紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

マイルス・イン・ベルリンと同様のコンセプト…フォア・アンド・モア~マイルス・デイヴィス

2007-12-09 23:17:32 | マイルス・デイヴィス
エネルギッシュで且つアコースティック・サウンド演奏した(された)「マイルス」が好きな諸氏には堪らない魅力のアルバムを紹介しましょう。

先日紹介したアルバム、「マイルス・イン・ベルリン」と略同時期に録音されており、(実際は、この録音の方が半年ほど前ですね)コンセプト的にも近いライブ・アルバムなのですが、テナー・サックスが「ジョージ・コールマン」で演奏されています。
しかし、ハードで見るからに硬派な「マイルス」の演奏にも魅力が一杯ですので、どうぞご賞味あれ!

アルバムタイトル…フォア・アンド・モア

パーソネル…リーダー;マイルス・デイヴィス(tp)
      ジョージ・コールマン(ts)
      ハービー・ハンコック(p)
      ロン・カーター(b)
      トニー・ウィリアムス(ds)

1964年2月12日録音

原盤…米コロムビア 発売…CBS SONY
CD番号…CSCS-5145

演奏について…オープニング曲は、やはりと言うべきか、「ソー・ホワット」からスタートする。
「カーター」のベースに導かれて、全員戦闘体勢に入る。
「マイルス」も最初からエンジン全開で、オープン・トランペットで、ぶいぶい言わせる。
しかし、最もエキサイティングなのは、「トニー・ウィリアムス」である。
タイム感覚抜群で、ドラ・テクも完璧な事に加えて、このクインテットを充分過ぎるほどの強力な推進力で煽り捲る。
「ハンコック」はいつも通り、ややクールな目線で伴奏をし、アドリブ・ソロの場面でも、クール・ビューティな演奏をして、カッコイイんですよ。
テナーの「コールマン」は、とにかく真面目に一心不乱に吹く事に専念していて、好感が持てます。
スタートから、モード・ジャズのカッコ良さを全面的に押出した名演奏です。

2曲目「ウォーキン」も「マイルス」の代名詞的な曲で、「マイルス」が声高らかにテーマを吹いて序奏がなされて、ヨーイドンとなる。
この曲でも1曲目同様、リズム・セクションの「ウィリアムス」と「カーター」の推進力が半端じゃない。
その中でも「ウィリアムス」は稀代のテクニシャン、若き天才らしく、皆を推進していながらも、ドラムのおかずの使い方、変拍子の使用等のセンスも抜群で、特にアドリブ・ソロに入ると、空間の魔術師の様に時を止めたり、動かしたりと…完全に時間を司っています。
その後で「コールマン」が気合の入ったアドリブを演ってくれます。
「ハンコック」は、この曲では華麗なアドリブを見せて、クール・ビューティが少し血を通わせた様な演奏になります。
終盤にもう一度テーマ演奏に戻ると、全員の掛け合いでフィニッシュとなって、場内は感動です。

3曲目「ジョシュア・ゴーゴー」…この曲も「マイルス」のハードな音量、音質の演奏からスタートして、1小節目から全員に緊張感が伝わる。
この曲でも「カーター」、「ウィリアムス」の二人は、1、2曲目と変わらず、エンジン・フル・パワーで疾走するスポーツ・カーの様です。
「コールマン」も持てる力を出し切る様にテナーに魂を込めた演奏が見て取れますし、演奏自体もとても好調です。
しかし、この曲は良く出来ていて、8ビートのジャズでありながら、緩小節の部分も有って、個人のアドリブ・メロディの美しさを見せられるパートが多く存在しているので、その辺も聴き所の一つでしょう。
とにかく一言で言えば、「カッコイイ演奏」と言うことにつきる演奏です。

4曲目「フォア」…マーチ調のリズムに、「ハンコック」の知的なピアノと、「マイルス」のフルトーン・トランペットが絡み付く様な序奏からKOされそうです。
「コールマン」は、この曲では幾分思索気味のアドリブを吹いています。
「コールマン」は、演奏技術もしっかりしているし、音色も魅力的なテナー奏者ですが、何せ彼以外の全メンバーが天才アーティストで囲まれているので、考えて見れば、「コールマン」がとても可哀そうです。
しかし、このアルバム全曲での「コールマン」のプレイは好演してるのは事実です。

5曲目「天国への七つの階段」…例に漏れず、最強リズム・セクションの3人に導かれて、「マイルス」「コールマン」のユニゾンでのテーマ演奏から曲が始まる。
「マイルス」、「コールマン」とも、それぞれ魅力あるアドリブを演ってくれますが、ここでも最も聴衆を沸かすのは「ウィリアムス」のドラム・ソロの場面です。
あまりの素晴らしさに、皆、口をあんぐり状態で聴いているんでしょう。
終盤での「ハンコック」の流麗なアドリブも良いですね。

ラスト・ナンバーの「ゼア・イズ~」…ここで、「マイルス」が伝家の宝刀「ミュート・プレイ」を演ってくれます。
やっぱり、「マイルス」はミュートが良いよね。
とにかく、クールでインテリジェンスで、超カッコイイんです。
フル・トーンだと、どうしても「クリフォード・ブラウン」とか、「リー・モーガン」なんかの方が上手の様な気がします。
しかし、「マイルス」は、ミュート・プレイは唯一例外の「チェット・ベイカー」を除けば、絶対的な存在のアーティストですよね。
その「チェット」との比較にしても、音質、音色、そしてプレイ・スタイルとも全く異なっていて、ガチンコで真っ向から比較すべく対象では無いですしね。
この曲では「コールマン」は割かし伸び伸びと、リラックスして吹いています。
コンサートも最終コーナーのバック・ストレートに入ったので、緊張感から解放されたのかな?
「ハンコック」…終始変わらず、固めのタッチで、知的に冷静に曲を調理してくれて…完璧な料理を客に提供してくれます。
最後も「マイルス」の緊張感たっぷりなミュートで曲が締め括られて、アナウンスに全員が紹介されて、真にカッコヨスのライブが終わります。
ブラボー!!!

最後に…「モード」のこの時代、「コルトレーン」は精神の極みの演奏を成し遂げ、「ドルフィー」は命を削って演奏を続けた。
そして「マイルス」は、とにかくクールでカッコ良さの代名詞的演奏で、ジャズのダンディズムを追求した感じがします。
私からすれば、「モード・マイルス」で完成形と言えるほどカッコヨスなので、70年代のブラック・ファンク的な「電気マイルス」は、…必ずしも必要ではなかったと思います。。。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿