付税で配る方針を表明したが、自民党道路族が反発するや、20日は「自由に使えるなら何だっていい」とあっさり軌道修正した。

 定額給付金の所得制限の是非をめぐっても、政府・与党決定まで首相の発言が二転三転したのは記憶に新しい。民主党の菅氏は「いろんな発言で迷走している『迷走総理』だ。首相としての資質を欠いている」と指摘した。与党内には「(首相は)トップダウンでアピールしたいのだろうが、やることなすこと全部裏目。このままでは政権は駄目だ」と弱気な声も出始めている。

(時事通信、2008年11月20日)

****** 時事通信、2008年11月20日

「医師常識欠落」発言を撤回=日医会長に陳謝-麻生首相

 麻生太郎首相は20日午後、日本医師会(日医)の唐沢祥人会長と首相官邸で会い、「社会的常識がかなり欠落している人が(医師に)多い」などとした自身の発言について、「価値観が違うことを強調したかったが、まったく言葉の使い方が不適切だった」などと陳謝し、撤回した。

 会談を受け、首相は同日夜、首相官邸で記者団に対し「丁寧に真意を説明し理解をいただいた」と述べた。また、「新聞記者の挑発に乗ることなく務めなければいかん、と電話をしてきた人もいっぱいいた。発言は慎重にというご意思を大変ありがたく受け止めさせていただく」と述べ、自身の発言に慎重を期す考えを示した。

 唐沢氏は、発言に抗議するために訪れたもので「医療現場は、常識では考えられない過酷な労働環境にある」と現状を説明、「国政を代表する総理のあまりにも認識を欠いた軽率な発言は、耐え難い環境で医療現場を守る医師の真摯(しんし)な努力を踏みにじるものだ」と首相を批判する抗議文を提出し、謝罪と発言の撤回を求めた。会談後、唐沢氏は記者団に「(首相には医師を)できるだけ励ましてもらいたい」と語った。 

 この後、会談に同席した竹嶋康弘副会長が厚生労働省で記者会見し、国政選挙で自民党を支持してきた日医の方針について「今度の発言で変えることはない」と述べた。

 一方、河村建夫官房長官は同日の記者会見で「首相の旺盛なサービス精神が勇み足をしたのかなという思いもする」と擁護しつつも、「一国の首相としてできるだけ慎重にやっていただくに越したことはない」と語った。

(時事通信、2008年11月20日)

****** 時事通信、2008年11月21日

首相発言、閣僚からも苦言=「慎重かつ慎重に」「不適切」

 麻生太郎首相が医師不足問題に関連して「社会的常識がかなり欠落している人が(医師に)多い」と発言したことに対し、21日の閣議後の記者会見で、閣僚からも苦言を呈する声が相次いだ。

 野田聖子消費者行政担当相は「首相は一言一言が大きな影響を及ぼす。慎重に、かつ慎重にやっていかなければならない」と指摘し、小渕優子少子化担当相は「国民に誤解のないように発言をしなければならない」と不快感を示した。

 また、公明党の斉藤鉄夫環境相は「わたしは必死で地域医療を支えている方のご努力を知っている。あの発言は不適切」と厳しく批判。塩谷立文部科学相も「今後またそういうことのないよう注意深くやっていただくことだ」と注文を付けた。

 一方、首相が道路特定財源の一般財源化に伴う地方への配分額1兆3000億円超のうち、1兆円を使途が限定されない地方交付税にすると発言し、翌日に交付税にはこだわらないと軌道修正したことをめぐり、河村建夫官房長官は「道路特定財源については(自民党の)PT(プロジェクトチーム)にお任せするのが基本線だから、当面は静観をいただくことがこれからは必要」と述べた。自民党内の論議を見守る姿勢を示したものだ。

 これに対し、首相に近い鳩山邦夫総務相は「首相は正しい認識を持っている。地方が自由に使えるお金(という首相の解釈)が、一般財源化の意味だ」と語り、首相を全面的に擁護した。

(時事通信、2008年11月21日)

****** 共同通信、2008年11月20日

「医師は社会常識欠ける」 首相、知事会で問題発言 すぐに陳謝、医師会反発

 麻生太郎首相は19日、官邸で開かれた全国知事会議で、医師不足問題に関連し「自分で病院を経営しているから言うわけではないが、医師の確保が大変なのはよく分かる。(医師には)社会的常識がかなり欠落している人が多い。ものすごく価値観が違う」と発言した。

 地域や診療科により医師不足が深刻な現状に関し、医師の資質自体にも原因があるとの見方を示したとみられる。首相は同日夜、記者団に発言の真意を問われ「まともなお医者さんが不快な思いをしたというのであれば申し訳ない」と陳謝したが、医師の団体は強く反発しており、波紋が広がりそうだ。

 知事会議で、首相は「小児科、婦人科といったところは急患が多いから、みんな医師が引く。そういう診療科は(診療報酬の)点数を引き上げればいい」と指摘。その上で「これだけ医師不足が激しくなれば責任は医師側にあるのではないか」と述べた。

 また、首相は記者団に「医者は友達にもいっぱいいるが、おれたちと波長が合わないのが多い」とも説明した。

 首相の親族による麻生グループは、福岡県飯塚市で「飯塚病院」を経営している。

(共同通信、2008年11月20日)

****** 共同通信、2008年11月20日

首相発言要旨

 麻生太郎首相の全国知事会議での医師をめぐる発言の要旨は以下の通り。

 (出席知事の医師不足に関する発言に対し)医者の確保をとの話だが、自分で病院を経営しているから言う訳じゃないけど、大変ですよ。はっきり言って、最も社会的常識がかなり欠落している人が多い。ものすごく価値判断が違うから。それはそれで、そういう方をどうするかという話を真剣にやらないと。全然違う、すごく違う。そういうことをよく分かった上で、これは大問題だ。

 小児科、婦人科(の医師不足)が猛烈に問題になっているが、これは急患が多いから。急患が多いところは皆、人が引く。点数が入らない。点数を変えたらいいんです。これだけ激しくなってくると、医師会もいろいろ、厚生省も、5年前に必ずこういうことになりますよと申し上げて、そのまま答えがこないままになっている。

 これはちょっと正直、これだけ激しくなってくれば、責任はおたくらの話ではないですか。おたくってお医者さんの。しかも、お医者の数を減らせ減らせと言ったのはどなたでしたか、と申し上げて。党としても激しく申し上げた記憶がある。臨床研修医制度の見直しについてはあらためて考え直さなきゃいけない。

(共同通信、2008年11月20日)

****** 共同通信、2008年11月20日

「首相の言葉と思えない」 医師の団体が反発

 麻生太郎首相の「医師は社会常識がかなり欠落している人が多い」という発言に関連して、医師の団体からは批判や反発の声が相次いだ。

 病院勤務医を中心に約800人が加盟する「全国医師連盟」の黒川衛(くろかわ・まもる)代表は「驚いた。一国の首相の言葉とは思えない配慮のない発言で残念だ」とした上で、「一生懸命働いている医療者のことを真剣に考え、社会全体で医師不足対策を考えてほしい」と注文を付けた。

 また開業医が多い全国保険医団体連合会の住江憲勇(すみえ・けんゆう)会長は「日本の医療費が低水準にある中で、地域医療を守っている医師の気持ちを全く理解していない」と切り捨て、「二階俊博経産相が、相次ぐ妊婦の受け入れ拒否は『医師のモラルの問題』と発言したのを撤回したばかり。医師不足に関する麻生内閣の認識はどうなっているのか」と批判した。

 定例記者会見中に首相発言が舞い込んだ日本医師会の中川俊男常任理事は「信じられない。これから確認したい」と述べ、あぜんとした表情を見せた。

(共同通信、2008年11月20日)

****** 共同通信、2008年11月20日

国のトップとして認識不足

 東大医科学研究所准教授で、産科医らでつくる「周産期医療の崩壊を食い止める会」事務局長の上昌広(かみ・まさひろ)氏の話 医師不足や、特に小児科や産科の医師の過酷な勤務状況は報道などを通じ明らかになって久しい。舛添要一厚生労働相や医療界など、関係者が一丸となって、問題打開に向けて尽力している最中、国のトップがこのような発言をするのは、認識不足で、残念としか言いようがない。

(共同通信、2008年11月20日)

****** 共同通信、2008年11月20日

厚労相が首相発言に苦言  誤解招く発言気を付けて

 舛添要一厚生労働相は20日、麻生太郎首相が「(医師には)社会的常識がかなり欠落している人が多い」と発言したことについて「現場で勤務医も悲鳴を上げながら頑張っており、そういう方々に誤解を与えるようなことがあったら残念。医師不足、医療崩壊(などの対策)に全力を挙げているので、政府の姿勢を示すためにも誤解を招く発言は気を付けられた方がいいと思う」と苦言を呈した。

 その上で「首相も謝罪したということなので、反省の上にたって問題の解決に努めたい」と強調した。都内で記者団に述べた。

 河村建夫官房長官も同日の記者会見で、「国民は医師不足の状況を不安に思っている。その責めをすべて医師にというわけにはいかない。政府も医師の確保や勤務環境の改善など現況を変える取り組みを急ぐ必要がある」と述べた。

 また自民党の大島理森国対委員長も国対正副委員長会議で「昨日からいろいろな発言があるが、首相に対し『言葉は大切だ』と申し上げなければならないこともある」と述べた。同党内では「非常識な発言。こんな発言を続けられたら次の選挙は戦えない」(中堅議員)などの声が上がっている。

(共同通信、2008年11月20日)

****** 毎日新聞、2008年11月20日

麻生首相:「医者は社会的常識が欠落」 地方の不足巡り放言

 麻生太郎首相は19日、全国都道府県知事会議で地方の医師不足への対応を問われ、「自分で病院を経営しているから言うわけではないが、医者の確保は大変だ。(医師には)社会的常識がかなり欠落している人が多い。うちで何百人扱っているからよく分かる」と述べた。地方の医師不足の原因が医師側にあることを指摘したものだが、日本医師会などが反発するのは必至だ。(5面に発言要旨)

 さらに、「正直これだけ(医師不足が)激しくなれば、責任はお宅ら、お医者さんの話ではないのか。お医者さんを『減らせ減らせ、多すぎだ』と言ったのはどなたでしたか」と、過去の医師側の発言を紹介する形で批判した。

 首相は同日夜、首相官邸で記者団に「お医者さんになったおれの友達もいっぱいいるんだけれど、何となく意見が全然、普段から波長の合わないのが多いな」と感想を述べた。一方で、「まともなお医者さんが不快な思いをしたというのであれば、それは申し訳ありません」と釈明した。【石川貴教】

(毎日新聞、2008年11月20日)

****** 毎日新聞、2008年11月20日

麻生首相:「医師は常識欠落」発言撤回 言葉不適切と謝罪

 麻生太郎首相は20日、「(医師は)社会的常識がかなり欠落している人が多い」などとした自らの発言について、首相官邸に抗議に訪れた日本医師会の唐沢祥人会長に「言葉の使い方が不適切だった」と伝え、発言を撤回したうえで謝罪した。

 同席した日医の竹嶋康弘副会長によると、唐沢会長は「特定の職業を名指しし、根拠なしに差別するもので、激しい憤りを禁じ得ない」などとした抗議文を読み上げて首相に手渡した。首相は「医師の価値観が(一般の人と)違うことを強調した流れで、『社会的常識が欠落』という言葉を使ってしまった。撤回し、謝罪いたします」と答えたという。

 日医をめぐっては、後期高齢者医療制度を批判する茨城県医師会の政治団体が次期衆院選での民主党候補推薦を決めるなど混乱が続いている。首相発言には全国の会員から抗議のメールが多数寄せられているという。

 衆院選への影響について、記者会見した中川俊男常任理事は「現場の気持ちを踏みにじった発言で、かなりの影響があるのではないか」と語った。【吉田啓志】

(毎日新聞、2008年11月20日)

****** 毎日新聞、2008年11月20日

麻生首相:「医師常識欠落」発言 舛添厚労相が苦言

 麻生太郎首相が医師について「社会的常識が欠落した人が多い」と発言したことに対し、舛添要一厚生労働相は20日午前、「現場の勤務医も悲鳴を上げながら頑張っている。そういう方々に勇気をくじく誤解を与えるようなことがあれば残念だ」と述べ、苦言を呈した。東京都内で記者団に語った。

 これに関連し、河村建夫官房長官は同日午前の記者会見で、「首相自身が謝罪しており、あれこれ言うつもりはない」と述べたうえで、「政府は一丸となって産科、小児科、救急医療の医師を確保しなければいけない」と医師不足対策に取り組む姿勢を強調した。

 一方、全国の開業医・歯科医で構成する「全国保険医団体連合会」は同日「深刻な医師不足を解決しようとする姿勢がまったく見えない」などと首相の発言に抗議する声明を発表した。【坂口裕彦】

(毎日新聞、2008年11月20日)

****** 朝日新聞、2008年11月20日

首相発言に批判・苦言相次ぐ 閣僚・自民党内から

 麻生首相が、道路特定財源や郵政会社の株式売却をめぐって党内論議を経ずに踏み込んだ発言を繰り返したり、「(医者は)社会常識がかなり欠落している人が多い」と発言したりしたことに対し、自民党内や閣僚からは20日、批判や苦言が相次いだ。

 自民党の山本有二道路調査会長は、道路特定財源の一般財源化により1兆円を地方交付税として配分する、という前日の首相発言について記者団に「あり得ない。誰も守らない。今後の道路行政に新たな支障が起きる」と批判。首相の漢字の読み間違いが続いていることを挙げて「交付税を交付金と読んだらつじつまが合う」と皮肉った。

 参院自民党の脇雅史国会対策筆頭副委員長も会見で、道路問題で「公の場で発言されて趣旨がよく分からないというのは非常に問題」と批判した。

 郵政株の売却をめぐる発言に対しても、中川秀直元幹事長が町村派総会で「郵政民営化をひっくり返すことは我々がやってきたことの全否定になる。断固許してはならない」と強く批判した。

 一方、首相の「医者の社会常識欠落」発言には、舛添厚生労働相が東京都内で記者団に「現場の勤務医も悲鳴をあげながら頑張っているので、勇気をくじく誤解を与えるようなことがあれば残念。誤解を与えるような発言は気をつけた方がよい」と苦言を呈した。河村官房長官は会見で「医療を取り巻く現況の厳しさの責めを、すべて医師にというわけではない」と釈明した。

 相次いだ首相の発言に、相談相手でもある同党の大島理森国対委員長も、会議で「昨日から総理のいろいろの発言がある。総理に対して言葉は大切である、と申し上げなければいけない」と語った。

(朝日新聞、2008年11月20日)

****** NHKニュース、2008年11月19日

首相 社会常識欠落の医師多い

麻生総理大臣は、総理大臣官邸で開かれた全国知事会との会合に出席し、地方が抱える医師不足の問題について、みずからの考え方を示した際、医師のことを「社会的な常識がかなり欠落している人が多い」と発言しました。

これは、会合の中で出席した知事から「地方が抱える医師不足の問題についてどう考えるか」という質問が出たのに対し、麻生総理大臣が、みずからの考え方を述べた際に発言したものです。この中で麻生総理大臣は、医師不足の問題に関連して「自分で病院を経営しているから言うわけではないが、はっきり言って、社会的な常識がかなり欠落している人が多いと思われる。とにかく、ものすごく価値判断が違う。それはそれで、そういう方をどうするかという話を真剣にやらないといけない」と述べました。また、麻生総理大臣は「急患が多い診療科は、皆、医者は引く。だとしたら、そういう診療科だけ診療報酬を引き上げるなど、変えてみたらどうか。正直、これだけ医師不足が激しくなってくれば、責任は医師の側にあるのではないか。ただ、目先のことをどうするかというところで、医師不足の声をしんしに受け止めなければならない」と述べました。これについて日本医師会の中川俊男常任理事は、定例の記者会見で「麻生総理大臣がそのような発言をするとは、とても信じられない。事実関係を確認したい」と述べました。日本医師会では、麻生総理大臣の発言について、真意を確認したうえで今後の対応を検討することにしています。麻生総理大臣は19日夜、総理大臣官邸で記者団に対し「おれの友達にも医者がいっぱいいるが、なんとなく話をしても、ふだん、おれとは波長が合わない人が多いと思った。まともな医者が不快な思いをしたというのであれば、それは申し訳ない」と述べました。

(NHKニュース、2008年11月19日)