紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

今日はマイルスのライブ・アルバムだ!マイルス・イン・ベルリン~マイルス・デイヴィス

2007-12-04 23:50:36 | マイルス・デイヴィス
昨日は「コルトレーン」のモード演奏アルバムだったので、今日は「マイルス・デイヴィス」のモード演奏のライヴアルバム紹介で行きまっしょい!
メンバー的にも申し分ないですし、「電気マイルス」の様な賛否両論の演奏では無い、ピュアでアコースティックな「マイルス」演奏に、素晴らしい魅力を発見できるでしょう。

アルバムタイトル…マイルス・イン・ベルリン

パーソネル…リーダー;マイルス・デイヴィス(tp)
      ウェイン・ショーター(ts) 
      ハービー・ハンコック(p)
      ロン・カーター(b)
      トニー・ウィリアムス(ds)

曲目…1.マイルストーンズ、2.枯葉、3.ソー・ホワット、4.ウォーキン、5.テーマ

1964年9月25日 ベルリン フィルハーモニック・ホールにてライヴ録音

原盤…米コロンビア  発売…CBS SONY
CD番号…32DP-519

演奏について…オープニングの1曲目から、「マイルス」の代名詞的な曲「マイルストーンズ」によって、このクインテットが疾走する。
「マイルス」は、彼にしては最初からブリリアントなトーンで、全開バリバリに吹き進む。
「トニー・ウィリアムス」の高速ドラミングと、「ロン・カーター」の的確なベース・ラインで、「マイルス」のソロをガッツリサポートして盛り立てます。
その後、「ショーター」が、珍しくいきり立つ様に、激しいテナー・ブロウで、「マイルス」とのバトル対決へと突入して行くのです。
ここでのソロ演奏は、いつもの「ショーター」より、かなり危なく、危険な香りがするのは??、やはりライヴ演奏ならではなのか?
いずれにせよ、手に汗を握るアドリブ演奏がカッコ良いんですよ。
ここで嘶く様に吹く様が、「コルトレーン」が旧「マイルス」楽団にいた頃をどことなく彷彿させるんです。
それから、新「マイルス」楽団の超優等生「ハンコック」が、若者らしからぬモード・ピアノをガンガン弾き捲ります。
「ビル・エヴァンス」に匹敵するくらいに知的なピアニズムだが、黒人なだけに「ビル」との違いも明白で、その辺りが素晴らしい個性だと思う。
いずれにせよ、スタートから抜群の名演で、掴みはベリーOK(オッケー)です。

2曲目「枯葉」…こいつもすごいぜ!
50年代の黄金のカルテット時代の「マイルス」の演奏が…未だ健在なり!!
リリシズムとクール&インテリジェンスが突出した、超絶的なミュート・プレイによって青白い炎が燃え上がる。
「ウィリアムス」は、ペタッと張り付く様なブラッシュ・ワークで「マイルス」の伴奏を務め上げて、良い仕事を見せてくれます。
この雰囲気…絶対に「マイルス」じゃないと出せない世界ですよね。
これに触発されてか、「ショーター」も、ここではアヴァンギャルドではなく、一寸クールなテナー・ソロを決めるんです。
ブイブイ吹く感じじゃなくて、音は少なめにして、しかし効果有る一音(フレーズ)を的確にセレクトして吹くんだよね。
「ハンコック」は、まるで賢者が繰り出す様なブロック・コードをカツンカツンと決めます。
こいつのセンスは、化物級だね。
生来の天賦の才を極限まで「マイルス」に磨きぬかれて、正しく天空からのピアノを奏でてくれます。
音量やパワーで言ったら、圧倒的な感じじゃないけれども、張り詰めた緊張感、集中力と言ったら、すさまじい。
正に極限的な名演奏でしょう。
「キャノンボール盤」が、「エヴァー・グリーンな枯葉」の名演なら、この演奏は
「マイルス芸術」の極地的な、通好みの超名演と言ったら良いでしょう。

3曲目「ソー・ホワット」…この曲も「マイルス」の代名詞と言って、誰も異論は無いでしょう。
ここで、「マイルス」は、またまたオープン・トランペットによって、1曲目同様のハードなプレイに戻ります。
「ショーター」は何となくだが、少し大人びた印象のアドリブを吹く様になった気がします。
同日でも「マイルス」から様々な音楽的ファクターを吸収しているかの如く、何となく上手くなっているようで…。
テナー・サックス奏者として、大分上級になったかなって素直に感じますね。
「ウィリアムス」「カーター」はモード演奏のリズム・セクション、サポート演奏としては完璧で、言う事は有りません。
終盤での「ハンコック」のハイ・センスのソロもgoodです。
言い換えれば、「ハンコック・トリオ」としても充分に聴けるレベルの名演奏と化しています。

4曲目「ウォーキン」…この曲もプレスティッジ時代に超名演(名盤)が存在していますが、新時代のモード演奏での「ウォーキン」も悪くないですね。
「ウィリアムス」が早めのテンポ、もはや4ビートでは無く、8ビートで突き進むんですが、若造のくせに(失礼)、ドラ・テクは半端じゃなく、バカ上手(ウマ)なんですよ。
変速リズムでも、高速リズムでも、変調でも何でも来い!状態で、「マイルス」も安心してリズム・セクションを任せていたのが、手に取る様に分かります。
終盤の「ショーター」の演奏は、硬さも随分取れて来て、結構マイ・パターンのフレーズも出てきた感じがして、乗ってきたなと思います。
「ハンコック」はゴーイング・マイ・ウェイですが、クールさは全く変わらず、むしろ更に冷ややかに、4人のメンバーを見ながら、遠隔コントロールしている感さえ有るんです。
この冷静さ…むしろ怖いぐらいだね。
「マイルス」のこのコンボで、20歳そこそこのピアニストとドラムスの天才二人…まじにすごい才能で、「ハンコック」と「ウィリアムス」のデュオ的なバトルは筆舌し難い名演奏で、聴き所です。

5曲目の「テーマ」…「カーター」のベース・ソロから導入され、「マイルス」と「ウィリアムス」が、煽り気味に、不気味にテーマを演奏する。
わずか2分弱の短い曲だが、とても奥深く印象に残ります。

とにかく全曲全てが、名曲・名演で、「マイルス」芸術の最高峰の一つと言って良いでしょう。
モード演奏とは何か?の答を出してくれる、アルバム(演奏)であり、有名曲ばかりなので、初心者の方でも、いきなり究極のモード演奏に出会えます。