紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

オルガンの神様が送るバラード・アルバム…ジミー・スミス~プレイズ・プリティ・ジャスト・フォー・ユー

2007-12-02 21:36:07 | ジャズ・ビッグバンド・その他
普段はいかにもグルーヴ感覚抜群で、ブラック・ミュージックを演る、オルガン・ジャズの旗手「ジミー・スミス」が、バラード中心に選曲して、演奏したのがこの異色アルバムです。
オルガン・トリオでのバラード演奏…渋い、かっこ良い、趣深い。。

アルバムタイトル…プレイズ・プリティ・ジャスト・フォー・ユー

パーソネル…リーダー;ジミー・スミス(org)
      エディ・マクファーデン(g)
      ドナルド・ベイリー(ds)

曲目…1.ニアネス・オブ・ユー、2.ジターバグ・ワルツ、3.イースト・オブ・ザ・サン、4.ニューヨークの秋、5.ペントハウス・セレナーデ、6.君を想いて、7.言い出しかねて、8.オールド・デヴィル・ムーン

1957年5月8日

原盤…BLUE NOTE 1563  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-1563

演奏について…オープニング曲「ニアネス・オブ・ユー」…寛ぎと揺らぎに満ち溢れたスロー・バラッドから始まる。
「ベイリー」のブラッシュワークと「マクファーデン」のジャズ伴奏も、極めて控えめに、「スミス」のソロを飾り立てる。
中間で「マクファーデン」がアドリブを入れるが、これも慈愛に満ちた癒し系で、心がとても温まります。
「スミス」の演奏は終始ほのぼのとしたトーンでどこまでも優しく、とにかく優しく…このまま眠りにつきそうです。

2曲目「ザ・ジターバグ・ワルツ」…余りにも「エリック・ドルフィー」の名演が有名な曲ですが、この演奏は勿論、「ドルフィー」とは対極に有ります。
3拍子のリズムに乗って、「スミス」が緩やかにスウィングして、「ベイリー」は優しくリズムを刻む…。
まるで極上のBGMの様な天国的なワルツ演奏に、つい居眠りして、そして素晴らしい夢を見れそうです。

3曲目「イースト・オブ~」…1、2曲目で揺らぎ演奏に終始していたトリオがジョギング程度だが、ミドル・テンポの4ビートで走り始める。
「スミス」もいつもの自分をチラリと出して、ファンキーさとブルージーな感覚でグルーヴするソロを取ってくれます。
中間でのアドリブ・パートでのノリも良く、所々でブイブイ言わしているんです。
「マクファーデン」のアドリブ、伴奏もかなりブルージーな雰囲気を出していて、良い仕事ですよね。
ところで、「マクファーデン」の音色と演奏ですが、この音、そしてこの感覚は、やはりブルーノートのアーティストらしく、良く聴くと「ケニー・バレル」に似ていますね!やはり………。
「ベイリー」のおかず満載のバック演奏もお洒落です。

4曲目「ニューヨークの秋」…3曲目で走り始めた「スミス・トリオ」ですが、ここでまた渾身のスローバラッド演奏に戻ります。
「スミス」は一音一音を長めに取って、変わり行くニューヨークの景色…色づき始めた紅葉と、もの悲しさを纏ってきた町並みを表現しているかの様です。
「スミス」の入魂のバラードは、本当に聴き応え有ります。
「マクファーデン」のソロは原曲の美しいメロディを活かして、あえて奇を衒わず原曲に忠実なんですが、そこが好感が持てる所です。
終盤で「ベイリー」が効果的なバスドラ一発入れてくれる所なんかは、センス有りますね。

5曲目「ペントハウス・セレナーデ」…3曲目の様に、ミドル・テンポで陽気に寛ぐナンバーです。
4曲目でエネルギーを出し切った?トリオがクール・ダウンとして用いた曲のようで、ライトな感覚で、心がウキウキします。
「マクファーデン」のソロもものすごく晴れやかな感情で、(良い意味で)気楽な演奏がされています。
こう言う小品的な感じの曲&演奏もアルバム中、必要不可欠だと思います。
ハード・プレイばかりじゃ聴く方も疲れちゃいますからね。

6曲目「君を想いて」…「マクファーデン」のメロディ・ライン演奏から序奏が始まり、哀愁感覚バッチリの素晴らしいソロを見せてくれます。
「マクファーデン」と言うギタリストも、まじめに侮れませんね。
「スミス」がセレクトしたメンバーなだけに、伴奏者としても優秀ですし、ソロを取らせても、破綻の少ない、且つ出しゃばらないアーティストで、脇役(サイド・メン)にはもってこいの人だと思います。

7曲目「アイ・キャント~」…「スミス」の情感タップリの序奏で始まり、もはや正常な気持ちではいられないほど、哀愁的な、そして魅惑的なメロディ・ライン痺れさせられて、その後の「スミス」のアドリブの素晴らしさにも、手伝って心がノックアウト状態になっています。
しかし、ただ癒しサウンドで攻めるだけでなく、この曲では、所々で攻撃的なアドリブをチョイチョイと小出しして、それが又妙技で憎いんだよね。
人の琴線をドンピシャ攻撃するんですよ。
こいつはまじで、只のオルガン小僧じゃないね。
壷をくすぐる術と場所、時間を的確に知っていて、完全犯罪者だな!(笑)
「マクファーデン」も前曲に近い感じで、原曲に忠実で「スミス」のアドリブを後押しします。
このアルバム随一のベスト・トラック演奏でしょう。

ラストを飾る「オールド・デヴィル・ムーン」…最後は一寸陽気に、ラテン調の曲で〆るんですが、「スミス」はブロック的な両手を使ったトーンで伴奏的に弾き、逆に「マクファーデン」が気力を振り絞った?アドリブ・ソロを演ってくれて、良い仕事をしてくれます。
最後は「マクファーデン」に花を持たせたんでしょうね。
「ベイリー」もノリノリでグルーヴ感の有るドラムスで、ファイナル曲を盛り上げます。
このライトで明るい雰囲気でのフィニッシュも好感が持てるね。
最後まで幻想的で終わると、逆にやばい気がするんで、こいつで決まり!です。

いかにもブルー・ノートらしい1枚…イースタリー・ウィンズ~ジャック・ウィルソン

2007-12-02 00:25:24 | ジャズ・ピアノ・コンボ
異彩を放つ、ブルーノートのピアニスト、「ジャック・ウィルソン」がリーダー名義の渋いアルバムを紹介しましょう。

内容的にはいかにもブルー・ノートらしい、ファンキーさ全開の1枚です。
「ウィルソン」以外の参加メンバーもすごいですよ。
ブルーノート・オール・スターズに近いんじゃないの?

アルバムタイトル…イースタリー・ウィンズ

パーソネル…リーダー;ジャック・ウィルソン(p)
      ジャッキー・マクリーン(as)
      ガーネット・ブラウン(tb)
      リー・モーガン(tp)
      ボブ・クランショウ(b)
      ビリー・ヒギンズ(ds)

曲目…1.ドゥ・イット、2.オン・チルドレン、3.ア・タイム・フォー・ラヴ、4.イースタリー・ウィンズ、5.ニルヴァンナ、6.フランクス・チューン

1967年9月22日録音」

原盤…BLUE NOTE BST-84270 発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-4270

演奏について…オープニング曲「ドゥ・イット」…ラテン調の変拍子で、「サイドワインダー」?それとも??と考えている内に、そうだ!「ウォーター・メロンマン」にクリソツと言うことが分かった。
ノリノリの「ヒギンス」のドラムと「クランショウ」のベース、そしてリーダー「ジャック・ウィルソン」のブロック・コードに合わせて、「マクリーン」「モーガン」「ブラウン」の順番で、ファキーなメロディ、アドリブをガッツリかましてくれます。
後半は「ウィルソン」のファンキー・ピアノにホーン・メンバーがユニゾンで呼応する形態を取っていて、盛り上がります。

2曲目「オン・チルドレン」…Dマイナーの曲で、とてもアーバナイズされたハイ・センスな1曲。
「ブラウン」の行けてるソロから始まり、「マクリーン」が割と上品に襷を受けて、アドリブを奏でる。
その後の「モーガン」も、この都会的な曲に合わせてか、日頃の「悪がき」とは随分かけ離れた、「好青年」が吹いているかのようなソロをとります。
その後の「ウィルソン」のアドリブ・ソロは、完璧にバッチリ決まっていますよ。
いかにもブルーノートらしい、佳曲です。

3曲目「ア・タイム~」…1、2曲目とは、ガラリと曲調を劇的に変えて、ロマンティックでメランコリックな「ウィルソン」のピアノがテーマ・メロディを奏でてからスタートする。
「ウィルソン」…なんてリリカルでナイーヴなピアニストでしょう?
このバラード…美しい。余りにも美しすぎる。。
しかし、こう言う1曲をアルバムに入れると言うだけで、「ウィルソン」のセンスの高さが良く分かる。
まじめに、「レイ・ブライアント」とか、「ケニー・ドリュー」の様な女性的で繊細な演奏に涙が出そうです。
「ウィルソン」…本当にありがとう。

4曲目「イースタリー~」…タイトル曲ですが、グルーヴ感の有るメジャー・コードで、「ヒギンズ」と「クランショウ」が強烈にドライヴィングして、皆をリードして行きます。
「モーガン」は、やや大人しめのソロですが、「ブラウン」がトローンボーンらしからぬ、攻撃的なアドリブを吹いて、彼の存在感をアピールします。
この後の「ウィルソン」のソロは前曲とは打って変って、強めのタッチでガンガン行きます。
ラストはまたまた決まり物のホーン群のユニゾンで、セクステットがゴール・インです。

5曲目「ニルヴァンナ」…この曲も不思議な(一寸けだるい、そして幻想的な)スロー・テンポのナンバーで、個性が有りますね。
ユニゾンでテーマが吹かれた後、各楽器奏者がより糸の様に絡み合い、各々の好きに吹くのですが、それから「ウィルソン」が、クラシックの「リスト」の様に、技巧高く、メロディは優しく、自分の持ち味を十二分に出して、素晴らしい曲に仕上げています。
ラストでは「マクリーン」が情感溢れるアルトを演ってくれて…サービス満点だ
ね。
それから、「ヒギンズ」が大人しいながらも、おかずを一杯付けて敲いてくれるのも、サービスですよ。

ラスト曲「フランクス・チューン」…ラストも3管を生かしたユニゾン演奏から、各人が少しずつソロをとって、フィナーレに相応しい1曲になっています。
特に「マクリーン」のソロは流石の一言で、「ブラウン」も思い切り良く、気持ち良く吹いてくれます。
「ブラウン」…この人も実は、かなりのテクニシャンなんですね。
今日じっくり聴いて見て、改めて感じ得ました。
「モーガン」は、相変わらずブリリアントな音色のトーンですが、アドリブ自体はこの曲でも地味目に吹いています。
今回は出来が悪いと言うよりは、遠慮しているって言う感じがするんですけど…。
「ウィルソン」をリスペクトして、萎縮しているのかな?

いずれにしても全曲、曲も良いですし、渋いながらも「ウィルソン」と言うピアニストの多くの才能を見れる、好アルバムです。