紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

最強のインプロヴァイザーによる、夢の共演…スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス

2008-03-10 11:40:49 | ジャズ・テナー・サックス
今日の2枚目は、グレートな2人のスーパー・スターの夢の共演、そしてバックのメンバーもスター揃いで…正しくドリーム・マッチの王道とも言うべき、企画のアルバムです。

アルバム・タイトル…スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス

パ-ソネル…リーダー;スタン・ゲッツ(ts)
      ビル・エヴァンス(p)
      ロン・カーター(b)1,2,3,7,8,11曲目
      リチャード・デイヴィス(b)4,5,6,9,10曲目
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.ナイト・アンド・デイ、2.バッド・ビューティフル、3.ファンカレロ、4.マイ・ハート・ストゥッド・スティル、5.メリンダ、6.グランド・ファザーズ・ワルツ、7.カーペットバガーのテーマ(未発表曲)、8.WNEWテーマ・ソング(未発表曲)、9.マイ・ハート・ストゥッド・スティル(別テイク)、10.グランド・ファーザーズ・ワルツ(別テイク)、11.ナイト・アンド・デイ(別テイク)

1964年5月5日、6日 ニューヨークにて録音、7~11曲はMonaural録音

原盤…Verve  発売…ポリドール㈱
CD番号…POCJ-1829

演奏について…1曲目「ナイト・アンド・デイ」…「コール・ポーター」のスタンダード曲だが、一音目から「ゲッツ」が魅惑的な音色で、テナーを決めて、「エルヴィン」が、ポリリズムを活かしたドラミングで高揚させて、「ビル・エヴァンス」は知性の塊の様な、ソフィストケイトされたアドリブを演る。
この3人のインプロヴィゼーションが堪らない魅力で、ヘヴィー級ボクサーのバトル・ロイヤルの如く「競演」に、ガッツリはまるんです。
演奏終盤で、「ゲッツ」と「エヴァンス」の知的さに対抗して、「エルヴィン」が吼え捲って、ガンガン叩き、「カーター」もハードなベース・プレイでかっこつけて演るソロの所なんて、最高じゃん!
オープニング曲からすごすぎです。

2曲目「バッド・ビューティフル」…「エヴァンス」と「ゲッツ」が、リリカルで且つインテリジェンスに富んだ、都会の大人のバラード演奏を決めます。
「エルヴィン」のブラッシュ・ワークも高水準で、二人のロマンティックな世界を優しくサポートしてくれます。
それにしても、この曲での「エヴァンス」バラッド・アドリブ演奏…良いですね。
「エヴァンス」的なエッセンスを余す所無く伝えて、しかし決して他のスーパー・ミュージシャンの個性を消すような下種な演奏にはしない。
真に叙情的な一曲です。

3曲目「ファンカレロ」…「ビル・エヴァンス」の代表的な作品の一つですが、流石に「エヴァンス」のアドリブは堂の入った素晴らしい出来栄えです。
知性溢れるブロック・トーンと、センシティブなシングルトーンの交錯した「エヴァンス」流が最高潮に輝いています。
「エヴァンス」に触発されたのか?「ゲッツ」のブローイングも抜群で、熱くなり過ぎないギリギリにシャウトが、ヴェリー・グッド・ジョブです!!
「カーター」のズンズン突き進むベースと「エルヴィン」のすさまじいドラミングが二人の天才を更に煌かさせます。
でも、でも…何と言う贅沢なワン・ホーン・カルテットでしょうね。
白人テナーの最高峰と、ジャズ・ピアニストの最高峰に、「マイルス・バンド」のベーシスト、「コルトレーン・バンド」のドラムス…まじでまじで夢の競演です。

4曲目「マイ・ハート・ストゥッド・スティル」…この曲からベーシストが「リチャード・デイヴィス」に変わるが、この人も硬派ベーシストなので、演奏は何ら変わらず高水準を保つ。
いや、むしろハードな演奏と言う面では「デイヴィス」は「カーター」を凌駕しているので、むしろ緊張感はアップしている。
「ゲッツ」は余裕の吹きっぷりで、「エヴァンス」は、熟考された?かの様な、シングル・トーンでのソロ・プレイが魅力的です。
終盤、二者によるバトル演奏が、蒼く燃えていて、ピーンと緊張が走っています。
そして、「エルヴィン」が煽ってくると…静かなはずの「ゲッツ」が、熱く燃えてきて、火傷しそうなブローイング・セッションで〆られるんです。
青白く燃えているのが、紅蓮に燃え上がる変化が堪りませんねぇ。

5曲目「メリンダ」…とても抑えていてクールな音色ですが、知性をたっぷり音に込めて「ゲッツ」が会心の一発を演ります。
「エヴァンス」のピアノは冴え捲り、「エルヴィン」と「デイヴィス」のリズム・セクションも相当インテリ度が高くなっています。
とてもハイセンスな叙情的なバラッド演奏に、酔わされる…いや、酔わないで、KO負けを喰らうでしょう。
冬の富士山の様に、外見はとても美しいが、実際に登山は出来ない厳しさの様な、芯が頑固な戒律が有る演奏です。

6曲目「グランド・ファーザーズ・ワルツ」…のっけから、とても美しいメロディアスなフレーズを、ワルツお得意?の「エヴァンス」が、シンプルに…且つセンシティブに情景を描き切る。
「ゲッツ」も、肩肘張らない余裕と暖色系の優しい音色で、夢の様な心温まる良い気持ちにさせる演奏をする。
「エルヴィン」も優しく、「デイヴィス」もさりげなく…4人が好々爺にでもなったのであろうか?
怒る事なんか、もはや有り得ない、優しい優しいおじいちゃんの心情が表現されています。

7曲目「カーペットバガーのテーマ」…この曲からは、本来LPで出た時には収録されていなかった、追加トラックと別テイクとなる。
この曲は変拍子で、「ゲッツ」が別の例のコンボ…「ポール・デズモンド」がテナーに持ち替えた様なウォーム&クールな演奏がgoodです。

8曲目「WNEWテーマソング」…このWNEWとは、アメリカのFM曲の事だそうで、相も変わらず「ゲッツ」は余裕吹き、「エヴァンス」は知的に…のフォームは崩さない。
この二人…やはり音楽的頑固者(マエストロ)ですよ。(笑)

9曲目「マイ・ハート~」(別テイク)…オリジナルよりも、かなり急速調で、「ゲッツ」が、かなりぶいぶい言わせる。
単演奏なら、こっちの方が面白いけど、アルバムの統一性を考慮して、オリジナル・テイクが採用されたんでしょう。
「エヴァンス」も彼にしては、遊び心が感じられるアドリブ・フレーズと、タッチが有るし、「デイヴィス」のドライヴ力抜群の力演も聴き所です。
勿論、こう言う展開になると、「エルヴィン」もガツンガツンに演っちゃってくれますよ。
今までのストレス?を発散させるように?敲き捲ります。
このコンボにしては、結構燃えているし、ファイトしていて…とにかく楽しい演奏ですよ。
ボツにする必要は無かったよね?

10曲目「グランド・ファーザーズ~」(別テイク)…この演奏も良い!
センスや崩しから言えば、オリジナルよりもこっちの方が上?だと思いますが…。
「ゲッツ」が、かなりよれた様なイメージで、トータル・バランスからして、編成側が、崩し過ぎと判断したんでしょうか?
十分にレコーディングに値する演奏です。

11曲目「ナイト・アンド・デイ」(別テイク)…この演奏も遊び心が加味された印象が強くなっています。
「エルヴィン」のラテンっぽい太鼓も良い感じだし、「ゲッツ」もダンディズムから、一寸遊び人風な感じで…遠山の金さん?ってイメージでしょうか?
「エヴァンス」のピアノは、それでもやはり…クール・ビューティで冴えています。
今さら言うのもおこがましいですが、この人はまじですごい。
「エヴァンス」流には永遠に不滅で、刃こぼれはしません。
 

デヴィッド・サンボーン~クローサー…続き

2008-03-10 10:33:37 | ジャズ・アルト・サックス
いやー、皆様、大変ご無沙汰しております。
実は、我が家に子犬(トイ・プードル)が来まして、また、仕事の煩雑さもあって全くブログが書けませんでした。
更に昨日は、日曜日出勤も重なって…トホホ!
どうも、すみません。

今日は、先日の続きから書き始めたいと思います。

6曲目「バラード・オブ・ザ~」…「サンボーン」が、とても朗々と伸びやかにバラード・チューンを吹き上げて…歌心に満ち溢れた演奏です。
「ゴールディングス」のキー・ボードがスーパー・アシストを提供し、「マクブライド」の太いベース音が、二人を支える。
いつまでも聴いていたくなるような、とても優しい調べです。
軟派じゃない、癒し系サウンドです。
これは必聴でしょうね。

7曲目「アナザー・タイム・アナザー・プレイス」…霧に包まれたニューヨークをイメージして、「サンボーン」が書いたオリジナル曲との事ですが…はたして…正にその通りでして、「サンボーン」は、男っぽいハード・ボイルドな演奏を展開して、アドリブもかっこいいですね。
「スティーブ・ガッド」の切れ味抜群のドラムスが、更に乾いた大都会のイメージを誇張して…ニヒルなサウンドに仕上がっています。
それから、「ゴールディングス」のエレピが、実は一番霧を表していると思います。
非常に良いアシスト演奏となっていて、とても心地良いサウンドです。
都会の中にあるオアシス的な1曲でしょうか?

8曲目「ケープタウン・ブリンジ」…アフリカン・ピアニスト、「ダラー・ブランド」作ですが、「サンボーン」はライトに吹いて、カリプソ調のダンサブル・ナンバーに仕上げている。
「ガッド」のドラミングが秀逸物で、全員をさりげなくノリノリにさせている。

9曲目「ポインシアナ」…「アーマッド・ジャマル」作品ですが、「ウォーター・メロンマン」を彷彿させる序奏から気に入った。
ラテン調の変則的なリズムをバックに「サンボーン」が、渋めに決めてくれる。
余り派手なブロウはしないが、逆にクールで、かっこいい!
ダンディズムが煌く演奏です。
バックのパーカッション群のノリも良いです。
名前の通り、森の楽園を飛び廻る蝶の様に、軽やかで煌びやかです。

10曲目「ユー・マスト・ビリーブ~」…こいつも良いですよぉー。
私、フェイヴァリットの「ミシェル・ルグラン」作曲の、ビターなバラッドで、「ラッセル・マローン」のギターと、「サンボーン」のアルト・サックスが、語り合う様に曲を修飾して行きます。
「マクブライド」のベース、「ガッド」のシンバルは、どこまでも控えめで…いじらしい程控えめで、二人をじっと見守っています。
「サンボーン」は渋く、少しばかり辛口のトーンで、ここでもダンディズムが極まれりと言った感じです。
痺れますねぇ!!

11曲目「ソフィア」…アルバムのラストを飾るチューンです。
「サンボーン」自作の、哀愁のバラッド作品で、ここでも「サンボーン」の抑制したバラッド演奏が、悲しく美しい情景を描き切っています。
別れる時に背中で泣く、男の哀愁なんでしょうか?
サイド・メン達のさりげないサポートが、取分け「マイニエリ」のヴァイブが、哀愁感をセピア色に染め上げています。
泣けます…かっこいいです。

とにかく、アルバム全曲が良いと言っても過言では有りませんよ。
大お薦めの1枚です。