紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

リトル・ジャイアントのデビュー盤…ジョニー・グリフィン~JG

2007-12-08 12:34:45 | ジャズ・テナー・サックス
小柄な体格ながら、豪快にぶいぶい言わすテナー演奏で人気を博し、「リトル・ジャイアント」と親しまれた「ジョニー・グリフィン」のデビュー・アルバムが、この「JG」です。

デビュー作品とは思えない程、「リトル・ジャイアント」の名に恥じぬ豪快なブロウを決めてくれる好作品です。

バックを担う「ジュニア・マンス」トリオのサポート演奏も、聴き応えが有って、魅力を増加させてくれます。

アルバムタイトル…JG

パーソネル…リーダー;ジョニー・グリフィン(ts)
      ジュニア・マンス(p)
      ウィルバー・ウェア(b)
      バディ・スミス(ds)

曲目…1.アイ・クライド・フォー・ユー、2.サテン・ラップ、3.イエスタデイズ、4.リフ・ラフ、5.ビー・イーズ、6.ザ・ボーイ・ネクスト・ドア、7.ジーズ・フーリッシュ・シングス、8.ロリーポップ

1956年 シカゴにて録音

原盤…ARGO-624  発売…MCAビクター
CD番号…MVCR-20058

演奏について…まずオープニング曲「アイ・クライド~」では、「グリフィン」がとても丁寧に吹いて淡々と序奏が始まるが、少し慣れて来てからは「グリフィン節」も時々出し始めます。
「マンス」…転がす様なとてもお洒落系のシングル・トーンでアドリブを弾いて、「グリフィン」を、強力に後押ししてくれます。
スタート・ダッシュはまずまず成功でしょう。

2曲目「サテン・ラップ」…「グリフィン」がブルージーなテーマを吹いた後、「ウェア」と「マンス」のデュオ的でバトルっぽいアドリブを経てから、もう一度「マンス」が豪快に再アドリブで参入してくれる、劇的な感じの1曲。

3曲目「イエスタデイズ」…こう言うスタンダード曲が大好きな私には、堪えられないトラックです。
「グリフィン」のアドリブは、音色が魅力的なだけでなく、ここでは男の色香をぷんぷん放って…こりゃ雌には堪らん演奏ですね。
色気と言っても男芸者ではなく、まじにハードボイルドで、「ゴルゴ13」の様な漢っぽさなんですよ。
「グリフィン」最高!!!

4曲目「リフ・ラフ」でも、当然の事ながら「グリフィン」が豪快に吹き切るんですが、中間での「マンス」のアドリブ・ソロがそれ以上に、乗っていて素晴らしいですし、「ウェア」の渋~いベース・ソロ…カッコイイ!!
「スミス」は、地味派手にバックに徹しています。

5曲目「ビー・イーズ」はミドルテンポの4ビートで、あまり肩肘張らずに「グリフィン」がさりげなく流す様に吹きます。
と言っても、強く吹くトーンでは、ガツーンと来てくれますし、「マンス」の冴えも相変わらずに抜群です。
「グリフィン」の演奏は全面に渡って良い出来だけれども、「マンス」トリオでも行ける程、このバックのピアノ・トリオ演奏は秀逸ですね。
最後の方で「スミス」がおかず付きのソロ演奏もチョコッと見せてくれます。

6曲目「ザ・ボーイズ~」…とてもリラックスした雰囲気の4ビート・チューンですが、所々で「グリフィン」がぶいぶいと吹いてくれて…気分が良いですね。
「スミス」のブラッシュ・ワーク、「ウェア」の厚い音量のベースが好サポートしてくれて…「マンス」のブロック・コードでの伴奏と、終盤での魅惑的なシングル・トーンを駆使してのアドリブが、えも言えぬ幸せを感じさせます。

7曲目「ジーズ・フーリッシュ~」…このバラード曲の出来もすこぶる良いですね。
「グリフィン」…デビュー時から、こんなに大人びた演奏を出来るアーティストだったんだなぁ。
一音一音が、ハッキリ・クッキリと冴えを見せて、低音域からグワォーンと持ってくる独特の「グリフィン節」もやってくれるし、「グリフィン」がバラードを吹いても一流のテナー・マンだと言うことを認識させてくれるトラックです。

ラスト曲「ロリーポップ」…ポップス曲「ロリポップ」とは同名異曲ですが、かなりスウィング力が有る、グルーヴィなナンバーです。
「マンス」が一寸「モンク」的なフレーズをかましてくれて、アクセントをつけますし、「スミス」が1小節だけ、豪快にドラムスをぶっ敲くところもgoodです。

全8曲…「グリフィン」の豪快なテナー演奏と、「マンス」トリオの絶妙なサポート演奏で作られた好アルバムですよ。
 

今日はマイルスのライブ・アルバムだ!マイルス・イン・ベルリン~マイルス・デイヴィス

2007-12-04 23:50:36 | マイルス・デイヴィス
昨日は「コルトレーン」のモード演奏アルバムだったので、今日は「マイルス・デイヴィス」のモード演奏のライヴアルバム紹介で行きまっしょい!
メンバー的にも申し分ないですし、「電気マイルス」の様な賛否両論の演奏では無い、ピュアでアコースティックな「マイルス」演奏に、素晴らしい魅力を発見できるでしょう。

アルバムタイトル…マイルス・イン・ベルリン

パーソネル…リーダー;マイルス・デイヴィス(tp)
      ウェイン・ショーター(ts) 
      ハービー・ハンコック(p)
      ロン・カーター(b)
      トニー・ウィリアムス(ds)

曲目…1.マイルストーンズ、2.枯葉、3.ソー・ホワット、4.ウォーキン、5.テーマ

1964年9月25日 ベルリン フィルハーモニック・ホールにてライヴ録音

原盤…米コロンビア  発売…CBS SONY
CD番号…32DP-519

演奏について…オープニングの1曲目から、「マイルス」の代名詞的な曲「マイルストーンズ」によって、このクインテットが疾走する。
「マイルス」は、彼にしては最初からブリリアントなトーンで、全開バリバリに吹き進む。
「トニー・ウィリアムス」の高速ドラミングと、「ロン・カーター」の的確なベース・ラインで、「マイルス」のソロをガッツリサポートして盛り立てます。
その後、「ショーター」が、珍しくいきり立つ様に、激しいテナー・ブロウで、「マイルス」とのバトル対決へと突入して行くのです。
ここでのソロ演奏は、いつもの「ショーター」より、かなり危なく、危険な香りがするのは??、やはりライヴ演奏ならではなのか?
いずれにせよ、手に汗を握るアドリブ演奏がカッコ良いんですよ。
ここで嘶く様に吹く様が、「コルトレーン」が旧「マイルス」楽団にいた頃をどことなく彷彿させるんです。
それから、新「マイルス」楽団の超優等生「ハンコック」が、若者らしからぬモード・ピアノをガンガン弾き捲ります。
「ビル・エヴァンス」に匹敵するくらいに知的なピアニズムだが、黒人なだけに「ビル」との違いも明白で、その辺りが素晴らしい個性だと思う。
いずれにせよ、スタートから抜群の名演で、掴みはベリーOK(オッケー)です。

2曲目「枯葉」…こいつもすごいぜ!
50年代の黄金のカルテット時代の「マイルス」の演奏が…未だ健在なり!!
リリシズムとクール&インテリジェンスが突出した、超絶的なミュート・プレイによって青白い炎が燃え上がる。
「ウィリアムス」は、ペタッと張り付く様なブラッシュ・ワークで「マイルス」の伴奏を務め上げて、良い仕事を見せてくれます。
この雰囲気…絶対に「マイルス」じゃないと出せない世界ですよね。
これに触発されてか、「ショーター」も、ここではアヴァンギャルドではなく、一寸クールなテナー・ソロを決めるんです。
ブイブイ吹く感じじゃなくて、音は少なめにして、しかし効果有る一音(フレーズ)を的確にセレクトして吹くんだよね。
「ハンコック」は、まるで賢者が繰り出す様なブロック・コードをカツンカツンと決めます。
こいつのセンスは、化物級だね。
生来の天賦の才を極限まで「マイルス」に磨きぬかれて、正しく天空からのピアノを奏でてくれます。
音量やパワーで言ったら、圧倒的な感じじゃないけれども、張り詰めた緊張感、集中力と言ったら、すさまじい。
正に極限的な名演奏でしょう。
「キャノンボール盤」が、「エヴァー・グリーンな枯葉」の名演なら、この演奏は
「マイルス芸術」の極地的な、通好みの超名演と言ったら良いでしょう。

3曲目「ソー・ホワット」…この曲も「マイルス」の代名詞と言って、誰も異論は無いでしょう。
ここで、「マイルス」は、またまたオープン・トランペットによって、1曲目同様のハードなプレイに戻ります。
「ショーター」は何となくだが、少し大人びた印象のアドリブを吹く様になった気がします。
同日でも「マイルス」から様々な音楽的ファクターを吸収しているかの如く、何となく上手くなっているようで…。
テナー・サックス奏者として、大分上級になったかなって素直に感じますね。
「ウィリアムス」「カーター」はモード演奏のリズム・セクション、サポート演奏としては完璧で、言う事は有りません。
終盤での「ハンコック」のハイ・センスのソロもgoodです。
言い換えれば、「ハンコック・トリオ」としても充分に聴けるレベルの名演奏と化しています。

4曲目「ウォーキン」…この曲もプレスティッジ時代に超名演(名盤)が存在していますが、新時代のモード演奏での「ウォーキン」も悪くないですね。
「ウィリアムス」が早めのテンポ、もはや4ビートでは無く、8ビートで突き進むんですが、若造のくせに(失礼)、ドラ・テクは半端じゃなく、バカ上手(ウマ)なんですよ。
変速リズムでも、高速リズムでも、変調でも何でも来い!状態で、「マイルス」も安心してリズム・セクションを任せていたのが、手に取る様に分かります。
終盤の「ショーター」の演奏は、硬さも随分取れて来て、結構マイ・パターンのフレーズも出てきた感じがして、乗ってきたなと思います。
「ハンコック」はゴーイング・マイ・ウェイですが、クールさは全く変わらず、むしろ更に冷ややかに、4人のメンバーを見ながら、遠隔コントロールしている感さえ有るんです。
この冷静さ…むしろ怖いぐらいだね。
「マイルス」のこのコンボで、20歳そこそこのピアニストとドラムスの天才二人…まじにすごい才能で、「ハンコック」と「ウィリアムス」のデュオ的なバトルは筆舌し難い名演奏で、聴き所です。

5曲目の「テーマ」…「カーター」のベース・ソロから導入され、「マイルス」と「ウィリアムス」が、煽り気味に、不気味にテーマを演奏する。
わずか2分弱の短い曲だが、とても奥深く印象に残ります。

とにかく全曲全てが、名曲・名演で、「マイルス」芸術の最高峰の一つと言って良いでしょう。
モード演奏とは何か?の答を出してくれる、アルバム(演奏)であり、有名曲ばかりなので、初心者の方でも、いきなり究極のモード演奏に出会えます。

今日はモード・ジャズの有名アルバムで行きます。…ジョン・コルトレーン~コルトレーン・サウンド(夜千)

2007-12-03 23:14:32 | ジョン・コルトレーン
今日は、コルトレーン・モード・ジャズの人気アルバムをチョイス致しましょう。
コルトレーン中期の傑作では有りますが、所謂代表作と言う訳では有りません。
しかし、コルトレーン・フリークからは、非常に支持を受けているアルバムで、「コルトレーン・サウンド」と言うアルバムタイトルに、(夜は千の眼を持つ)と言う副題も有ります。
トレーン・ファン(ジャズ・ファン)は、これを「夜千」と呼んで愛しているんですよね。

では詳細な解説です。

アルバムタイトル…コルトレーン・サウンド(夜は千の眼を持つ)

パーソネル…リーダー;ジョン・コルトレーン(ts、ss)
      マッコイ・タイナー(p)
      スティーヴ・デイヴィス(b)
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.夜は千の眼を持つ、2.セントラル・パーク・ウェスト、3.リベリア、4.身も心も、5.イクィノックス、6.サテライト、7.26-2、8.身も心も

1960年10月24日(2,4,6,8曲目) 1960年10月26日(1,3,5,7曲目)

原盤…ATLANTIC SD1419  発売…ワーナー・パイオニア
CD番号…30XD-1004

演奏について…人気のオープニング・ナンバー「夜は千の眼を持つ」だが、「ジョーンズ」のラテン・リズムに乗って、「コルトレーン」が序盤から素晴らしいアドリブ・ソロをテナーで吹き切る、好トラック。
「デイヴィス」のベース・ラインの推進力と、「マッコイ」のモード・コードでのブロック演奏が強烈にリーダーの「コルトレーン」をサポートする。
中盤からは「ジョーンズ」が、このラテン・リズムを更に飾り立てて、皆を煽り捲るんですが、「マッコイ」がやんわりと、ハイセンスに都会的なシングル・トーンでクールにアドリブを決め返します。
流石「マッコイ」…一筋縄では治まらんって感じで、見事なスパイスを効かしてくれます。
最後はもう一度「コルトレーン」がテーマを吹いてくれて、寸分違わぬスタート・ダッシュが完成しました。

2曲目「セントラル・パーク・ウェスト」では、「コルトレーン」が渋く静寂調のバラッド演奏をソプラノ・サックスで吹きます。
「ジョーンズ」はブラッシュ・ワークで、「マッコイ」も控えめに伴奏に徹して、リーダーの脇を固めます。
「マッコイ」の中間部でのソロも、とても美しくて、過度になり過ぎない程度にロマンティックな佇まいを見せます。
それにしても「コルトレーン」のソプラノ・サックス…ナイーヴな感性が出ていて、「トレーン芸術」の奥深さと、引き出しの多さが、良く分かりますね。

3曲目「リベリア」…このアルバム随一の「トレーン」らしいモード・トラックで、アグレッシブな彼の本質がしっかりと録られた、ベスト・チューンと言ったら良いでしょう。
とにかくテナー・サックスがぶいぶいと飛翔して、「ジョーンズ」も所々で、ラテン調のシンバルやスティック捌きを見せて、更に更に煽るんです。
「マッコイ」はモード・コード全開で、親分に追従しますし、中間部のピアノ・アドリブ・ソロの出来栄えも特筆物です。
黄金のカルテット手前のメンバーでは有りますが、部下3人は完全に「コルトレーン」の両手両足となって完璧に機能しており、聴き応え充分です。

4曲目「身の心も」は、中期「コルトレーン」には珍しい、寛ぎ感覚が満載のナンバーで、聴いていると、50年代のプレスティッジ時代の演奏が頭を過ぎるんですね。
しかし、こう言う「コルトレーン」も悪く無いし、有る意味充分に個性的に思うんだけど、中期から後期にかけての成長(技術もそうだが、いやそれ以上に精神の熟成かな?)がすごすぎて、この「トレーン」の演奏が未熟に思えちゃうのは、実は悲しい事だと思います。
このモード・ジャズ…シーツ・オブ・サウンドは絶対に評価されるべき演奏です。

5曲目「イクィノックス」…この曲も変速調のラテン・リズムを用いた曲だけど、個性的でクールな感覚抜群なブルースで、興味を惹き捲りですね。
「コルトレーン」自身は、これでもか?のシーツ・オブ・サウンドを繰り出し、超絶的なカデンツァ演奏をしていて、「コルトレーン」マニアには、或いはフリークには堪えられない演奏、アドリブ・ソロです。
バックの「マッコイ」はブロック・コードで伴奏に徹していて、「エルヴィン」もブラッシュで伴奏に専念しています。
「デイヴィス」が実直にベース・ラインをコツコツと刻んでいるのが、評価できますね。
この曲を重厚に仕上げるのに、特に良い仕事をしています。
ブルース曲の名演は、ベースの分厚いサウンドに起因するよね?
「デイヴィス」…まじにありがとう。
このアルバムの価値をかなり上げてくれています。

6曲目「サテライト」…変速調のモード曲で、なんか「ドルフィー」が演りそうな感じがするんだよね。
このイメージの曲は、ものすごくアーバナイズされていて、正しく来るモード・ジャズの到来を告げるトラックになっています。
この曲を演るには、年寄り(失礼)は、やっぱり無理で、このメンバーじゃないと…と納得しちまうよ。
「コルトレーン」は抜群のアドリブを演ってくれるし、リズム・セクション2人も非常に好演です。
※この曲はピアノ・レス・トリオ演奏なんだよね。
「エルヴィン」のドラム、「デイヴィス」のベースのドライヴィング・パワーが全開ですよ。

ボーナス・トラックの2曲…の内、「26-2」は「コルトレーン」オリジナル曲で、LPに入らなかったのが不思議なくらいに、出来は良いですよ。
但し、バリバリの「トレーン」ばかりを何曲も聞かさせるのは、当時はチト苦痛だったかも?と言う事で、割愛しちゃったかもね。
曲としては、かなり前衛的なメロディで、各人共モード演奏バリバリです。
「トレーン」のソプラノ・サックス演奏の出来は抜群だし、「マッコイ」のソロ、「デイヴィス」「エルヴィン」のリズム演奏もgoodです。
勿論「ボディ・アンド・ソウル」の別トラックもバッチ・グーです。

「コルトレーン」のアトランティック時代の演奏(アルバム)で、「マイ・フェイバリット・シングス」や「ジャイアント・ステップス」だと俗的過ぎると感じている、一寸大人な諸氏にお薦め度ナンバー1のアルバムでしょう。

オルガンの神様が送るバラード・アルバム…ジミー・スミス~プレイズ・プリティ・ジャスト・フォー・ユー

2007-12-02 21:36:07 | ジャズ・ビッグバンド・その他
普段はいかにもグルーヴ感覚抜群で、ブラック・ミュージックを演る、オルガン・ジャズの旗手「ジミー・スミス」が、バラード中心に選曲して、演奏したのがこの異色アルバムです。
オルガン・トリオでのバラード演奏…渋い、かっこ良い、趣深い。。

アルバムタイトル…プレイズ・プリティ・ジャスト・フォー・ユー

パーソネル…リーダー;ジミー・スミス(org)
      エディ・マクファーデン(g)
      ドナルド・ベイリー(ds)

曲目…1.ニアネス・オブ・ユー、2.ジターバグ・ワルツ、3.イースト・オブ・ザ・サン、4.ニューヨークの秋、5.ペントハウス・セレナーデ、6.君を想いて、7.言い出しかねて、8.オールド・デヴィル・ムーン

1957年5月8日

原盤…BLUE NOTE 1563  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-1563

演奏について…オープニング曲「ニアネス・オブ・ユー」…寛ぎと揺らぎに満ち溢れたスロー・バラッドから始まる。
「ベイリー」のブラッシュワークと「マクファーデン」のジャズ伴奏も、極めて控えめに、「スミス」のソロを飾り立てる。
中間で「マクファーデン」がアドリブを入れるが、これも慈愛に満ちた癒し系で、心がとても温まります。
「スミス」の演奏は終始ほのぼのとしたトーンでどこまでも優しく、とにかく優しく…このまま眠りにつきそうです。

2曲目「ザ・ジターバグ・ワルツ」…余りにも「エリック・ドルフィー」の名演が有名な曲ですが、この演奏は勿論、「ドルフィー」とは対極に有ります。
3拍子のリズムに乗って、「スミス」が緩やかにスウィングして、「ベイリー」は優しくリズムを刻む…。
まるで極上のBGMの様な天国的なワルツ演奏に、つい居眠りして、そして素晴らしい夢を見れそうです。

3曲目「イースト・オブ~」…1、2曲目で揺らぎ演奏に終始していたトリオがジョギング程度だが、ミドル・テンポの4ビートで走り始める。
「スミス」もいつもの自分をチラリと出して、ファンキーさとブルージーな感覚でグルーヴするソロを取ってくれます。
中間でのアドリブ・パートでのノリも良く、所々でブイブイ言わしているんです。
「マクファーデン」のアドリブ、伴奏もかなりブルージーな雰囲気を出していて、良い仕事ですよね。
ところで、「マクファーデン」の音色と演奏ですが、この音、そしてこの感覚は、やはりブルーノートのアーティストらしく、良く聴くと「ケニー・バレル」に似ていますね!やはり………。
「ベイリー」のおかず満載のバック演奏もお洒落です。

4曲目「ニューヨークの秋」…3曲目で走り始めた「スミス・トリオ」ですが、ここでまた渾身のスローバラッド演奏に戻ります。
「スミス」は一音一音を長めに取って、変わり行くニューヨークの景色…色づき始めた紅葉と、もの悲しさを纏ってきた町並みを表現しているかの様です。
「スミス」の入魂のバラードは、本当に聴き応え有ります。
「マクファーデン」のソロは原曲の美しいメロディを活かして、あえて奇を衒わず原曲に忠実なんですが、そこが好感が持てる所です。
終盤で「ベイリー」が効果的なバスドラ一発入れてくれる所なんかは、センス有りますね。

5曲目「ペントハウス・セレナーデ」…3曲目の様に、ミドル・テンポで陽気に寛ぐナンバーです。
4曲目でエネルギーを出し切った?トリオがクール・ダウンとして用いた曲のようで、ライトな感覚で、心がウキウキします。
「マクファーデン」のソロもものすごく晴れやかな感情で、(良い意味で)気楽な演奏がされています。
こう言う小品的な感じの曲&演奏もアルバム中、必要不可欠だと思います。
ハード・プレイばかりじゃ聴く方も疲れちゃいますからね。

6曲目「君を想いて」…「マクファーデン」のメロディ・ライン演奏から序奏が始まり、哀愁感覚バッチリの素晴らしいソロを見せてくれます。
「マクファーデン」と言うギタリストも、まじめに侮れませんね。
「スミス」がセレクトしたメンバーなだけに、伴奏者としても優秀ですし、ソロを取らせても、破綻の少ない、且つ出しゃばらないアーティストで、脇役(サイド・メン)にはもってこいの人だと思います。

7曲目「アイ・キャント~」…「スミス」の情感タップリの序奏で始まり、もはや正常な気持ちではいられないほど、哀愁的な、そして魅惑的なメロディ・ライン痺れさせられて、その後の「スミス」のアドリブの素晴らしさにも、手伝って心がノックアウト状態になっています。
しかし、ただ癒しサウンドで攻めるだけでなく、この曲では、所々で攻撃的なアドリブをチョイチョイと小出しして、それが又妙技で憎いんだよね。
人の琴線をドンピシャ攻撃するんですよ。
こいつはまじで、只のオルガン小僧じゃないね。
壷をくすぐる術と場所、時間を的確に知っていて、完全犯罪者だな!(笑)
「マクファーデン」も前曲に近い感じで、原曲に忠実で「スミス」のアドリブを後押しします。
このアルバム随一のベスト・トラック演奏でしょう。

ラストを飾る「オールド・デヴィル・ムーン」…最後は一寸陽気に、ラテン調の曲で〆るんですが、「スミス」はブロック的な両手を使ったトーンで伴奏的に弾き、逆に「マクファーデン」が気力を振り絞った?アドリブ・ソロを演ってくれて、良い仕事をしてくれます。
最後は「マクファーデン」に花を持たせたんでしょうね。
「ベイリー」もノリノリでグルーヴ感の有るドラムスで、ファイナル曲を盛り上げます。
このライトで明るい雰囲気でのフィニッシュも好感が持てるね。
最後まで幻想的で終わると、逆にやばい気がするんで、こいつで決まり!です。

いかにもブルー・ノートらしい1枚…イースタリー・ウィンズ~ジャック・ウィルソン

2007-12-02 00:25:24 | ジャズ・ピアノ・コンボ
異彩を放つ、ブルーノートのピアニスト、「ジャック・ウィルソン」がリーダー名義の渋いアルバムを紹介しましょう。

内容的にはいかにもブルー・ノートらしい、ファンキーさ全開の1枚です。
「ウィルソン」以外の参加メンバーもすごいですよ。
ブルーノート・オール・スターズに近いんじゃないの?

アルバムタイトル…イースタリー・ウィンズ

パーソネル…リーダー;ジャック・ウィルソン(p)
      ジャッキー・マクリーン(as)
      ガーネット・ブラウン(tb)
      リー・モーガン(tp)
      ボブ・クランショウ(b)
      ビリー・ヒギンズ(ds)

曲目…1.ドゥ・イット、2.オン・チルドレン、3.ア・タイム・フォー・ラヴ、4.イースタリー・ウィンズ、5.ニルヴァンナ、6.フランクス・チューン

1967年9月22日録音」

原盤…BLUE NOTE BST-84270 発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-4270

演奏について…オープニング曲「ドゥ・イット」…ラテン調の変拍子で、「サイドワインダー」?それとも??と考えている内に、そうだ!「ウォーター・メロンマン」にクリソツと言うことが分かった。
ノリノリの「ヒギンス」のドラムと「クランショウ」のベース、そしてリーダー「ジャック・ウィルソン」のブロック・コードに合わせて、「マクリーン」「モーガン」「ブラウン」の順番で、ファキーなメロディ、アドリブをガッツリかましてくれます。
後半は「ウィルソン」のファンキー・ピアノにホーン・メンバーがユニゾンで呼応する形態を取っていて、盛り上がります。

2曲目「オン・チルドレン」…Dマイナーの曲で、とてもアーバナイズされたハイ・センスな1曲。
「ブラウン」の行けてるソロから始まり、「マクリーン」が割と上品に襷を受けて、アドリブを奏でる。
その後の「モーガン」も、この都会的な曲に合わせてか、日頃の「悪がき」とは随分かけ離れた、「好青年」が吹いているかのようなソロをとります。
その後の「ウィルソン」のアドリブ・ソロは、完璧にバッチリ決まっていますよ。
いかにもブルーノートらしい、佳曲です。

3曲目「ア・タイム~」…1、2曲目とは、ガラリと曲調を劇的に変えて、ロマンティックでメランコリックな「ウィルソン」のピアノがテーマ・メロディを奏でてからスタートする。
「ウィルソン」…なんてリリカルでナイーヴなピアニストでしょう?
このバラード…美しい。余りにも美しすぎる。。
しかし、こう言う1曲をアルバムに入れると言うだけで、「ウィルソン」のセンスの高さが良く分かる。
まじめに、「レイ・ブライアント」とか、「ケニー・ドリュー」の様な女性的で繊細な演奏に涙が出そうです。
「ウィルソン」…本当にありがとう。

4曲目「イースタリー~」…タイトル曲ですが、グルーヴ感の有るメジャー・コードで、「ヒギンズ」と「クランショウ」が強烈にドライヴィングして、皆をリードして行きます。
「モーガン」は、やや大人しめのソロですが、「ブラウン」がトローンボーンらしからぬ、攻撃的なアドリブを吹いて、彼の存在感をアピールします。
この後の「ウィルソン」のソロは前曲とは打って変って、強めのタッチでガンガン行きます。
ラストはまたまた決まり物のホーン群のユニゾンで、セクステットがゴール・インです。

5曲目「ニルヴァンナ」…この曲も不思議な(一寸けだるい、そして幻想的な)スロー・テンポのナンバーで、個性が有りますね。
ユニゾンでテーマが吹かれた後、各楽器奏者がより糸の様に絡み合い、各々の好きに吹くのですが、それから「ウィルソン」が、クラシックの「リスト」の様に、技巧高く、メロディは優しく、自分の持ち味を十二分に出して、素晴らしい曲に仕上げています。
ラストでは「マクリーン」が情感溢れるアルトを演ってくれて…サービス満点だ
ね。
それから、「ヒギンズ」が大人しいながらも、おかずを一杯付けて敲いてくれるのも、サービスですよ。

ラスト曲「フランクス・チューン」…ラストも3管を生かしたユニゾン演奏から、各人が少しずつソロをとって、フィナーレに相応しい1曲になっています。
特に「マクリーン」のソロは流石の一言で、「ブラウン」も思い切り良く、気持ち良く吹いてくれます。
「ブラウン」…この人も実は、かなりのテクニシャンなんですね。
今日じっくり聴いて見て、改めて感じ得ました。
「モーガン」は、相変わらずブリリアントな音色のトーンですが、アドリブ自体はこの曲でも地味目に吹いています。
今回は出来が悪いと言うよりは、遠慮しているって言う感じがするんですけど…。
「ウィルソン」をリスペクトして、萎縮しているのかな?

いずれにしても全曲、曲も良いですし、渋いながらも「ウィルソン」と言うピアニストの多くの才能を見れる、好アルバムです。