ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

医師不足の大学病院、派遣医引き揚げ

2007年02月28日 | 地域周産期医療

関連病院に在籍する医師の大学への引き揚げにより、地方中核病院の産科や小児科が次々と閉鎖されています。大学の人事は4月1日付けで行われることが多く、人事は直前になるまで発表されないため、この年度替わり直前の時期になって、4月1日付けの診療大幅縮小・休診が多く発表され始めています。

周辺の病院が次々と診療大幅縮小・休診となって、患者数が急増して信じられないほどの激務となっている病院でも、突然、医師引き揚げの通告があれば、診療の継続は断念せざるを得ません。

患者の急増に対応するためには、助産師などのマンパワーを増員し、医療機器を整備し、病棟編成組み換えによって病床数を増やし、外来や病棟の拡張工事を実施するなど、いろいろな準備が必要です。そうやって莫大な資金を投入して診療拡大の準備をしている真最中に、突然、大学から派遣医師の引き揚げを通告されて診療の継続は不可能という事態になれば、診療拡大のために投入した資金はすべて無駄となり、病院全体の経営戦略にも大きな影響が出ることは必至で、病院の倒産も十分にあり得ます。

診療縮小の方向性が最初からわかっていれば、前もって人員を削減したり、設備投資を控えたり、病床数を縮小する、などのさまざまな対応も可能です。被害も最小限で済ませられます。

今は将来の方向性の状況判断が非常に難しいです。いつハシゴをはずされるか全く予測もできないような状況の中にあって、将来の方向性は全く不明であり、5年後にこの世に存在しているのかどうかさえ確信がもてず、あぶなくて長期計画などとても立てられません。その日その日をいかにして生き延びてゆくかだけで精一杯です。このままでは、各病院が生き残りをかけて最大限の努力をしても、結局はすべての病院が共倒れになって、地域医療がどんどん崩壊していく気がします。

将来の方向性が具体的に示されたなら、各病院がその将来プランの実現に向けて適切に対応していくことが可能となります。住民の不安も取り除かれると思います。今はどう対応したらいいのか?の指針が全くありません。現場の各自の状況判断で、それぞれ勝手気ままに対応していて、これから先、地域の医療がどうなってゆくのか? さっぱり見当もつきません。国や県が、地域医療の将来の方向性を、病院側にも住民側にも、わかりやすく、しっかりと具体的に示して欲しいと思います。