紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

面白可笑しくて…こう言うジャズも有って良い。サム・ブテラ~ザ・ビッグ・ホーン

2007-11-27 15:33:03 | ジャズ・テナー・サックス
今日3枚目のアルバム紹介と行きましょう。

さて、前作は相当ヘヴィーな内容で、歴史的な意義の有るアルバムでしたので、今回のは、飛切りハッピーで脳天気なのを行っちゃいましょう。

テナー・サックス奏者「サム・ブテラ」が、ホーンセクションをバックに、ロックンロール(古い8ビート)リズムに乗って、スタンダード曲、ポップスを楽しく吹き捲るアルバムがこれなんです。

アルバムタイトル…ザ・ビッグ・ホーン

パーソネル…サム・ブテラ(ts) 他

曲目…1.ラ・ヴィアン・ローズ、2.オール・ザ・ウェイ、3.テネシー・ワルツ、4.ラヴ・イズ・ア・メニー・スプレンダード・シング、5.トゥー・ヤング、6.アラウンド・ザ・ワールド、7.スリー・コインズ・イン・ザ・ファウンテン、8.アイ・ラヴ・パリス、9.オン・ザ・ストリート・ホエア・ユー・リヴ、10.ヘイ・ゼア、11.ザ・ソング・フロム・ムーラン・ルージュ、12.ロッカ・バイ・ユア・ベイビー・ウィズ・ア・デキシー・メロディ

原盤…Capitol  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6303

演奏について…正直に言って、この曲がベスト演奏…等と解説を入れる様な類の演奏では無いんです。
「ブテラ」が楽しくサックスを吹く事に意義が有ると言っても良いんです。
全曲ほぼ良く知られた、スタンダードやポップス曲なので、「ブテラ」の演奏に追いて行って、鼻歌でもハミングでも歌ったらOKでしょう。

でもその中で、解説して見たいと思います。

オープニングの「ラ・ヴィ・アン~」…低音をアクセントに、陽気にぶいぶいと「ブテラ」が吹いてくれます。
名前が分かりませんが、ドラムスが「ブテラ」の次に乗っていて、演奏を盛り上げます。
最後の「ブテラ」の一啼きも絶妙です。

2曲目「オール・ザ・ウェイ」では、エレキ・ギターと「ブテラ」の掛け合いが寛ぎ系で好感が持てます。
中間からアクセントをもたらす為に、「ブテラ」が急速調に吹く所がお洒落です。

3曲目「テネシー・ワルツ」…普通のワルツではなく、何と言うかブグウギ調で、派手で、陽気で、まじに楽しい。
アホかと言いたいくらいに楽しんで、アドリブを演ってくれる「ブテラ」に感謝!
メロディをあまり変えずに、極限まで楽しくいじった名演?です。

4曲目「ラヴ・イズ~」…日本での50年代に流行った演歌ポップス調のリズムが面白い。
中間から、ドラムスとデュオで煽る様に高速で吹いて…うぅーん楽しいねぇ。

5曲目「トゥー・ヤング」…ピアノ・トリオをメイン・バックにして「ブテラ」が吹きます。
所々でホーン・セクションがワンポイントで、合いの手を入れてくれます。

6曲目「アラウンド・ザ・ワールド」…ラテン・リズムかな?
いや、途中で中国の曲に変わった。
と思ったら、今度はマーチング・バンド調に………。
そうか、これで「ワールド」を意識付けている訳なのか?

8曲目「アイ・ラヴ・パリス」…こう言う下品な演奏…嫌いじゃない。
いや、むしろ大好きだ!
バックのホーンは、「ウェスト・サイド・ストーリー」を彷彿させる、都会的なリズムに乗って、「ブテラ」がとにかくお下品に悪乗りで吹くんです。
正にぶいぶい言わしているんです。

9曲目「オン・ザ・ストリート~」…「ブテラ」…未だ絶好調てな感じで、ワンパターンは変えずに、とにかく楽しくシャウトしてくれて、期待を裏切らないです。

11曲目「ザ・ソング~」…このアルバムらしくラテン調のリズムに乗って、「ブテラ」が気持ち良く吹き切るんです。
ホーン群が下流のゴージャスさを見せ付け?3流のジャズ演奏って言うのを、あえて見せびらかして…ここまで来ると決して下品じゃないねぇ。
だって、「ブテラ」は分かっていて(計算していて)演ってるんだから…。

全曲に渡って、そうポップ調の50年代の女性ジャズ・ボーカルにホーン版と言ったら分かり易いかな?
つまり、コマーシャリズムに染まっているけど、聴いたら間違いなく楽しくて、はまっちゃうイメージなのかな?

ロック・ギター史上に名を遺す傑作…魂の兄弟たち~C・サンタナ&M・J・マクラフリン

2007-11-27 12:23:49 | ロック
今日の2枚目アルバムは、表題通りロック・ギター・アルバム史上で、傑作と呼ばれている作品ですが、演奏内容からすれば、「ジャズ」と言うカテゴリーに入れても何ら違和感が無いばかりか、ジャズ・ギターとして歴史的なアルバムと言う位置付けでも十二分に評価されるべき作品だと思います。
何故ならば、「カルロス・サンタナ」と「マハビシュヌ・ジョン・マクラフリン」の二人が「ジョン・コルトレーン」にトリビュートして、彼に捧げたアルバムだからです。

特に演奏している曲目に着目して下さい。
何と1曲目に「至上の愛」を演っているんです!
「神」に挑戦する、いや(畏怖の念を抱き、楽器で祈る)この二人の勇気と行為を改めて賞賛して下さい。

アルバムタイトル…魂の兄弟たち

パーソネル…リーダー;カルロス・サンタナ(g)
      リーダー;マハビシュヌ・ジョン・マクラフリン(g、p)
      カリッド・ヤシン「ラリー・ヤング」(org)
      アーマッド・ペラザ(conga)
      ビリー・コブハム(ds)
      ドン・アリアス(ds)
      ジャン・ハマー(ds)
      ダグ・ランチ(b)
      マイク・シュリーヴ(ds)

曲目…1.至上の愛、2.ネイマ、3.神聖なる生命、4.神の園へ、5.瞑想、6.至上の愛(オルタネイト・テイク2)、7.ネイマ(オルタネイト・テイク4)

1972年録音 1973年6月22日オリジナル・アルバム・リリース

原盤…Columbia KC32034  発売…SONYミュージック
CD番号…MHCP-2029

演奏について…1曲目「至上の愛」…この1曲目に「サンタナ」と「マクラフリン」は全てを賭ける。
彼等二人を強烈にサポートするのが、オルガンの「コルトレーン」こと「ヤシン:ラリー・ヤングの別名」で、そのサポートと「ラブ・シュープリーム」のテーマのパーカッションを受けて、「サンタナ」「マクラフリン」が縦横無尽にギターを掻き鳴らす。
テクニックはさることながら、それ以上に注目すべきは、演奏スピリットだ!
ここでの演奏は、「神」へのチャレンジでは無く、あくまでも「神」に対して祈りを捧げている演奏に聴こえる。
「コルトレーン」に対して、楽器やジャンルは違えど、我々は貴方の音楽精神を踏襲し、伝えていきたいのです。との決意表明とも言えるだろう。
ギターとオルガンが織り成す小宇宙の先に、小さいが強く明るい希望の光が見えている。

2曲目「ナイマ」…これも「コルトレーン」の曲だが、「至上の愛」とは全く異なったアプローチで、二人のアコースティック・ギターによってデュオ演奏がなされる。
瞑想と言うべきか、静寂と言うべきか、正に「コルトレーン」の墓前で無心に祈りを捧げている様が見える。
アコースティック・ギターのナイーブで物悲しい音質が、貴方の心を静かに揺さぶるでしょう。

3曲目「神聖なる生命」…「コルトレーン」亡き後、新たなミュージック・シーンの到来と、彼等自らが時代を背負って行く事を高らかに告げるトラック。
パーカションに煽られ、掛け声を言いながら曲を進行させているのは、彼等なりの「至上の愛」と取ったら良いのでしょうか?
全員が一体となって演奏に邁進し、宇宙空間にトリップする、熱狂的なトラックです。

4曲目「神の園へ」…彼等は「コルトレーン」の聖地に到着したのであろうか?
肉体は勿論、死んではいないので有り得ないが、精神は「神」「師匠」の元へ着いたのであろうか?
ギター、オルガン共々フル・トーンで演奏がなされるのだが、とても静かだ!
精神が極みに近づき、楽園へと心が舞い降りる。
その後、パーカッションはことさら楽しげに敲きあい、「サンタナ」「マクラフリン」のギターも各々に狂喜乱舞する。
音楽と言う世界観が、「神」に最も近づいた時、その「神」の「精神」が彼等の肉体についに宿る………。
「コルトレーン」は己の魂を削って吹き続けたと思っていたが、実は違うのでは無いか?と思わせる曲です。
「神」も実は、音楽は楽しい物だと最終的に言いたかったのかも知れません。
それとも「サンタナ」「マクラフリン」が、「コルトレーン」に叩き付けた「挑戦状」「回答」がこれなのかも知れません。
いずれにせよ、曲の中盤から後半にかけて、明らかに彼等が吹っ切れて、迷い無くギターを弾き切っている(ギター小僧になっている)のは確かです。
このアルバムでのオリジナル曲では、間違い無くナンバー1の名演です。

5曲目「瞑想」…短いが、とても東洋的で、そして名旋律の良い曲です。
前の曲(演奏)で、燃えに燃えて疲れ切った心と体を、クールダウンし、自らを癒すヒーリング・チューン…「サンタナ」「マクラフリン」…恐るべし!!!

また、サージ・チャロフ行っちゃおうかな…ブルー・サージ

2007-11-27 08:37:40 | ジャズ・(他)サックス
先週は休日も働いていたので、今日は代休を取っています。
ですから、朝からアルバム紹介行っちゃいましょうかね。

先週一度お目見え(紹介)した、「サージ・チャロフ」なんですが、今回は何がすごい(魅力)と言いますと、バックのトリオが良いんです。
ピアノが「ソニー・クラーク」、ベースが「リロイ・ヴィネガー」、そしてドラムスが「フィリー・ジョー・ジョーンズ」なんですよ。
ハッキリ言って、ジャズ・メンのランク的には「チャロフ」が一番格下ではないでしょうか?
ついでに、ジャケットも超魅力的な逸品で、言う事無しです…ハイ!!

それでは紹介します。

アルバムタイトル…ブルー・サージ

パーソネル…リーダー;サージ・チャロフ(b-sax)
      ソニー・クラーク(p)
      リロイ・ヴィネガー(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

曲目…1.ア・ハンドフル・オブ・スターズ、2.ザ・グーフ・アンド・アイ、3.サンクス・フォー・ザ・メモリー、4.オール・ザ・シングス・ユー・アー、5.アイヴ・ガット・ザ・ワールド・オン・ア・ストリング、6.スージーのブルース、7.ステアウェイ・トゥ・ザ・スターズ、8.ハウ・アバウト・ユー

1956年3月4日録音

原盤…Capitol T-742  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5431

演奏について…1曲目「ア・ハンドフル~」…オープニングに相応しく、まずは一寸小手調べと言った感じで、「チャロフ」は余裕を持ったアドリブを吹き、受ける「クラーク」のシングルトーンもとても軽やかで、ライトな雰囲気で曲が進む。
「ヴィネガー」のソロは朴訥系だが音量が大きく、大地に根をおろした重厚さが魅力です。
「フィリー・ジョー」は所々でスゴテクを披露してくれて…4人が正しく対等に渡り合うアルバムだと言うことを、意識付けられます。

2曲目「ザ・グーフ~」は、高速のリズムで各人がテクニシャンだと言うことを改めて感じ得ます。
ぶんぶんドライヴィングする「ヴィネガー」と、バリトン・サックスで吹き切る「チャロフ」の技術の高さに圧倒されますね。
勿論、「フィリー・ジョー」は、この程度の高速リズムはお手の物と言った所で、自由奔放にドラムを敲いてくれます。
テクニック的には最もお薦めの一曲です。

3曲目「サンクス・フォー~」…このアルバムでベスト1の名演と思われる、スローテンポのバラッド!
この曲の主役は誰が何と言おうと「チャロフ」である。
この雰囲気、切なさ、叙情性、そして色香…バリトン・サックスと言う楽器じゃないと表現できないのでは?と思う。
それも、「チャロフ」じゃないと出せないトーン…そう、唯一無二の音色なんですよ。
同じ楽器の名人、「ジェリー・マリガン」とは、本質的に出す音が違うんだよね。
「マリガン」は、もっとライトで且つクールに吹く。
言うなれば都会的なバリトン・サックスなんだけど、「チャロフ」は「男芸者」…ものすごい色気が有る、悪魔の音色なんですね。

4曲目「オール・ザ・シングス~」…「チャロフ」との対決?で、「クラーク」が良い仕事をしてくれます。
哀愁あるシングル・トーンが、とても冴えてますよ。
終始、分厚いベースを淡々と刻み続ける「ヴィネガー」も素晴らしい出来栄えで、録音的にも低音が締っていながら、重厚感を失わずに、聴き応えが有ます。

5曲目「アイヴ・ガット~」…この曲も「ヴィネガー」の分厚いベースに導かれて序奏がなされる。
「チャロフ」のソロは、このベース音に合わせて、低音域を有効に活用して味わい深いです。
中間から、やや高速のフレーズを用いて、曲にアクセントを付けてくれます。
「フィリー・ジョー」はさりげないが、曲間でおかずを沢山つけたドラミングで、チョコッと自己主張するのが、お洒落~って感じでしょうか。

6曲目「スージーのブルース」は、「チャロフ」が演るブルースだけに黒くはないんです。
こんな雰囲気のブルースもたまには良いのではないでしょうか?

7曲目「ステアウェイ~」…この静かなバラッドも良いですね。
ひっそりとさりげなく、「チャロフ」のサックスをサポートする、バックの名人3人の演奏が、とにかく品が有って聴き物でしょう。
「クラーク」のライトなアドリブ…粒が立っていて煌びやかです。
「ヴィネガー」のベースは、一音一音に真面目さと太い芯が存在していて、安心してしまいますね。

8曲目「ハウ・アバウト・ユー」はCD化にあたってのボーナス・トラック。
「チャロフ」がノリ良く気持ち良く吹いてくれて、「フィリー・ジョー」も元気が出るドラムを敲いています。

最後に…このアルバムの真のリーダーは、ずばり「ヴィネガー」でしょう。
「チャロフ」のバリトン・サックスの(音色)の魅力はさることながら、全編、全曲に渡って、分厚く一本芯がピシッと通った、ヘヴィなベースを終始弾いている「ヴィネガー」のおかげで、ライトな曲(演奏)でも、「フィリー・ジョー」が所々ではしゃいでも、高尚でエヴァー・グリーンな魅力を放つアルバムを作れたのは、彼の影響が大たる証拠です。

ベース良ければ全て良し…の最たるアルバムの一つだと思います。