紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

我思う故に我有り…ジョン・コルトレーン~マイ・フェイヴァリット・シングス

2008-03-27 21:52:39 | ジョン・コルトレーン
今日は何となく気分が良い。
そこで、このブログの代名詞的な存在…いや、私のジャズ好き人生の指標とも言って良い「ジョン・コルトレーン」の超絶的な代表作で有る、本作品を今回は取上げてみたいと思います。
余りにも有名な作品で少々気が咎めるのも事実では有りますが、このブログ開設以来、今迄取上げていなかったのがむしろ不思議です。

フリーの「コルトレーン」ではなく、モード・ジャズで、シーツ・オブ・サウンドの初期完成形として、万人に受け入れて頂ける作品だと思いますので、是非聴いて下さい。

アルバムタイトル…マイ・フェイヴァリット・シングス

パーソネル…リーダー;ジョン・コルトレーン(ss、ts)
      マッコイ・タイナー(p)
      スティーヴ・デイヴィス(b)
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.マイ・フェイヴァリット・シングス、2.エヴリタイム・ウイ・セイ・グッドバイ、3.サマー・タイム、4.バット・ノット・フォー・ミー

1960年10月21日①、24日②、26日③④

原盤…ATLANTIC 1361 発売…ワーナー・パイオニア
CD番号…30XD-1000

演奏について…オープニング&タイトル曲「マイ・フェイヴァリット・シングス」…もはや説明不要の超絶的な名演奏です。
「コルトレーン」がソプラノ・サックスを駆使して、隼が天空を滑空&飛翔するように、シーツ・オブ・サウンドと言う超絶的なテクニックを用いて、アドリブのシャワーを音に換えて振り注ぐのです。
その後の「マッコイ・タイナー」のモード・ピアニズムの極限演奏が羽ばたく様に、ロマンティシズムと幻想的な空間の間に、送り込ませるんです。
とても心地良く、しかしインテリジェンスも感じ得る…ワルツのリズムに乗って、我等をどこに誘うのか?
「スティーヴ・デイヴィス」のベース演奏は、淡々とリズムを刻み、「エルヴィン・ジョーンズ」は、さりげなくも奥底に燃えるパッションで、「コルトレーン」、「マッコイ」を鼓舞し続けます。
終盤は正しく「コルトレーン」の独自世界へと、ソプラノ・サックスが連れて行きます。
「マッコイ」のブロック・コードに支えられながら、「コルトレーン」は短距離走の走者が、その足でマラソンを走る様な、有り得ないぐらいの異次元に走ってトリップするんです。勿論、無理を100も承知でね。
でも、42.195kmは、全力疾走出来ないけれども、20kmぐらいは、本当に全力疾走しているんじゃないかと思うぐらいに、エナジー全開の驚愕の演奏が遂行されています。す、すごいの一言です。

2曲目「エヴリタイム・ウイ・セイ・グッドバイ」…このバラッド演奏もすごいの一言です。
「コルトレーン」の一番すごい所は、モードからフリー演奏へと、つまりシャウト&ブロウの神とも言うべきトーンを、長時間連発できるアヴァンギャルドな演奏家で有りながら、バラッドに対しても神とも言える程魅惑的な演奏を数多く遺しているところでしょう。
ここでの哲学的に思索された、抑制のバラッド演奏に感心すること間違いなしで、大人のバラッド伴奏に従事する「マッコイ」と、渋く繊細にブラシを決める「エルヴィン」のさりげない優しさに、温かいぬくもりを感じるでしょう。

3曲目「サマー・タイム」…こいつもすごいぜ!!
一聴すると、原曲が分からない程のデフォルメされたテーマ演奏ですが、この曲のメロディ&テーマを、ただのアドリブ素材だと単純に理解すれば、至極分かり易いシンプルな演奏です。
アドリブの調理具合と方法が、とにかく素晴らしくて、「コルトレーン」のインテリジェンスに圧倒されるでしょう。
ラテン・リズムを入れたりする、遊び心をチョイ見せする「マッコイ」のピアノ・ソロの出来も良いですし、このアルバム中、唯一ソロを取る「デイヴィス」の歌わせるベース・ソロ演奏にも痺れさせられるでしょう。
終盤には、「マッコイ」の重厚感覚溢れるピアノ伴奏を従えて、「エルヴィン」が激しいドラム・ソロを演ってくれます。
このピアノとドラム、そしてビンビンにハードなベースの対話、「コルトレーン」レスのピアノ・トリオ演奏部分が、最高潮で聴き物なんです。
勿論、ラストの1小節だけ、「サマー・タイム」のメロディ・フレーズを「コルトレーン」が吹いてくれるところも良いんですけどねぇ。
最高にかっこよくて、気持ち良い演奏です。

4曲目「バット・ノット・フォー・ミー」…このラスト曲の出来も秀逸です。
序盤~終盤の「コルトレーン」の超絶技巧のソロ演奏には口をあんぐりさせられるほどですし、逆に中盤の「マッコイ」「デイヴィス」「エルヴィン」の寛ぎのピアノ・トリオ演奏部分の大人の渋いやり取りも、裏聴き所となっています。

いずれにせよ、全4曲全てが、ジャズ・レコーディング史上、最高評価の聴き物であり、ベスト演奏と言って良い出来栄えです。
冒頭で言った様に、正直、説明不要の名演揃いですので、是非、皆様、このスーパー名演&名盤をご堪能下さい。